泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

やはり蚊帳の外

よくわかる障害学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

よくわかる障害学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

 いただきもの。書店で見かけて購入を迷っていたので、ありがたい。
 おそらくこの本の目的とは、技術者が作り手側の考えだけで支援のためのテクノロジーを開発してしまわないように、身体障害をもつ当事者の声を届けたり、障害の社会モデルについての基本的な考え方を伝えたりすることなのだろうと思う。たぶんその目的には適った内容だ。工学的な技術について多くのページを使っているのは珍しいし、執筆陣に多くの当事者を含んでいるのも特徴的。
 ただ、書名がいかにも幅広い層をターゲットにした入門書風なので、そう期待して読むと少し戸惑う。「文系」の講義等で使う教科書には向かないと思う。そして、知的障害や精神障害についての言及はほとんど無いので、自分のような立場の読者はたぶんがっかりする(障害学の本にはありがちなことであるけれど)。テクノロジーに限ってみても、知的障害や自閉症者の支援とは深く関わりうるのだから、正直言って少しぐらい触れてほしかった。
 「知的障害」の「障害学」についての入門書が出版されるのはいつの日になるのだろう。単著だと書ける人はかなり限られるけれど、何人かの共著で出したら、けっこう面白そうな企画が考えられうるのではなかろうか。そろそろ自分も「知的障害」の社会モデルとは何か、について考えを深めたい。