泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

読了

 たくさんブックマークがついて、「最後まで読んで、もしどんどんつまらなくなっていったらどうしようか」などと著者に対して大変失礼なことを考えながら、先ほど風呂に入りながら読み終えた。

自閉症の社会学―もう一つのコミュニケーション論 (SEKAISHISO SEMINAR)

自閉症の社会学―もう一つのコミュニケーション論 (SEKAISHISO SEMINAR)

 最後まで面白く、長風呂してしまった。確信した。これはやっぱり貴重な本だ。

このパニックは、私たちにとっての違背実験なのだと言えるでしょう。

会話分析を含むエスノメソドロジーと、自閉症をめぐる研究や療育とは、同じ根本問題を中心に展開しているようです。

うまくいけば、GPS機能は、自由と主体性を支援するのに役立つでしょう。

繰り返しに飽きないことに驚くよりも、なぜ〈普通の〉現代人たちは繰り返しに飽きてしまうのかの方に驚くべきなのかもしれません。

「カレンダー記憶に」に驚くべき能力を発揮する一部の自閉症スペクトラムの人の活動は、フランス革命によっても埋めることができなかった自然秩序と社会秩序の間のずれをめぐって展開していると言えます。

 こんな「気になる」主張の間に、筆者の子どものエピソードがちょくちょく差し込まれる。「父親」として、自閉症について世間に知らしめたいという情熱が、ですます調の文章の中にも力を与えている。決して「難しい」本ではない。学部学生向けの教科書にできるぐらい。高校生でも読める。でも、この切り口の本は前例がないと思うので、特に障害学研究者は目を通すべきじゃないだろうか。身体障害に偏りがちな障害学に一石を投じるはず。
 自閉症についての「伝え方」を考えるのにも役立ちそうだし、可能性はどんどん広がる。ほめすぎだろうか。もはや世界思想社の回し者のようだ。 

目次
はじめに ――『レインマン』と社会学
第1章 自閉症スペクトラム ――三つ組の障害
第2章 社会は目に見えるか ――E・デュルケム
第3章 構造と主体の輪舞曲 ――A・ギデンズ
第4章 鏡の中の私 ――C・H・クーリー
第5章 意味のキャッチボール ――G・H・ミード
第6章 電車と異星人 ――E・ゴフマン
第7章 高みの見物は可能か ――エスノメソドロジー
第8章 おうむ返しの彼方に ――会話分析
第9章 「社会化されなかった」子ども ――「アヴェロンの野生児」
第10章 モノトラックとテクノロジー ――ケータイ文化
第11章 学歴社会とピストル ――教育
第12章 カレンダーとともに生きる ――時間
二つの社会と自閉症 ――長いあとがき