泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[近況]何か使えるデータはないか

 引き続き、都道府県に提案する移動支援単価案の積算根拠検討中。あと2日ぐらいでどうにかまとめたい…。
 「ヘルパーの調整コストが大きいのだ」と言ってみても、「何に比して大きいというのか」と問われるに決まっている。そこで、やはり介護保険事業所の話を持ち出さざるを得ない。インターネットで何か使えるものがないか、ずっと探索している。
 平成16年の介護サービス施設・事業所調査結果(厚生労働省)によれば、介護保険の居宅サービス事業所の1事業所あたり常勤換算看護・介護職員数は、訪問介護で8.9人。同年9月中の看護・介護職員1人あたり延べ利用者数は77.7人である。単純な割り算ではじきだされているはずなので地域や事業者ごとに相当な差があるだろうが、平均すればそういうこと。ひとりのヘルパーが1ヶ月に77件ほどのサービスを提供できるわけだ。
 一方、同じく平成16年の社会福祉施設等調査結果(厚生労働省)によれば、同年9月の知的障害者居宅介護等事業の1事業所あたり常勤換算介護者数は5.1人。そして、介護者1人あたり訪問回数・利用延人員は10.6回。ちなみに児童居宅介護等事業では、常勤換算5.3人で1人あたり訪問回数は8.8回。身体障害者居宅介護等事業では、常勤換算6.4人で1人あたり訪問回数は19.7回。
 これらの数字から何が読み取れるだろうか。介護保険事業所ではヘルパーが1日に3〜4件程度をまわっていると判断していいだろう。もちろん常勤換算されているので、もっと少ない者もいるだろうけれど。では、障害分野ではどうか。このデータだけ見ると、1日に1件さえもまわれていない? 知的障害や児童では2日に1件?
 実のところ、このデータはかなり使いにくい。障害分野の事業所にはかなりの数の「介護保険事業所」が含まれている。介護保険で事業所指定を受けているところが、「障害分野でもいちおう指定を受けておこう」と考えて、事業所となっていることは珍しくない。平成16年10月1日現在の障害者居宅介護等事業所で介護保険の事業所指定を受けているところは身体81.8%、知的77.7%、児童77.2%。「不詳」がそれぞれ10%前後あるので、もっと多いかもしれない。集計上の問題となるのは、これらの介護保険事業所の多くは実際に障害分野のサービスを行っていない、ということだ。行っていたとしても、介護保険の片手間でわずかな件数をこなしているだけのことも多い。ちなみに同調査によれば、障害ホームへルプの経営主体の構成比率トップは営利法人、2位は社会福祉協議会である。これは現場の実感とはかけ離れている。とりわけ地方では社会福祉法人が圧倒的に多いと言っても、差し支えなかろう。さらに同調査の結果を付け加えると、16年10月時点で障害ホームへルプの指定事業所数は、身体8559、知的5967、児童5209で、うち実際にサービス提供があるのは身体6808、知的3267、児童2514。児童なんて、およそ半数は指定をとっただけということになる(推測するに「不詳」と回答したところはおそらくサービスを提供していないので、自分の事業所が障害分野の指定を受けているかどうかさえわかっていないのである。実際に介護保険事業所に「障害分野の事業所指定を受けてますか」と問い合わせをして、確認までにしばらく時間がかかることは、しばしばある)。障害者居宅介護等事業所の平均的な数字を出そうとすると、わずかにしかサービスを提供していない事業所も含まれてしまうので、障害分野に特化した事業所の実態が出ない。だいたい、こんなわずかな訪問回数でどうやって常勤換算5人も雇えるだろうか(もちろん1回あたりの時間数はどれくらいか、ということも影響するだろうけれど、知的や児童で平日に長時間の利用は考えにくい)。
 さらに、障害分野に特化していても、児童、知的、身体のうち複数の利用者を支援しているところがほとんどである。すると、前述した1ヶ月あたりの利用件数もどのように読み変えるべきか。
 そんなわけで、あまりに国の出しているデータが役に立ちそうもないので、どうするか悩み中。現在の請求の仕組みから考えると国は絶対に詳細なデータを集計できているに違いないのに、出し惜しみされている気がしてならない。ちなみに介護保険事業所のヘルパー1人あたり月平均の77件をうちの法人の利用者層とヘルパー層で対応しようとすれば、ヘルパーは10人以上必要。こうした事実をはっきりした根拠のもとに示さなければならないだろう(示せたところで、都道府県の反応は冷たいものだろうが)。
 眠い。そろそろ寝る。明日も学童。