泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

参院選マニフェスト比較2013(障害者分野)

 選挙前恒例のマニフェスト比較です(参考:衆院選2012参院選2010)。
 どこからどこまでが障害者関連政策であるのか、というのも難しい線引きなのですが(特に社会保障関連はほとんどが結びつくので)、ひとまずわかりやすく「障害者」「障害」などの言葉が含まれる内容部分に限っていることをご了承ください。また「マニフェスト」という言葉も全政党が嫌っているようで別の表現を用いていますが、でもまあ要するにマニフェストだと思うので、そこもご容赦ください。
 以下、参議院議席数順に並べていきます(ので、悪い意味で注目のあの党は最後のほうです)。なお、もし誤りや見落としなどあればご指摘ください。修正します。
(7/5 末尾に現有議席のない政党を追加しました)
(7/20 比例区の参考になるエントリをあげました→こちら

民主党
http://www.dpj.or.jp/policies/manifesto2013

障がい者
●障がいのある人のニーズを踏まえ、障害種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、安心して地域で自立した生活ができるよう、しくみづくりや基盤整備、人材育成に取り組みます。
●障がいのある人もない人も共に生きる共生社会を実現するため、民主党が主導してきた「障害者差別解消法」の成立を踏まえ、その実効ある運用をめざすとともに、「国連障害者権利条約」を早期に批准します。

「差別解消法の成立は先月だったけれど、自分たちの成果物だ」とアピールしつつ、障害者権利条約の批准について積極的な姿勢を見せる民主党。なお、権利条約批准は前回衆議院選挙時に引き続いての主張です。一方で、総合支援法がらみでは具体的な記述がなくなりました。これでは自民党と言っていることに差がないのでは…。
 音声版やテキスト版、白黒反転版、点字版などをいち早くウェブ上で公開した点は評価できるのではないでしょうか。なお、公示日以降はマニフェストの「完全版」が出るらしいので、要確認です(もし変化があれば、修正します→7/4追記:「完全版」が出ましたが、変化はありませんでした)。

自民党
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/121527.html

持続的な社会保障制度の確立
障害者の日常生活及び社会生活を支援し、豊かな共生社会を創るため、「障害者差別解消法」の着実な推進、障害福祉サービスの充実、障害者の就労支援を進めます。

前回の衆議院選挙時と比べるとボリュームが激減して、具体性に欠く内容となった自民党。「『持続的』な社会保障制度」というのがいかなる意味であるか、を考えるのはきっと大切なことでしょう。「持続的であるためには何が必要か、みんなわかるよね(はっきりとは言わないけど)」というメッセージです。

公明党
https://www.komei.or.jp/policy/manifesto/2013.html

Ⅲさらにきめ細かな社会保障の充実と教育の改革
3 年金の機能を強化
 1 低所得者への年金加算の拡充
新たな福祉的給付として実施される実質的な年金加算や免除期間加算の効果を検証し、より一層の拡充による低年金・無年金対策に取り組みます。その際、あわせて障害基礎年金の加算など所得保障をより充実させます。

5 教育の改革
 4 障がいのある子どもへの特別支援教育障がいのある者とない者が共に学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方=「インクルーシブ教育システム」を構築し、特別支援教育の充実を推進します。小学校・中学校・高等学校等に特別支援
学級の設置を推進するとともに、特別支援教育支援員の拡充を進め、国連の障害者権利条約の批准を推進します。
 5 教育ニーズの多様化への対応(電子黒板やデイジー教科書の普及)
教育ニーズの多様化に対応するために、電子黒板をはじめとしたICTを利用した教育プログラムを普及させます。また、特別支援教育でのマルチメディアデイジー教科書の導入を促進するなど、教科書のバリアフリー化を進めます。

 障害基礎年金の加算については以前からずっとブレずに主張を続けている公明党。権利条約批准については2010年の「参院選マニフェストに書いていましたが、復活。「インクルーシブ」という表現が入っていることや支援学級の設置について「高等学校等」も含まれていること、支援員の拡充について触れている点などが特徴的と思います。そして、前回選挙で無償供与を目指していたデイジー教科書が今回も。なお、ここには含みませんでしたが、「難病対策総合支援法(仮称)」の制定など難病対策の抜本的な改革を言っています。

みんなの党
http://www.your-party.jp/news/office/002185/

5 障がいがハンデにならない社会へ
障がい者支援を家族から社会による扶助に切り替え、障害者自立支援法違憲訴訟の和解の基本合意に沿った障がい者施策を目指す。
障がい者の就労支援は、国連の障害者権利条約に則り、雇用における合理的配慮がなされるよう関連施策を充実させ、在宅ワークの活用等も積極的に行う。
3 災害時に障がい者を孤立させないよう、災害時要援護者リストを整備し、地域NPOや教育・医療機関とも連携。緊急時に共助が行える体制づくりをする。また、自然災害の多いわが国において必要とされる、災害時の緊急医療に対応できる医師・看護師・民間ボランティアを育成する。

(7/4追記:「完全版」に基づいて、少し修正しました)前回の衆院選でも「災害時」の支援について触れており、この点にこだわりをもった議員がいるのでしょう。自立支援法違憲訴訟の基本合意に沿うというのも前回から変わらない主張です。となると、かなり総合支援法に対して批判的でなければいけないはずですが、どの点を問題と考えているのかまではわからないのが残念。雇用部分に限った書き方とはいえ「合理的配慮」の単語を入れてきたのは差別解消法の成立を踏まえてのことと思います。前回衆院選時にあった「犯罪を繰り返す精神障がい者の再犯防止対策」というひどい表現は無くなりました。「インデックス版」のほうには特別支援教育についての記述が少しだけあったのですが、「完全版」にはなぜか見当たりません。

生活の党
http://wp.seikatsu1.jp/activity/party/act0000093.html

【Ⅵ、社会保障・雇用:格差をなくして国民が助け合う仕組みをつくる】
7.障がい者支援の充実
・障害者総合支援法の見直しに向けて、制度の谷間を無くすため、障害支援区分などに対し、当事者の意見を取り入れる。

総合支援法の見直しに言及している生活の党。前回選挙時の「未来の党」はまったく障害者についての言及なし、という衝撃の内容だったので、それよりは前進しています。自立支援法改正の際に重視しようとしながら結局活かされなかった「当事者の意見」に改めて耳を傾けようとしているようです。

日本共産党
http://www.jcp.or.jp/web_policy/html/2013sanin-seisaku.html

(膨大なボリュームなので、リンク先をご覧ください…)

 転載するには長すぎるため、リンク先をご参照ください。ポイントを列挙すれば、「障害福祉は1割負担でなく無料」「区分認定は見直して必要量に応じた支給決定を」「ガイドヘルプ等は国事業に戻して、無料」「事業所への日額払いは月額払いに戻す」「年金は大幅に引き上げ」「法定雇用率はさらなる引き上げ」「支援学校の過大・過密の解消」「自立支援医療も無料化を目指す」「社会的入院を無くす」「介護保険制度の優先原則を廃止」「介護保険障害福祉の統合反対」「療育は、契約制度をやめて、応益負担をやめて、月払い報酬に」「保育所等訪問支援の利用者負担廃止」「障害者基本法を改正して『合理的配慮を行わない=差別』に」「差別解消法の施行は早めよ」など。これでもかなり省いています。財源は「大企業や富裕層の負担で」。かなり仔細に及んでいるあたり、全国各地でさまざまな声を直接に当事者から聴いている、のはよくわかります。

みどりの風
http://mikaze.jp/news/upload/1372851421_1.pdf

社会保障改革
障がいがあっても安心して暮らせる社会づくりを進めます。
・真の自立につながる障がい者対策

議席数としては4つもっているので、この位置での紹介。「みどり」と名前をつけて「共生社会」を標榜する党がたったこれだけの言及というのは、残念。「真の自立」って何なのでしょうか…。

社民党
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/images/130620.pdf

(少し長いのですが、ぎりぎり許容範囲かと思うので、全文転載します)
2.社会保障
障がい者
1,当事者が主体となる障がい者制度改革を推進します
○成立した「障害者差別解消法」を円滑に実施し、障がい者権利条約が原則とする「社会への完全且つ効果的な参加とインクルージョン」を推進していきます。国連「障害者の権利条約」の批准を目指します。
○「障害者自立支援法」が改訂され、「障害者総合支援法」ができましたが、抜本的な改正には至っていません。収入認定を世帯単位から障害児者本人のみに変えること、自立支援医療に減免制度を導入すること、難病者・慢性疾患者等を制度の谷間に残さないことなど、残されている課題の取り組みます。
2.国際的な水準に基づいて「障がい者の定義」を確立します
○2011年通常国会では、障害者基本法の改正、障害者虐待防止法の制定が行われました。法律の徹底、実効性を高めるとともに、さらに法整備をすすめ、「国連障がい者の権利条約」の批准を目指します。
○国際的な水準による「障がいの定義」を確立します。「国連障がい者の権利条約」にもとづいて障がい者の所得保障、働く場や生活の場など基幹的な社会資源の拡充、就労支援策の強化などを行います。
発達障害者が犯した事件に対し、社会的な危険視から量刑を行う判決が裁判員裁判で出されました。これは発達障害に対する無理解によるものであり、正しい認識を広げなければなりません。発達障害者支援法による支援策を強化し、都道府県の発達障害者支援センター、地域生活定着支援センターにおける受け皿つくりをすすめます。
3.障がい者の働く場、雇用を広げます
障がい者の法定雇用率が2013年度から引き上げられ、民間企業は2.0%(現在1.8%)、国・地方自治体は2.3%(現在2.1%)になります。障がい者の自立と共生社会の実現に向けて、法定雇用率の達成をすすめます。
○ハードルの高い「一般就労」と訓練的な要素が強い「福祉的就労」の中間となる「社会的雇用」の実践をもとに、社会的雇用の制度化をすすめます。
障がい者の暮らしの基盤となる障害者年金を拡充します。
4.障がい者の社会参加を推進します
○障がいを持つ人が「参加しやすい選挙」は、お年寄りや体の不自由な人などすべての国民にとって「参加しやすい選挙」です。選挙のバリアフリー化、ユニバーサル化を推進します。
地上デジタル放送への移行に際しては、「視覚障がい者にも使えるリモコンを」、「障がい者にもチューナーを」という要求への対応を強化します。
障がい者が放送を通じて情報を入手するうえで必要な手段である字幕放送ならびに手話放送の増加を求めます。
○移動困難な障がい者が住み慣れた地域の中で自立し、社会参加の機会を増やすには、公共交通を整備することが第一ですが、運転免許の取得がネックとなっていることも否定できません。障がい者の運転免許取得を支援するためのバリアフリー化をすすめます。教習所や各種の講習、免許行政窓口で、手話通訳、文字通訳、字幕などの情報保障の整備をすすめます。指定教習所において手動・足動運転補助装置を普及させます。交通の安全と障がい者等の社会参加が両立するよう、障がい者団体を含め、広く各界の意見を聴取しつつ、運転免許の適性試験・検査についても科学技術の進歩、社会環境の変化等に応じて見直しを行います。障がい者の運転免許取得を支援するため、取得費用に対する助成制度をつくります。
○著作者の音訳を制限する著作権法を改正するとともに、「EYEマーク」運動をすすめます。
6.教 育
○事務職員、養護教諭、栄養教職員、専任司書教諭、実習教諭、部活動の指導員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー特別支援教育支援員などの配置を拡充します。
○インクルーシブ教育を実現し、障がいを持つ子どもと持たない子どもが共に学び育つ総合教育と総合保育に取り組みます。
○視覚障がい者高齢者の読書権を保障するため、大活字出版物やデイジー教科書(デジタル化して文字と音声を同期させて読むことを可能とした教科書)に助成を行ないます。代読・代筆サービスを図書館などで受けられるように制度を広げ、人員養成への支援を行ないます。

施策状況についての解説をマニフェストに含んでいる社民党。社会参加のためのバリアフリー化、ユニバーサル化にいつも力点を置いている感があります。よく読むと、前回の選挙とほとんど内容が重なっている印象です。半年で大きく変化しているのは差別解消法の成立ぐらいなので、これが当然と言えば当然のようにも思います。

日本維新の会
https://j-ishin.jp/pdf/2013manifest.pdf

(言及なし)

 そして、決して期待を裏切らない維新。国政選挙でも地方選挙でも決して言及することはありません。昔は言及なしだった「みんなの党」などは少しずつ進歩してきたというのに。「障害」関係者の中でひとりでもここを支持する人がいるのでしょうか…。

(7/5追記)
現有議席のない政党を忘れていました…。たぶん、これですべてのはずです。

緑の党
http://greens.gr.jp/uploads/2013/07/Green_MFT2013.pdf

7 多様な生き方を認め合い、子どもとともに未来を育む社会へ
誰もが差別も排除もされずに安心して暮らせる社会のための法制度を
・障がいのある人びと、被差別部落の人びと、先住民族や外国系(籍)市民、性的マイノリティなど、少数者の人権や当事者としての権利を保障する。

マイノリティの人権という観点からの記述がありました。

幸福実現党
http://publications.hr-party.jp/files/policy/2013/001//origin/all.pdf

9.社会参加支援
障害を持つ人が幅広く社会参加できるよう支援し、社会に貢献する生きがいと、税金を納められる喜びを感じられる国を目指します。

お国のためにいる障害者。当然のごとくほとんど話題になりませんが、社会保障の自助・共助路線はどこよりも強烈です。

新党大地
http://www.daichi.gr.jp/pdf/20130702.pdf

(言及なし)

「政治は弱い人のためにある」と叫んでおられるのですが、障害者は含まれていませんでした。