泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

参院選マニフェスト比較2019(障害者分野)

国政選挙がやってくると、これをまとめなければいけないという義務感におそわれます。「障害者分野マニフェスト比較」です(過去はこちら→参院選2010衆院選2012参院選2013衆院選2014参院選2016衆院選2017)。

各政党のマニフェストから「障害者」に関わる部分だけを抜き出して読んでいくのはけっこう面倒な作業です。大手メディアもたぶんやってくれません。

「障害児者」や「その支援(や教育)の関係者」を主な対象とした政策を中心に比較します。本来はどんな分野の政策だって、その対象に障害者を含んでいるということは忘れずにいたいものです。「障害をもつ子ども」の支援を続けてきた自分にとって「子育て支援」や「不登校・引きこもり」なども強い関心事ですが、ボリュームが大きくなりすぎるので、直接的に「障害」と関連する事項に限ります。

まずは、政権与党から。

自民党

令和元年参議院選挙公約

 ■2020東京オリンピックパラリンピック

社会保障・子育て

  • 介護・福祉人材の確保と介護の受け皿整備を進め、介護離職ゼロを実現するとともに、介護予防・フレイル対策、共生と予防を柱とする認知症対策を進めます。ICT化の推進により介護・福祉現場のペーパーレス化を進め、介護職員がケアに専念できる環境をつくります。
  • 障害のある方の自立と社会参加のため、スポーツ、芸術・文化活動の振興、福祉、医療の充実に努めます。併せて、ひきこもりの方、生活困窮者への支援、断らない相談を含め包括的な支援体制の構築など地域共生の取組みを強化します。難聴児、医療的ケア児への支援など子供たちの育ちを支える取組みを進めます。

■教育・文化・スポーツ

  • いじめや児童虐待不登校発達障害などへの対策を強化するため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、スクールロイヤー、特別支援教育支援員など、関係機関が連携して、相談・支援体制を強化します。また、インターネット内での問題行動に対する取組みを強化するとともに、家庭教育支援に関する方針の作成や「家庭教育支援法」の制定に向けた取組みを推進します。
  • 障害者も含め、誰もが生涯にわたりスポーツを楽しめるよう、スポーツに親しむ機会の充実やスポーツに親しむ機会の充実やスポーツ施設整備の推進を図るとともに、スポーツを通じた健康増進や地域活性化、スポーツの成長産業化などを通じて、スポーツ立国の実現を目指します。

■共生社会

  • Society5.0の中で、高齢の方々や障害をお持ちの方々も含め、誰もがデジタル技術の恩恵により豊かな人生を享受できる共生社会を実現します。

農林水産業

  • 農福連携を強力に推進します。障害者・生活困窮者の自立や高齢者の健康・生きがいの向上のための福祉農園の整備、障害者が農業技術を習得するための研修等を支援します。

前回の衆院選時から大きな変化はありません。介護人材の「確保」とは言いつつ、「処遇改善」とは言わなくなりました。さんざんやってきたので、そろそろ一段落ということでしょうか。障害福祉サービスについて特に触れなくなったのは、以前から。

学校関連では、スクールソーシャルワーカースクールカウンセラー等に加えて「スクールロイヤー」が新登場。「学校」からのアプローチが目立ちます。そこになぜ悪評高い「家庭教育支援条例」を続けて書いてしまったのか…。大阪市で維新が起こした騒動を「発達障害」の関係者はまだ忘れていないと思うのですが。

流行りの「農福連携」をわざわざ「強力に推進します」と書いたのは、特筆すべき点かもしれません。「障害者就労」についての言及は他にないので、さまざまな雇用の可能性の中で「農業分野」だけがピックアップされているということになります。

公明党

参院選2019マニフェスト

1-9 子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進

  • 障がいのある子どもが必要な教育を受けられるよう、学びの質の向上、医療的ケアの必要な子どもの学びの機会確保、特別支援教育の教職員、専門家や支援員の配置促進、デイジー教科書などのデジタル教材等を支給する仕組みの制度化、高等学校における通級による指導の体制整備等を行います。
  • 障がいがあっても読みたい本を読めるよう、視覚障がい者等が利用しやすい書籍等の充実などによる環境の整備を図ります。
  • 障がいのある方の大学等への進学を進めるため、PCを活用した入試の推進並びに学習環境の改善、校内のバリアフリー化を進めます。

3-17 バリアフリー(障壁の除去)の推進、ユニバーサル社会(共生社会)の実現

  • 2020東京大会の開催に向けて、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づくさまざまなバリアフリー施策を加速するとともに、障がい者と健常者を分け隔てないインクルーシブな社会づくりを進め、誰もが安心して暮らせ、生き生きと活躍できる真の「ユニバーサル社会(共生社会)」の実現をめざします。
  • バリアフリーの推進について、国民の理解・協力を進める「心のバリアフリー」を推進するため、国民全体に向けた広報活動、ヘルプマーク等の普及・促進、学校教育や民間企業等を巻き込んだ国民の意識改革を進めます。また、高齢者や障がい者等の介助体験や擬似体験、バリアフリー化された施設の体験等の「バリアフリー教室」の開催等の施策を推進します。
  • 鉄道駅における段差解消や点字ブロック、ホーム転落防止のための「ホームドア」、内方線付き点状ブロックの設置、分かりやすい案内板、洋式トイレや障がい者対応型トイレ、子育て支援施設等の設置、エレベーターの大型化、複数ルートの構築などを推進するとともに、公共交通事業者の職員の接遇・研修等の取り組みを強化・促進します。また「新たなタイプのホームドア」に関する技術開発を進めます。
  • 高齢者の割合の高い地域における「バリアフリーのまちづくり」の推進に向けて、市町村の取り組みを促進するための支援策を講ずるとともに、高齢者や障がい者等の意見や要望等をていねいに汲み取り反映したバリアフリー化を進めます。
  • 高齢者や車いす利用者、ベビーカー利用者や妊娠中の方など、誰もが利用しやすい「ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)」については、さらなる普及とともに、より利用しやすくするための車両改善やドライバーの研修等の取り組みを進めます。
  • 貸切バスや高速乗合バスのバリアフリー化を進めるため、ノンステップバス、リフト付きバスの導入を促進します。また、新幹線や電車、遊覧船、旅客船等における車いすのスペースの確保など、バリアフリー施設の整備等を推進します。
  • 住宅や建築物等に関するバリアフリー化を促進する取り組みを支援するとともに、災害時において避難所となる学校等の災害弱者に配慮したバリアフリー化を推進します。また、建築物、道路、都市公園、路外駐車場のバリアフリー情報の提供を促進します。
  • 駅前広場やBRT(バス高速輸送システム)の停留所、駅周辺における道路のバリアフリー化とともに、高速道路におけるSA(サービスエリア)や「道の駅」における子育て応援施設の整備を推進します。また、ICTを活用した歩行者移動支援(バリアフリー・ナビプロジェクト)の普及・促進に向けた取り組みを強化します。
  • バリアフリーのまちづくりや、景観、防災・減災の観点から、無電柱化推進計画に基づく通学路や駅周辺の道路、災害時に救援物資等を輸送する緊急輸送道路、世界文化遺産周辺の道路等をはじめとした無電柱化の取り組みを着実に推進します。

3-18 若者・子育て世帯・高齢者が安心して暮らせる魅力ある住まい環境の整備

  • 「新たな住宅セーフティネット制度」に基づき、高齢者、障がい者、若者・子育て世帯、低所得者等の住宅確保要配慮者が、安心して空き家や民間賃貸住宅等に円滑に入居できるようにするため、「登録住宅」の改修補助と「居住支援法人」の指定促進と活動支援、入居者への経済的支援等の居住支援を一層強化します。

4-4 被災者に寄り添う支援の充実

  • 女性・子ども・障がい者・高齢者等の災害弱者に寄り添った被災者支援とともに、福祉避難所の確保等を進めます。また、避難所等の防災拠点施設における男女別トイレや授乳、着替えの場所の確保等の女性の視点からの環境整備とともに、避難所の運営体制や防犯対策の強化、適切な情報提供、総合相談窓口の早期設置、エアコン設置、災害時のペット対策等の取り組みを推進します。また、災害時の外国人対応の対策も進めます。

5-3 障がい者施策の充実

  • 共生社会の実現のために、障がい者施策を見直ししつつ、必要に応じて、障害者基本法、障害者差別解消法、障害者虐待防止法などの法制度の改正を行います。
  • 発達障がいを含めた障がいのある子どもが早期から継続的に適切な教育や支援を受けられるよう、発達障がい等の早期発見・早期療育支援、情報の適切な共有・引き継ぎなど、関係機関の連携による乳幼児期から就労期まで一貫した支援の仕組みづくりを推進します。
  • 新生児聴覚スクリーニングにより、聴覚障がいのある子どもを早期に人工内耳や補聴器などの適切な治療や療育につなげる体制を整備します。また、聴覚障がいに応じた人工内耳や補聴器の支援を行います。さらに、難病による聴覚障がいに対する補装具の特例支給を推進します。
  • さらなる就学支援が進むよう看護師の拡充とともに、遠隔医療などICTの効果的活用を図ります。また医療的ケア児・者の家族へのきめ細やかな支援を進めます。
  • 障がい者が安心し、生きがいを持って地域生活を送れるよう、グループホーム等の整備、在宅就労などの就労・定着支援、発達障がい児・者の地域支援体制の強化に取り組みます。
  • 障がい者等の社会参画のため、農業・福祉双方の連携の発展に向けた環境の整備、専門人材の育成等を進め、農福連携の全国的な推進を図ります。
  • 2018年に成立した「障害者文化芸術推進法」に基づき、障がい者も地域のさまざまな場で幼少期から生涯にわたり多様な文化芸術活動に全国的に参加できるよう、鑑賞機会の拡大や創造活動・発表機会の拡大等の支援を図ります。また、地域における相談体制の整備、人材の育成・確保等の支援策を推進し、地域で能力を生かし「生きがいを感じられる共生社会」の実現をめざします。
  • 障がい者が健常者と同様にスポーツに親しめるような環境を整備し、共生社会の実現をめざします。各地域の推進体制の整備、スポーツする機会の創出、場所・仲間の確保、負担軽減、指導者の確保、周囲の理解増進等、総合的な対策を進めます。文部科学省厚生労働省の連絡会議を軸にスポーツを通じた健康増進を図るとともに、総務省国土交通省法務省等関連する省庁との連携を図ります。また、パラリンピック以外の障がい者スポーツの支援を拡充します。
  • 認知症の人等の大幅な増加や障がい者等のために、地方自治体が、市民後見人を育成し担い手を確保できるよう研修等の支援を拡充するとともに、誰もが早期に成年後見制度を利用できるよう、財政支援の拡充や体制整備を図ります。そのために、家庭裁判所の必要な定員の確保など体制整備を引き続き進めるとともに、家庭裁判所地方自治体、行政機関や成年後見実施の民間団体と連携を図ることによって監督体制強化をめざします。

5-4 女性が活躍できる社会へ

  • 保育士・介護福祉士など介護従事者、障がい福祉サービス等の従事者といった今後の福祉人材の確保のため、賃金引き上げやキャリアアップ支援等の処遇改善や専門性の確保など総合的な取り組みを進めます。

5-7 誰もが安全に暮らせるデジタルファースト社会の構築

  • 視聴覚障がいをはじめとした障がい者の方が情報アクセスの機会を確保するため、必要な対策を講じます。また、外国人の方が適切な情報に到達できるよう、多言語対応を促進するなど、誰もが安心して暮らせる社会をめざします。

前回よりもずいぶんボリュームが増えました。もともと障害者分野では特徴的な施策を提案することの多い公明党。今回はパラリンピックを機にバリアフリーを強く訴えようというねらいが明確に見えます。住宅、災害対策、司法などの観点からも幅広く触れていて、新たなキーワードとしては「高校での通級指導」「バリアフリー教室の開催」「市民後見人」「居住支援法人の指定促進と活動支援」など。

一方で、いわゆる「障害福祉制度」については与党らしく「必要に応じて、障害者基本法、障害者差別解消法、障害者虐待防止法などの法制度の改正を行います」という立場。特別支援教育発達障害聴覚障害などへの関心の高さは以前から。医療的ケア児・者や農福連携への言及は今回からで、与党で足並みを揃えてきたとも言えます。

さて、ここからが野党です。参議院の会派別所属議員数の順に並べています。

立憲民主党

立憲ビジョン2019

1-2 老後の安心を高める

○医療・介護・保育・障がいに関する費用の世帯の自己負担額合計に、所得に応じた上限を設ける総合合算制度を導入します。

2 個人の可能性が芽吹く社会へ

○地域のNPOや社会的起業家、自治体等と連携し、障がいのある方やひきこもりの方の生活支援、就労支援、家族への支援を強化します。

○手話言語法・情報コミュニケーション法を制定します。

前回の衆院選で「希望の党」が主張していた「総合合算制度」と、前回の衆院選から立憲民主党が他政党にならって主張をはじめた「手話言語法」が書かれている程度で、かなり少ないです。政権時に失敗したトラウマもあるでしょうし、とりわけ障害福祉施策については自分たちが政権担当時に成立させた法律(障害者総合支援法)が相手なので物を言いにくいでしょうが、その他についても思い入れが感じられません。

では、こちらの「民主党」はどうでしょうか。

国民民主党

新しい答えパンフレット

7-4 障がい者・難病患者政策

障がい者・難病患者が住み慣れた地域で安心して自立した生活が送れるよう、「障害者差別解消法」の実効性のある運用を目指します。障がいの有無などにかかわらず、同じ場でともに学び、働く「インクルーシブ教育・雇用」を推進します。さらに、既存の発想にとらわれない新たな社会参加・就労機会の場を確保します。

これだけならどうということもありませんが、さらに政策INDEXというのがありました(ちなみに、「ユニバーサルデザインフォント」が使われています)。

政策INDEX2019

ICT政策

○小・中・特別支援学校へのネットワーク基盤環境の整備、デジタル教科書の普及、インクルーシブ(ともに生きともに学ぶ)教育、支援技術の研究・開発・普及体制を強化します。

《共生社会》

障がい者政策

(総論)

○「障害者の権利に関する条約」の批准のための一連の障がい者制度改革の成果を踏まえがら、2014年に批准した同条約を誠実に履行するため、条約の規定に基づいて、住み慣れた地域で、誰もが居場所と出番がある社会を実現します。

○精神障がい、知的障がい、身体障がいの当事者の政策決定過程への参画を実現し、ともに議論しながら障がい者政策を進めます。内閣府に設置した政策委員会の機能強化など、障害者基本法の改正を検討します。

○障がいのある人のニーズを踏まえ、障害種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、家族介護だけに頼らずに、障がいのない人とともに、安心して地域で自立した生活ができるよう、仕組みづくりや基盤整備、人材育成に取り組みます。精神疾患による患者やその家族への支援を充実します。また、改正された障害者総合支援法の附則を踏まえ、2011年の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の骨格提言の理念の実現を目指します。重度訪問介護の支援区分中度者への対象拡大や、常時介護を要する障がい者等に対する支援、障がい者等の移動や就労の支援、障害福祉サービスのあり方、障害支援区分の認定を含めた支給決定のあり方、意思疎通を図ることに支障がある障がい者等に対する支援のあり方等のうち、積み残された課題について検討します。

障がい者・難病患者が住み慣れた地域で安心して自立した生活が送れるよう、「障害者差別解消法」の実効性ある運用を目指します。

障害福祉サービス等報酬の改定に当たっては、全ての障害福祉事業者のサービスが安定的に提供されること、障害福祉従事者の賃金が改善して生活が安定し、離職が防止されることにつながるよう配慮します。

障害福祉従事者の賃金を全産業平均の水準に引き上げることを目指して、着実に処遇改善を行います。障害福祉サービス事業所における事務職や技術指導者等の職種の処遇改善も行います。

バリアフリー法の対象に災害時の避難対策も含めて、避難所等のバリアフリーを実現します。

○第三者によるチェック体制を整備することなどにより、病院や学校、施設等での障がい者の虐待防止を進めます。

障がい者の活躍の場を広げるとともに障がい者本人の意思決定を尊重するため、成年後見制度のあり方を検討します。

○2019 年の通常国会で成立した「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に基づき、旧優生保護法の下、多くの方々が、生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたことに対して、真摯に反省し、心から深くおわびするとともに、国が旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた方に対し、一時金を支給します。

障がい者の就労、社会参加等)

○「障害者の権利に関する条約」の第27条(労働及び雇用)が「締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める」と謳っていることに鑑み、働く全ての障がい者にディーセント(働きがいのある人間らしい)でインクルーシブな就労の場を確保することを目標に据え、政策に取り組みます。

福祉的就労利用者の一般就労への移行を進めるため、現行の雇用率制度に基づく一般就労のあり方にさらなる検討を加え、すでに地方公共団体で導入事例のある多様な就労の場の創出や、尊厳ある生活を維持できる稼働所得の確保を目指します。また、法定の雇用障害者数を下回っている企業が支払う障害者雇用納付金の金額が低く、法定雇用率を達成していない企業も多いため、障がい者雇用を促進する観点から、納付金のあり方を検討します。

○短期的には、現行の福祉的就労における低工賃問題への対応を図り、事業者への支援策の拡充を含めて、安定的な就労場所の確保や一般就労への移行促進も含めた自立可能な仕組みの構築を図ります。

障がい者雇用の水増し問題を受けて、中央省庁等で障がい者の法定雇用率達成に向けた取り組みが進められていますが、障がいの特性に配慮することや当事者の意欲と能力が十分に発揮されるようにすること等を政府等に求めていきます。

○親亡き後の自立生活を視野に、地方自治体における障がい者雇用配慮型の総合入札方式の拡大を進めるとともに、発達障がいに対する地域や企業、産業医の理解の増進、職場での意志決定支援者の支援導入等により、さらなる障がい者雇用の拡充を図ります。福祉と「農」の連携、遠隔操作のロボットを活用した就労をはじめ、既存の発想にとらわれない障がい者の新たな社会参加・就労機会の場を確保します。また、障がい者のスポーツや余暇活動に対する支援の充実に努めます。

○共生社会の創造に向けた地域住民・NPOの活動に対する支援をより拡充するとともに、それらを通じて障がいの軽重にかかわらず、健常者とできる限り同等に社会に参画する選択肢を増やしていきます。

○希望する子どもたちが障がいの有無などに関わらず、同じ場でともに学ぶことを追求し、難病や内部障がい、医療的ケア児を含む個別の教育ニーズのある子どもに対し、適切な指導と必要な支援を提供できるインクルーシブ(ともに生きともに学ぶ)教育を大学教育に至るまで実現します。

(障がいの特性に応じた施策)

○発達障がい者に対して切れ目のない支援が行われるよう、2016年に施行された改正発達障害者支援法に基づき、発達障がいの疑いのある児童の保護者への支援、教育における配慮、関係機関と民間団体の間での支援に資する情報の共有、就労の支援、地域での生活支援、権利利益の擁護、司法手続における配慮、発達障がい者の家族等への支援等を着実に進めます。また、特別支援教育コーディネーターの役割を担う教員のあり方について検討します。

○視聴覚障がい者などの自己選択と自己決定が実現できる社会環境を整備するため、手話言語法、情報コミュニケーション法を制定します。

障害福祉サービスにおける脱施設化、とりわけ知的障がい者の地域移行を促進するため、国として具体的目標値を定め、計画的かつ戦略的に進めます。

精神疾患による患者が地域で自立した生活ができるよう、病院から地域への移行を促進します。移行に必要な生活支援のあり方については、当事者とともに議論しながら検討します。また、患者の尊厳を守るため、精神科病院での身体拘束の削減を進めます。

多様な保育の拡充

(病児、夜間、障がい児保育の拡充)

○病児・病後児保育、延長保育、夜間保育、障がい児や医療的ケア児の保育など多様な保育を充実させます。

子どもの居場所づくり

学童保育等の拡充)

○放課後デイサービスの現場の実態に即した報酬改定や質の確保、児童発達支援管理責任者の研修制度の課題に取り組みます。

多様な教育機会の確保

(インクルーシブ教育の推進)

○幼児期から貧困、障がい、性的指向性自認(SOGI)など様々な困難によって子どもたちが不利益を被ることなくともに学び合い、支え合う包容力あるインクルーシブ(包摂的)な社会づくりの素地をつくります。あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないように支援し、社会の一員として包み、支え合う社会を目指します。夜間中学、フリースクール、フリースペース、定時制通信制など「多様な学びの場」を用意し、どのような選択をしても十分な教育が受けられる環境を整備します。

○インクルーシブ教育、バリアフリー化を進めます。希望する子どもたちが障がいの有無などにかかわらず、同じ場でともに学ぶことを追求します。難病や内部障害、医療的ケア児を含む個別の教育ニーズのある子どもに対し、適切な指導と必要な支援を提供できるインクルーシブ(ともに育ちともに学ぶ)教育を大学教育に至るまで実現します。

(医療的ケア児への支援拡充)

○たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアを必要とする医療的ケア児の支援を拡充します。医療的ケア児童の学校教育を受ける権利を保障するために、学校での看護師の配置や通学支援などを拡充し、希望する学校に通学しやすい環境を整えます。

(発達障がい児支援)

○発達障がい者に対して切れ目のない支援が行われるよう、2016年に施行された改正発達障害者支援法に基づき、発達障がいの疑いのある児童の保護者への支援、教育における配慮、関係機関と民間団体の間での支援に資する情報の共有、就労の支援、地域での生活支援、権利利益の擁護、司法手続における配慮、発達障がい者の家族等への支援等を着実に進めます。また、特別支援教育コーディネーターの役割を担う教員のあり方について検討します。

保育所、学童などにおいて作業療法士等と連携するなど発達障がい児への対応を進めていきます。

○発達障がい児に対する地域や保護者等の周りの理解が進むように環境を整備します。

人材の育成、就労支援

○ 高齢者を中心に再犯率が高く、刑務所が福祉施設の代替となっている現状にあります。特に高齢者や障がい者等の受刑者については、その特性に応じて刑務所出所後の就労支援など再犯防止を法務省のみならず厚生労働省との共通事業として取り組みます。

社会保障と税の一体改革》

○医療・介護・障害福祉等にかかる自己負担の合計額に上限を設ける「総合合算制度」を創設します。

(歯科医療)

○生涯健康な歯を持つことができるよう、乳児から高齢者まで切れ目ない定期歯科健診の普及促進、高齢者・障がい者の地域生活を支える在宅歯科診療・障がい者歯科医療の充実を図ります。また、虐待の早期発見にもつながるよう小児歯科検診の充実に取り組みます。

(インクルーシブ教育・バリアフリー

○希望する子どもたちが障がいの有無などにかかわらず、同じ場でともに学ぶことを追求します。個別の教育ニーズのある子どもに対し、適切な指導と必要な支援を提供できるインクルーシブ(ともに生きともに学ぶ)教育を推進します。学校のバリアフリー化を推進します。

(特別支援学校)

○一人ひとりに応じた支援を行うため、特別支援教育のあり方について検討を進め、充実のための体制整備を図ります。

障がい者スポーツの推進)

障がい者スポーツの普及及び支援、指導者・選手の育成など環境整備を進め、障がい者のスポーツ参加や大会開催を促進します。

災害発生時における生活・復興の支援

○特に、高齢者、病院入院・通院患者、小中学校、幼稚園、保育園、障がい者施設、児童養護施設などの要援護者の方々の避難計画に万全を期すとともに、避難先となる公立小中学校をはじめとした施設のバリアフリー化を推進し、災害が発生した際の長期的で安全な避難先を確保します。また、非指定避難所も含めた福祉避難所等の拡大と整備を一層図るとともに、これら施設について、定員以上の人員を収容している施設への財政支援、福祉人材の派遣元への財政支援等を行います。

ソーシャルビジネス(社会的起業)・コミュニティビジネスの推進

○女性や若者、高齢者、障がい者の雇用・起業の場としても期待されているソーシャルビジネスやコミュニティビジネスをさらに推進し、地域での社会課題解決と雇用創出を図ります。ソーシャルビジネス等について、政府・自治体の調達等での優遇や就労・起業支援施策の拡充、空き家等の遊休資産活用促進、「社会的投資促進税制」の検討、国民へのPRなどの支援に取り組みます。

防災・災害対応における男女共同参画

○防災計画等の策定に、高齢者、障がい者、妊産婦、乳幼児を抱えた母親、外国人等、災害時に困難を抱える状況にある当事者の声が反映されるよう、意思決定の場への女性の参画を進めます。

立憲民主党のほうを見た後だったので、少しびっくりしました。かなり網羅性があり、野党の中ではもっとも読み応えがあります。

よく読むと「攻めた」部分はそれほどないものの、権利条約や骨格提言、政策決定への当事者参加など、大事にしようとする理念を明確にした点と、障害者施策の全体に目配せした点には好感がもてます。旧「民進党」からの政策路線を受け継いで見えるのは、立憲民主党よりもこちらのほうです。

個人的には、児童発達支援管理責任者研修の問題だけやけに具体的なのがツボに入りました(今年度から障害「児」に特化された研修がなくなってしまったという問題です)。発達障害児について保育所学童保育で「作業療法士」等と連携するとか、「発達障害児」に強い誰かがブレーンにいますね。

日本維新の会

2019参議院選マニフェスト

4-11 障がい者の就労と雇用の環境整備

概要版には何も記載なしで、詳細版にこの1行のみ(箇条書き)です。前回の衆院選は記載なしだったので、一歩前進しました。とはいえ、やはり「就労」関連。働いてナンボ。ちなみに、過去の公約では「就労支援を促進して、障害者を納税者に」「ICT技術の活用や、在宅ワークの推進で、障がい者(チャレンジド)を納税者に」とやたら納税させたがっていたのですが、それはあきらめたのでしょうか。

共産党

2019参議院選挙公約

19、障害者・障害児

(リンク先をご覧ください)

毎回恒例ですが、共産党の公約は膨大なので、該当部分へのリンクを貼るだけにしています。現行の障害福祉制度にある課題について障害当事者や事業者などからかなり細かく意見を聞いていなければ書けません。

当事者の声を丁寧に聴く姿勢は最高にリスペクトしつつ、事業者の運営に関連する内容に関しては決して事業者の総意とは言えない内容も多いです(ものすごく楽に「稼げる」仕組みをたくさん提案しているので、経営努力がほぼ不要になってありがたいですが、そもそもそれが問題視された結果として今のような仕組みがあるわけで)。

冒頭に書かれているとおり、障害者権利条約、障害者自立支援法違憲訴訟団と国が結んだ「基本合意」(2010年1月)、障害者自立支援法を廃止してそれにかわる障害者総合福祉法制を審議した総合福祉部会の「骨格提言(2011年8月)」を基礎にしています。民主党政権時代に大きな変化を起こそうとした(けれど、実現しなかった)内容ですから、現行の施策とは激しく対立します。

社会民主党

選挙公約詳細 ソーシャルビジョン

障がい者施策

共に生きる社会へ

障がい者権利条約の理念を社会の隅々に徹底します。差別をなくし、だれもが安心できるインクルーシブ(排除をしない)な社会をめざします。

■人間の価値を生産性で計る優生思想を許しません。旧優生保護法に基づく強制不妊手術は基本的人権を侵害する最も深刻な障がい者差別です。成立した一時金支給法を被害者への謝罪、補償の第一歩としさらに改正していきます。同じ過ちを繰り返さないよう国の調査を徹底します。

■障害者差別解消法の課題として残っている差別の定義化を行います。同法は障がい者への不当な差別的取り扱いを禁止し、合理的配慮の提供を国・自治体に義務付け、民間事業者にも努力義務を求めています。市民への啓発普及を強めるとともに国、地方自治体に相談の窓口を設けます。あわせて紛争解決機関を設置します。

■障害者虐待防止法を改正し、通報義務の対象に、病院、学校、保育所、国と自治体の諸機関を追加します。通報者に不利益取り扱いがなされないよう法的な保護を行います。

生活保障に取り組みます

障がい者の生活基盤を保障するために障害者総合支援法の抜本改正に取り組みます。応益負担を応能負担にもどします。収入認定は世帯収入ではなく本人所得のみに変更します。ホームヘルプサービスや移動支援の拡充など、在宅支援を保障します。低所得者について自立支援医療を無償化します。

■障害者総合支援法により介護保険優先原則が強制されることは問題です。障害福祉サービスを受けていた障がい者が65歳を境に介護保険へ移行され、無料だった利用料が1割負担となりサービスの内容も縮小されるなどの問題がおきています。障がい者の生活水準が引き下げらることがないよう、どちらの制度も選択できるようにします。

■バリヤフリー対応の公営住宅を増設します。入所施設やグループホームなど住まいの場を公的な責任で計画的に増やします。

障がい者の働く場を拡大します

■公的機関での雇用率水増し問題は障がい者排除そのものです。再発防止を徹底し、国、自治体、民間企業における障がい者雇用率の速やかな達成を促進します。

障害者雇用促進法を徹底し障がい者の一般就労を増やします。事業者の意識改善を図るとともに国や自治体による企業への補助金を増額します。職場におけるジョブコーチなどの支援や通勤支援を強化します。

障がい者福祉的就労の場となる共同作業所(小規模作業所)を地域に増やします。作業所の運営や雇用の安定を図るために日額払いから月額包括払いに見直し、助成金を拡大します。働き場にかかる利用者負担をなくします。労働法の適用を検討します。

所得保障に取り組みます

障がい者の所得保障を充実させるために、障害基礎年金の増額、無年金障害者の解消に取り組みます。働くことによる所得とあわせて地域生活に必要な所得保障制度を検討します。

■国は精神・知的障がいに関する障害基礎年金の認定の地域格差をなくすとして、精神・知的障がい者が申請をしても障害基礎年金の新規支給や更新が行われないケースが頻発しています。至急、実態を調査し、障がい者の生活を保障するために必要な是正を行います。

インクルーシブ教育を広げます

■障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育システム(包容する教育制度)の理念を尊重し、障がいのある子とない子が共に学ぶ仕組みを整備します。同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、最も的確に応える多様で柔軟な仕組みを整備していきます。

コミュニケーション、バリヤフリー、交通の保障

■手話はろう者にとって、聞こえる人たちの音声言語と同様に、大切な情報獲得とコミュニケーションの手段です。「手話言語法案」の成立に取り組みます。あわせて、「視聴覚障害者等の意思疎通等のための手段の確保等の促進に関する法律案」の成立に取り組みます。

■交通や建物などのバリヤフリー化をすすめます。駅のホームドアなどの普及、ノンステップバスの普及をすすめます。

■身体・知的障がい者と同等に精神障がい者についても、JRなどの公共交通機関の運賃割引制度の適用対象にします。

障害福祉施策については、6年ぶりぐらいに「総合支援法の抜本改正」を主張されていて、その内容は共産党とかなり重なっています。過去数回の選挙では言わなくなっていたので、どうしてこのタイミングで強い総合支援法批判を再開したのか、とても興味深いです。

次が最後になります。「政党」ではないのですが、議席獲得の可能性はあるようですし、触れないわけにはいかないでしょう。

れいわ新選組

政策

公務員を増やします

保育、介護、障害者介助、事故原発作業員など公務員化

「公務員の数を減らせ」という政治家もいますが、実際は世界から見て日本は公務員の数が少なく、現場は過酷です。1万人あたりの公務員数をみると日本は、英国の約3分の1、米国の約2分の1です。公務員を増やす。安定雇用も経済政策です。

障がい者への「合理的配慮」を徹底、障がい者福祉と介護保険の統合路線は見直し

障がいを持つ方々は、社会生活を送る上で様々なバリアに直面しています。

障がい者が社会生活を送りやすいようにする「合理的配慮」を受ける権利が障害者権利条約、そして障害者差別解消法で求められています。障がいの度合いや種類はさまざまです。障がい者の立場に立った合理的配慮を更に徹底させます。

また、とりわけ重度障がい者の方を苦しめているのは、現在の障害者総合支援法の第7条にある、「介護保険優先原則」です。この条文のせいで、それまでの充実した重度訪問介護などのサービスが利用できず、65歳になると利用時には原則一割負担を求められるうえ、サービスの幅も狭い介護保険の利用が求められています。障がい者の生活に不自由を強いる、障がい者福祉と介護保険の統合路線は見直していきます。

重い障害をもつ候補者のほうで話題になっていますが、団体としての障害者関連公約は大きく3つ。

合理的配慮と介護保険優先原則は、他党からも訴えがあります。インパクトがあるのは「保育、介護、障害者介助、事故原発作業員の公務員化」でしょう。個人的には、たとえ雇用が安定したとしても、公務員にはまったくなりたくないです。当事者と支援者と行政のあいだには必要とされる緊張関係がありますし。

生活の党と山本太郎となかまたち」時代は、障害者について何も言及がなかったので、その点は前進でしょうか。

さて、今回まとめてみて感じたのは、全体として障害福祉施策以外での言及がいっそう増えたなあ、ということです。これは前回も似たような傾向がありました。インクルーシブな社会を実現するには福祉制度のみならず、その他の施策の中でも「障害者」が暮らしやすい環境を作っていかなければならないわけで、間違いなく良いことだと思います。

しかし、現存する障害福祉制度がすっかり整備を終えたとは考えにくく、各政党がもう少し個別の論点に踏み込んでもよいと思うのですが、「抜本改正」か「現状維持で、必要あれば是正」かの二極になってしまっていて、投票先に困る人もいそうです。自分自身、投票先はまだ決められていません。

さまざまな葛藤を抱えつつも、皆さん、投票には行きましょう。

被災した「最先端の老舗」をみんなで支える意味

いま「被災」と言えば、北海道を思い描かれる方が多いのだろう。

9月4日に上陸した台風21号は近畿地方に大きな被害をもたらした。2週間が経ち、全国的には次第に忘れられつつある気もする。しかし、ここに注目してほしい台風の大きな爪痕がある。

寝屋川市民たすけあいの会」の受けた被害だ。 先に書いておくと、以下は寄付募集と情報拡散(はてなブックマークSNSでのシェアなど)のお願いである。自分はこうしたことをあまりブログでやってこなかった。そんなに長い記事ではないので、どうか読むための時間を少しください。

congrant.com

ずいぶんと古めかしい名前の団体と思われるだろうが、「寝屋川市民たすけあいの会」のことを知る人は障害児者の支援や地域福祉と関わる人に多い。 

大阪府寝屋川市で活動拠点を得て、現在の名前になったのが1978年。地域で生きていくための福祉サービスがひどく欠けていた時代。生きるために必要な支えを欠いた人々のために、ボランティアによるユニットが次々と創発して専門職とも協働しながら住民主体での問題解決を目指した。単なる制度の補完をするのではなく、専門職の支援だけに囲まれた暮らし、助ける者と助けられる者に分けられる地域社会に疑問符をつけた。いわゆる「共生」の思想。 

それから月日は流れて、「福祉サービス」は増えた。「専門職」も増えた。それで「地域」や「ボランティア」は不要になっただろうか。通える福祉施設のできた障害児は、それだけで幸福になれただろうか。多様性を認め合える社会は育まれているだろうか。使える制度がないからサヨウナラと見放される住民はいないだろうか。

寝屋川市民たすけあいの会」は今でもボランティア・ビューローを拠点として、いわゆる「福祉サービス」も行いながら、どこもやらないような支援を続けている。団体の活動紹介を見ると、採算をとるのが難しい事業やまったくお金にならない活動が並んでいて、運営の大変さを想像して頭が下がる。自分にとっては「最先端の老舗」だ。

リスペクトのあまり、少し紹介が長くなった。その団体が甚大な被害を受けて、寄付を募っている。被害の状況は団体のサイトや、

neyagawatasukeai.org

YouTubeでも見られる。

www.youtube.com

「使ってきた建物が古すぎたのではないか」と言われるかもしれない。決して楽ではない運営を続けてきた団体が、ハードよりもソフトを最優先にさせてきた結果として理解してほしい(「民家の活用」もある時期までは都合よくもてはやされてきた)。

「自然災害なのだし、公的な補助はないのか」という疑問が湧くかもしれない。国による福祉施設向けの補助制度はすでにアナウンスされている。でも、現在のところ、今回の被災内容は補助「対象外」とされているそうだ。賃貸物件であること、被災した建物で実施しているのが市町村の事業であることなどが理由らしい(9月18日現在)。

寝屋川市の公的施設も大きく被災して、地方自治体レベルでの対応も容易ではないようだ。住民が自ら課題解決のために動くのを支援してきた団体。公的なサービスにはとらわれない支援を続けてきた団体。そこで生じた危機を解決するために力を発揮できるのは「行政」ではないのかもしれない、とも思う(もちろん期待はしたいけれど)。

寄付の募集はセカンドステージに入っている。ファーストステージの200万円はすでに達成した。これはおそらく障害福祉や地域福祉の関係者が多く協力したものだ。しかし、台風後にも降り続いた雨で二次被害が拡大してしまい、建物の全面的な建て替えが必要になっている。

ここから先は立場を超えて、「誰もがともに生きられる社会づくり」に共感してくださる人々のご協力を得る必要があるだろうと思う。単なる「施設の建て替え」ではなく、「先駆的となる地域のモデル」をこれからも存続させていくために。

どんどんシステム化されて理念を見失っていくこの国の福祉にとって、お手本となるトップランナーが深く傷つくのはあまりにつらい。どうか寄付を通じての応援をよろしくお願いします。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

congrant.com

ニーズが社会制度を生み出さないのはなぜか

いま、だいぶ精神的に病んでいるのですが、下の記事でせっかく自分について言及いただいたので、思うところを少し書いてみたいと思います。

書かれていることについて、およそ頷きながら読みました。

ひとくちにNPOと言っても、課題解決のためにさまざまな手法を用います。公私関係についての考え方もさまざまでしょう。公的責任のもとに行われるべきことは何か。政府の役割とは、民間の役割とは何か。それは自ずと財源論を導くことになり、ファンドレイジングの手法をも規定していくことになります。

自分が取り組んできたのはおよそ「社会福祉」と呼ばれる世界での支援でした。社会福祉とは何かという話はなかなか難しいのですが、歴史的に見れば民間での先駆的な取り組みが生活に困る人たちの課題を明るみに出し、「公の責任」を問いながら、少しずつ受けられる支援を拡げてきた、と言ってよいと思います。それは公費(社会保障費)の増大を意味するわけですから、「人々の支え合い」であるとか「市場」でどうにかならないのか、という意見が出てくるのも自然なことです。

自分にとっては「公的な責任のもとに解決されるべき問題」への対処こそが、社会福祉の真骨頂です。個人の力ではどうすることもできず、「支え合い」や「市場」でも解決されない領域。再分配のあり方を問わなければどうにもならない部分。

自分がNPOの世界と出会ったのは2000年前後のことです。当時でも、他分野のNPOと関わっていると、あるべき資金調達についての温度差は少なくありませんでした。公的資金が投入されやすい福祉分野のNPOは他分野(例えば、環境とか国際協力とか)から苦々しく受けとめられ、大切な支援をやっていてもNPO業界内では「イケてない」と評価されやすいように感じていました。昔からある「社会福祉法人」と何が違うのか、とも思われていたでしょう。公的な責任のもとに行われる事業の単なる受け皿といっしょにされたくない、という人たちもいたはずです。

そのような中にあって、業界内で評価を受けていたのは「多くの人々と課題を共有すること」に長けたNPOだったように思います。「NPOらしいNPO」なんて言葉も聞かれました。これまで課題に関心を持たなかった多くの人たちからの共感を得ながら、展開させていくことが「NPO的」であるというイメージです。

公的な課題解決へ向けて施策が動き出すには、必ずしも社会全体の支持が必要じゃありません。当事者や家族や支援者による運動だけで大きく前進していける施策もあります。自分が最も長く関わってきた障害児の福祉もそうです。今でいう「子どもの貧困」や「待機児童」のように大きな注目を集めたことはないのに、使えるサービスはこの10年ほどで劇的に増えました。なぜなのかは、自分にもよくわかりません。それが「政治力」なのかもしれません。

「多くの人々と課題を共有する」には、さまざまなやり方があります。課題そのものをセンセーショナルに伝えてもよいし、課題解決の方法に新しさを見せてもよい。多くの課題は昔から変わらずあるのですから、その「伝え方」「見せ方」が大事です。例えば、障害者福祉で言えば、かつては目立たなかった「発達障害」をクローズアップしたり、「障害者にもこんな才能や能力があるのだ」とアピールしたりする取り組みは、耳目を引きます。インパクトがあり、情報の受け手の価値観を揺さぶるような発信が支援者を増やすわけです。

この延長にファンドレイジングもあると思えば、記事の中の「おしゃれNPO」がそれほど新しいものとは自分には思えていません。「社会起業家」系の人たちは「ビジネスの手法」を社会的な課題解決に活用してきたわけですが、それは「課題」という「商品」(皮肉ではありません)のマーケティングにも生かされます。インターネットが普及した結果、20年ほど前よりも目立ってきた、ということでしょう。

 さて、それでは「ソーシャルセクターによる私的救済」を自分自身も求めて活動していくのかと問われれば、たぶんこれからもやらないだろうなあと思います(リンク記事中で「その影響力を使い、私的な資金調達も可能だろう」と書いていただいたのはうれしいことですが…)。

大きな注目を集めることのできるおしゃれでかっこいい社会起業家とそのマーケティング戦略が、この社会の課題をすべて照らして、莫大な資金を持続的に調達できる、なんてことは幻想です。私たちがフィールドとしている地域で障害児を支援する福祉サービスに費やされる公的予算額は昨年、1億円を超えました。とても小さな町です。20年前は限りなく0円に近い数字でした。

昨今のクラウドファンディングの隆盛を踏まえても、それらが社会制度に取って代わるような力はないでしょう。局所的に特定の社会資源をスタートできる、程度です。

では、社会起業家による多額のファンドレイジングの成功例は、社会制度の変革をあきらめた結果と考えてよいでしょうか。もしかしたらそれで悦に入ってしまう人がいるのかもしれませんが、自分はそのように考えていません。

ここが重大な問題と思うのですが、社会制度を創出しようとする過程には、「必要」を示すよりも前に、まず「支援」を提供しなければいけない、というルールがあるように思います。すなわち「実績」が必要だということです。

何らかの支援の「必要性」は本来、丁寧なリサーチによって明らかにできるはずです。「こんなことに困っている」という当事者の声を集めて、その解決策を導ければ、すぐに社会制度が生まれ、支援がはじめられてもおかしくありません。けれども、そのようなリサーチが公的になされて、そこから制度が設計されることはめったになく、まず誰かがやってみる。そして、現に支援が提供されているのだから、ニーズがあるとみなされて、制度化がはじまる、という順序です。「こども食堂」もそうであり、「こども食堂」の次の展開もきっとそうなのでしょう。

自分自身が「やりがい搾取」について記事を書いたわけですが、自分はボランティアを否定するわけでもなく、その社会的な価値を認めています。もともと学生ボランティアからの出発でしたから。

社会や行政に求めたいのは、どんな形で取り組みがはじまるにしても、そこでニーズが具体的に見えてきたら、誠実に対応しようとする柔軟さです。やってみる中でわかってくることはたくさんあります。事前の想定を上回ることも下回ることもあるでしょう。ボランティアでできると思っていたことが、無理だとわかることもあるでしょう。

そのとき、次のステージへと向かうことをみんなで始めなければ、ずっと「やりがい搾取」が続いたり、一時的な特殊事例のままで終わってしまったりします。ひとたびはじめた支援を無責任に終わらせたり、誰かが無理を続けることにしないためにも、支援が社会制度としてニーズに適したものになるところまでみんな注目を続けてほしい。そのように思います。行政に対しても、寄付者に対しても、です(もちろん注目を続けてもらうためのNPO側の努力も大事です)。

リンクした記事中で言及された件についてはまだ結論が出ておらず、他にも小さな法人を揺らがせる課題が次々と出てきた4月で、心身ともにボロボロなのですが、書いてみました。なお「ですます調」なのは、すさんでいく気持ちを穏やかにしたかったからだと思います。たぶん。

自分の心身と組織がどうにか平穏を取り戻しますように。今夜は、朝までちゃんと眠れますように。

共感ありがとうございました

まったく状況は変わっていないのですが(むしろ複雑さは増している気さえしますが)、前回と前々回更新の記事をいったん下書きに戻します。ブックマークなどして後で読もうと思われていた方がおられたら、申し訳ありません。

大事なことを書いたつもりなので、また時機を見て公開するかもしれませんが、ひとまず。

すべては生き延びるために

短文のレビューだし、Facebookのほうに投稿するつもりだったのだけれど、なんだか不具合でうまくいかないので、ずっと更新のできていないブログに。

おさなごころを科学する: 進化する幼児観

おさなごころを科学する: 進化する幼児観

 

一読して、著者が本当に優秀な方だなあ……と。

認知発達についての説明は研究によって書き換えられていく部分もある上に、アプローチも多様なので読者を混乱させないように展開させていくのが大変だと思う。それを「乳幼児観」の変遷や上積みとして、きれいにまとめている。

著者自身の研究に基づく乳幼児観の部分を一番興味深く読めた。「それぞれの時期の行動はすべて適応的だ」というメッセージが、さまざまな特性をもつ子どもと関わる自分たちのような支援者にも馴染むからだろう。

乳幼児期の実行機能が限られているのはなぜか。イマジナリーフレンドにはどんな意味があるか。進化心理学的な知見に脳科学も加わって、定型発達の過程も、実在しないものを仮想することも、生きるための必然として捉え直されていく。

それは「問題行動」に対してあるべき理解にも似ている。もちろん、子ども自身にとって有意味だから何もかもが認められるわけではないけれど。支援の出発点としては、そこから考えを進めていくのが常道となってほしい、と思う。

ところで、読みながら思い起こしたのは、アメリカでベストセラーになった『Uniquely Human』のことだった。「自閉症」をまさに「適応のための行動」という観点から捉えた本。その邦訳が出たら「発達障害観」の転換に一役買ってくれると期待しているのだけれど、まだだろうか。出版予定は昨夏と聞いていた。ずっと待っている。

頑張れ、福村出版。

本年もよろしくお願い申し上げます

明けましておめでとうございます。

クリスマスイブに帯状疱疹を発症。年末年始は痛みと闘いながら、きつい神経痛が残るのではないかという不安に怯える日々です。

更新があまり期待されていないブログでしょうが、また思うところがあったときに何か書きたいと思います。

病気になって思うのは、情報があふれる社会ではあるものの、簡単に手に入るのは中途半端なものが多く、やはり信頼関係を築くことのできるプロと出会えることが不可欠ということでしょうか。

何も知らなければ目の前の医師の治療方針に従うしかありませんが、ネット上で病気についても薬についてもある程度の情報は手に入ります。闘病記のたぐいも見つかります。その中には専門の医師が書いたものや話したことも含まれます。目の前の医師の言うことを疑わせるには十分です。

病気の状態と治療について、人間の体の根本的なメカニズムから解説してくれる医師とめぐりあいたい、という今の気持ちから、支援者としての自分も省みたいと思います。それにしても、痛い。とても痛い。精神的にも滅入るばかり。

今年もよろしくお願いします。

ソーシャルワークの定義を通じて暴かれる欺瞞

(個人的に)待望の新刊。

国際ソーシャルワーク連盟による「ソーシャルワークのグローバル定義」というものがある。社会福祉系の大学等では必ず教えられるはずだ。

この定義は過去に2度改められてきた。せっかくなので引用しておく。

・1982年定義

ソーシャルワークは、社会一般とその社会に生きる個々人の発達を促す、社会変革をもたらすことを目的とする専門職である。

 

・2000年定義

ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。

・2014年定義

ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。

この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。

だんだん長くなっていることは一目瞭然であるが、 これは様々な背景があって必要に迫られ「改良」を図ってきたゆえである。無意味に長文化したわけではない。

本書は「ソーシャルワークにおける『知』はいかにして社会的に作られてきたか」を「ソーシャルワークの新しいグローバル定義」に採用された概念につながる歴史を追うことで明らかにしようとしている、と思う。「と思う」と書きたくなるのは、この説明が書名とややズレているように感じるから。

このような書名で出版したのは、なぜだろうか。グローバル定義に使われた多くのキーワードは「近代西欧的なもの」に対して反省的である(「多様性」「地域・民族固有の知」など)。一方で「社会的結束」のように、暴動やテロなどのリスクが反映された概念も組み込まれている。

社会福祉が「社会事業」と呼ばれていた黎明期から現代に至るまで、日本の社会福祉(学)史もまた同様の「西欧近代的なもの」を抱えてきたのにその問題をスルーしてきた。また、例えば地域における人と人のつながりを重視する立場は、しばしば多様性の尊重どころか排他的に作用しうる。

日本の社会福祉学もそのような歴史と現状に目をそらすことなく自覚すべきだ、というメッセージと思えば書名に納得もいく(たぶん出版社から提案されたのだろうと勝手に想像)。

方法としては「ソーシャルワークにおける知」(とその担い手)に関する知識社会学、歴史社会学的な研究、と言ってよいのだろうか。各章では、特定の概念と関連の強い史実が取り上げられている。多くの研究者からあまり注目を受けてこなかったものにあえて注目して、明るみに出している。

もし書名のとおり「社会福祉学における『社会』の捉え方」を分析するのが本当の主題ならば、この研究方法では済まなかったはずだ。「社会福祉政策」ならばまだしも「社会福祉(学)」における社会観の変容について記述するには、どれほどの文献を対象にしなければならなくなるかわからない。

けれども「ソーシャルワークのグローバル定義の変容」を軸にしているから、ポイントは絞り込まれる。そこから、日本の社会福祉史においてあまり指摘されてこなかったことを言う、のが、たぶん著者のやりたかったことなのだろう(もしこの理解が誤っているなら、言いたいことはいろいろ出てくる)。

実際、コロニアリズムとか社会ダーウィニズムとか「五人組」とか、日本の社会福祉の中にもありながらほとんど言及されてこなかった暗部をずばずば突いてくる。過去についても現在についても社会福祉の欺瞞を許さない。

終盤は想像以上に政策批判的な色合いの強い本になっていった。研究者として、というだけではなく、ひとりの生活者として経験してきたことから「専門知」と著者の言う「在来知」のバランスについて考える機会をたくさん与えられたのではないか、となんとなく勝手に想像する。そして、そこに共感できる。最後は「当事者研究」とかに接続されていくのかな、とも想像しながら読んでいたが、そのあては外れた。時期尚早だったか。

最近は仕事上の必要に迫られて、発達心理の教科書的なものを読むばかりだったので、メッセージとストーリーの明確なものを読めて、とても面白かった。同時に、誰か「社会福祉学における『社会』と『知識』の歴史社会学」をがっつりやってくんないかな、とも思った。「社会福祉」と「社会福祉学」の関係もちゃんと整理しながら。

その際には「知識」の一語で表されるものも、誰かもっと機能別に類型化すべきと思う。その過程を経ないと、この本で言うところの「在来知」と「専門知」のそれぞれをどう評価すべきかを定めにくい。

研究者は当然読むべき。言われなくても、みんな読むだろうけど(そのためにこの書名にしているのだろうし)。読みやすいので、現場のワーカーもぜひ。