泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[障害者支援]地域格差にどう収拾をつけるのか

 いつも読ませていただいているすぎたさんのブログにも、この時期らしい内容が。
http://d.hatena.ne.jp/sugitasyunsuke/20060302
 読みながら改めて痛感したのは、自分の事業所の地域とは全然状況が違う、ということである(今さら、ではあるが)。
 まず障害児タイムケアは事業所が存在しない。もともと単価が安すぎるというのもあるが、こんな田舎では、平均利用人員を満たすことがあまりに困難だからだ。では、放課後はどうしているのか? 地域によっては小学生まで利用対象に含んでいる児童デイも、このあたりでは就学前に限られているから、小学生が利用するのはガイドヘルプか一般の学童保育所、あるいは日帰りのショートステイである。中高生はガイドヘルプかショートステイの二者択一。隣の自治体に行けば、学童には通えないから、ショートステイしかない。ショートステイを毎日使うのはかなり無理があるので、よほどの事情がなければ、両親が共働きすることはできない。
 田舎なので、移送サービスの需要はとても高い。スクールバスのバス停から学童保育所までの移動は、加配の指導員が行えるように自治体が認めてくれた(他地域では、その部分だけボランティアがやっているところもある)。スクールバスを学童の最寄りのバス停に止めることも、学校に交渉して認めてもらえた。雨天時だけ地域の社会福祉法人の実施する移送サービス車を利用する。自治体からの半額補助があり、30分で350円。ただし、この移送サービス用の車や運転手がはっきりと存在するわけでもなく、実態として利用は限られている。
 自治体内に通園施設はない。就学前の子どもは保育所に通いながら、近隣の自治体にある児童デイに週1日程度通うのがほとんど。2ヶ所あるが、ひとつは専門的な療育に強く、利用者殺到。もうひとつはそうでもなく、支援費スタートで自己負担が発生しはじめたとき、「それならもっと専門性を発揮してほしい」とクレームがついた。
 相談支援機関については、コーディネーターが2名。もともと知的分野の相談事業をやっているが、実質的には3障害対応。就学前から高齢期に至るまでみんな使っている。ただ、療育的な専門性については弱い。就学前の相談に乗っている人間の姿が自分には見えてこないが、それぞれのかかっている医師の影響が大きいように思う。また、保健士が熱心で、就学を控えた子どもについての情報交換では助けられている。一方で、保健士は就学すると関係が完全に切れる。
 個別支援計画については、児童期では個別教育支援計画を養護学校が作成。これは福祉・医療的な支援なども含んだ内容になっている。ただ、福祉サイドからすると、物足りない。就学前→養護学校→それ以降では、支援が分断されていることは否めない。
 行動援護については、いまだ事業所なし。4月から9月までの移動介護(外出介護)新単価が出て、急いで4月からはじめるメリットは無くなったし、おそらく10月から動き出すだろう(といっても、うちともう1ヶ所だけのはず)。動かなければ、知的障害者の支援を中心にやっているところは存続できない。課長会議の質疑応答では、10月からの移動支援の従業者資格については自治体判断という回答が厚生労働省から出たらしい。無資格でもサービス提供しうるということは、それと引き換えに安い単価になるということである。家事援助単価ぐらいをイメージしていたが、それはありえないだろう。1時間1000円前後の可能性もありうるんじゃないか。すると、移動介護を中心にしている事業所の収入は6割7割減かもしれない。行動援護ができる体制を整えなければ地獄絵図*1
 そんなわけで、これだけ地域ごとに状況が違うものの収拾をどうやってつけていくか。重要とされる支援の内容や形態が地域によって違う、ということはどの程度までありうるのだろう。これはひとつの地域にどっぷり浸かっていると見えにくい。地域格差についての最も無難で穏当な主張は「基本的な支援を国で統一して、ばらつく部分は地方で柔軟に」という結論だろうが、実態としては制度を国で統一しても、事業所には個々の背負ってきた歴史があり、運営形態を統一するのが難しく、制度的にを運営形態を一様にしていこうとした途端に勝ち組と負け組に分かれてしまうように思う(児童中心に支援を行っているところは、まさに「負け組」予備軍)。この傾向は、介護保険への統合に向けて、ますます強まるのだろう。一般財源化は支援の安上がり化の方便にされてしまうのが問題視されるが、本当に熱心な自治体に十分な財源を移譲してくれるのであれば、そっちのほうがましな気もしてきた。でも、鷹巣町みたいな事例を聞くと、それはそれで不安になるのである。

*1:それにしても、ガイドヘルパー資格がなくなるなら、行動援護の従業者要件であるサービス提供1年とか2年の経験をいったいどうやって積めばよいのか、よくわからない。通所やショートステイを運営しておらず、ホームヘルプの利用が少ないところにすれば、障害者支援の従業経験はガイドヘルプで積むしかないではないか。これで移動支援が従業経験に含まれないとされたら、事業所なんてやめる。本当にやめる。当事者が当事者であることから逃げられないのに、事業者が逃げることは最低だと常々思っているが、どう考えても維持存続できない。重箱の隅をつつくような話だが、うちにとっては重要な話。