泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

正しい理念のこわさ

現代思想2009年2月号 特集=ケアの未来 介護・労働・市場

現代思想2009年2月号 特集=ケアの未来 介護・労働・市場

 とりあえず、上野×立岩討議のみ読んだ。
 単価の検討もされてるけど、居宅介護の単価を一律3000円にしてヘルパーの時給1500円で年収300万というのは、夢のまた夢だ。いま最も単価が高く、行動障害に関するハードな基準をクリアしなければ支給決定されない(かつ従業者要件も厳しい)「行動援護サービス」並みっていうことだもの。
 全体としては、介護労働や介護制度に関連した論点が幅広く取り上げられている。やっぱり知的障害や精神障害は完全に無視されているわけであるが、障害はもちろん年齢も問わないような普遍的な制度設計の提案に包含されているとも言えるだろう。基本的な考え方はそれでいいと思うものの、「理念は正しい」ことによって実践的に裏切られる経験を、この数年の障害者福祉はたくさんしてきたように思う。理念の正しさは、たくさんの欠陥を免罪するように機能することもある。「理念は正しいのだから、今は苦しいけれど、いつかは・・・」。
 「今」が大事な人たちに、それは通用しない。ゆえに現場で理念を語ることは、しばしば嫌われる。