衆院選マニフェスト比較2012(障害者分野)
前回の参院選時も作った各党マニフェスト比較(障害者分野)を今回も作成してみた。さまざまな施策は関連しあうわけなので、障害者について書かれたところだけを抜粋されてもなあ、と思われる方もたくさんいるだろうが、基本的な姿勢と「力の入れ具合」みたいなものは感じ取れるのではないだろうか。
まだ一部公開されていない党もあるので、公開されたら追加掲載していこうと思う。なお、解散前の議席数順に並べている。「マニフェスト」という言葉を使っていない党も多いが、そこはご容赦いただきたい。短めのコメントつき。
民主党
http://www.dpj.or.jp/global/downloads/manifesto2012.pdf
3.働くことを軸とする安心社会を実現する
4.すべての人に居場所と出番のある社会を創る
前回参院選の1行マニフェストよりは長くなった。総合支援法の見直しに言及することで「力及ばずに自立支援法廃止は骨抜きになったけれど、当事者の意見はこれからも大事にしていきますよ」と。ホームページにはテキスト版や白黒反転版、音声、点字なども用意されており、PDFで読むのが難しい方たちへの配慮は丁寧。なお、マニフェスト公開において、視覚障害への配慮が見られたのは、ここと共産党だけ(※12/5追記 その後、時間差をつけて自民党・社民党もアップロードしたようです)。
自民党
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf
78 一人ひとりを大切にし、充分に力を伸ばす特別支援教育
養護教諭の複数化の充実、特別支援教育コーディネーターの機能強化、高等学校への支援員の配置、発達障害のある児童生徒の実態調査を検討した個々の生徒に必要な教育環境の整備、ICT等の技術を活用した教材等の研究、指導内容・方法の工夫改善、障害のある生徒に配慮した高校入試の実施、中・高連携による進路指導の充実、特別支援学校等と産業界との連携による実践的指導の実施、障害者就労支援コーディネーターの配置、国立大学法人附属学校における特別支援教育の推進・充実等に重点的に取り組みます。
すべての小中高教員が特別支援教育の基礎を身に付けられるようにし、発達障害を含む障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な教育を推進します。134 妊娠から子育てまで切れ目のない家族支援
・5歳児検診の実施など、乳幼児健診を充実し、発達障害などを早期に発見できる体制の整備161 障害者の方への施策の推進
障害者自立支援法については、応益負担から応能負担に改めるとともに、知的障害、発達障害、精神障害のある人に対して、自民党が障害程度区分から障害支援区分に修正した上で、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いがわかるような形に法改正を行いました。
今後は、障害者総合支援法を着実に推進し、国と地方の適切な役割分担の下、地域の実情を踏まえながら、計画的なサービスの基盤整備を図ります。また、障害者に対する福祉的な給付を着実に実行するとともに、自民党が主導した障害者優先調達推進法(ハート購入法)を着実に実施する等雇用の促進に努めます。
また、精神障害のある人が地域で安心して暮らすことができるよう、精神保健医療福祉施策の改革に取り組むとともに、障害福祉サービスの利用の観点から、成年後見制度の活用を更に進めます。
さらに、障害の有無にかかわらず、国民の誰もが相互に人格と個性を尊重し支えあう「共生社会」を実現するため、幅広い国民の共感と理解を得ながら、「障害者虐待防止法」を着実に実施するとともに、障害のある人の自立と社会参加のための施策を着実に推進します。
前回マニフェストには書かれていた「障害基礎年金の充実」と「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備」はなくなった。ここ最近の法改正で達成された、という認識だろうか。ハート購入法は以前からアピールを続けている。基本的に既存の障害者関連施策をさらに進めていく、という内容。最初の公表から少し時間差はあったが、白黒反転版を用意。
日本未来の党
http://www.nippon-mirai.jp/
(言及なし)
「親の子育て環境の整備」や「介護制度の充実」はあるが…、障害を意識して書かれているとは考えにくい。障害福祉においては歴史ある滋賀県知事が党首をつとめる政党としては残念。
公明党
http://www.komei.or.jp/campaign/nipponsaiken/manifesto/manifesto2012.pdf
5 一人ひとりを大切にする社会へ。
7 所得保障で安心を。
障がい者福祉の拡充
1. 所得保障の充実
新たな福祉的給付の創設に伴う障害基礎年金の加算措置を着実に実施。所得保障をより充実させ、障害年金の支給要件の緩和にも取り組みます。
2. 障がい者が地域で暮らせる体制整備
障がい者が地域で安心して暮らせるよう、高齢化の対応を含めた福祉基盤の整備を図るとともに、ハード・ソフト両面にわたるバリアフリーの推進、「障がい者差別禁止法」の制定を目指します。6 子どもの幸福を実現する明日へ。
2. 障がいのある子どものための特別支援教育を手厚く充実
特別支援教育を拡充するため、小学校・中学校・高等学校等に特別支援教室の設置を推進します。また、発達障がいなどで“読み”が困難な児童・生徒のための「デイジー教科書※」を教科用特定図書とし、無償供与します。
※デイジー教科書…マルチメディアデイジー版教科書。通常の教科書と同様のテキストと画像をデジタル化し、テキスト文字に音声をシンクロ(同期)させて読むことを可能にした教科書
前回選挙ではかなりのボリュームだったが、かなりコンパクトに。「差別禁止法」には変わらず言及。前回選挙時は「アニマルセラピー」が目を引いたが、今回は「デイジー教科書」に力を入れている。
日本維新の会
http://j-ishin.jp/pdf/honebuto.pdf
(言及なし)
想像通りの言及なし。
みんなの党
http://www.your-party.jp/file/agenda201212.pdf
B 「社会保障不信」の解消と「世代間格差」の是正によって、若年世代には希望を、高齢者には安心をもたらすセーフティネットを再構築する
1.世界最先端の医療と切れ目のない介護・障がい者施策ですべての人に「生涯安心」を
12 「こころの健康基本法」を早期に制定する。精神医療における向精神薬への過度の依存を是正する。自殺予防対策で内閣府、厚労省、文科省の連携を強化。WHOの自殺報道のガイドラインを活用。
15 障害者自立支援法違憲訴訟の基本趣旨に沿った障がい者施策を目指す。災害時に障がい者を孤立させないよう、地域NPO等と連携して体制を築く。2.安全・安心を実感できる社会へ
5 性犯罪者や犯罪を繰り返す精神障がい者の再犯防止対策を強化する。
前回選挙時は言及なしだったが、今回は「自立支援法違憲訴訟の基本趣旨に沿った障がい者施策」。ちなみに障害者総合支援法の採決では、共産党・社民党とともに全員が反対に回っている。当事者に寄り添っているように見えるが、最後の一行は今回の全政党のマニフェストの中で最悪。誤解を招きまくる表現。
共産党
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/11/20121126-1.html
●障害者の暮らしと権利を守る新法を制定します……福祉・医療の「応益負担」を撤廃し、障害者福祉・医療は無料にします。自立支援法の実質的な延命を許さず、新しい総合福祉法を実現します。
●教育条件の整備をすすめます……少人数学級、私学助成、深刻化している特別支援教育の条件整備をすすめ、教職員の「多忙化」や非正規化を解消します。
「新しい総合福祉法」がどのような意味合いなのかはよくわからないが、普通に考えれば「総合支援法は自立支援法の延長にすぎない」という理解であろう。「応能」ではなく「無料化」を主張するのは、いつも一貫した姿勢。マニフェストはPDF化せずに公開して、白黒反転版のみPDFで用意。
※12/3追記 共産党のマニフェスト「各分野政策」というのが別に公開されているのを見落としていました…(twitterで教えてくださった方、ありがとうございます)。記述が現行制度のかなり子細な部分にまで及んでおり、ボリュームが非常に多いので、以下にリンクします。
14、障害者・障害児・難病患者
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/11/2012-14.html
20、教育(中段あたりに特別支援教育関連)
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/11/2012-20.html
社民党
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2012/data/manifesto121122_02.pdf
3.人・まち・環境にやさしい交通
4.「人にやさしい」、「環境にやさしい」交通を実現します
- すべての人が利用しやすい交通をつくるため、鉄道駅やバス、旅客船、空港のターミナルのユニバーサルデザイン化を進めます。バリアフリー車両開発の財政支援、可動式ホーム柵やホームドアの設置、エスカレーターへの点字誘導ブロックの敷設を推進します。音声や接触・発光ダイオード方式による情報提供装置の普及、見やすくわかりやすい案内表示の整備、ホームや改札等における人的サポートを強化します。シルバーパスの充実、障がい者割引に対する公費負担制度の創設等を進めます。利用者や当事者の声を交通政策に反映できるようにします。
- 移動困難な障がい者が住み慣れた地域の中で自立し、社会参加の機会を増やすには、公共交通を整備することが第一ですが、運転免許の取得がネックとなっていることも否定できません。障がい者の運転免許取得を支援するため、教習所や各種の講習、免許行政窓口で、手話通訳、文字通訳、字幕などの情報保障を進めます。指定教習所において手動・足動運転補助装置を普及させます。交通の安全と障がい者等の社会参加が両立するよう、障がい者団体を含め、広く各界の意見を聴取しつつ、運転免許の適性試験・検査についても科学技術の進歩、社会環境の変化等に応じて見直しを行います。障がい者の運転免許取得を支援するため、取得費用に対する助成制度をつくります。
5.当事者が主体となる障がい者制度改革の推進
1.障がい当事者らがまとめた骨格提言を政策に反映させます
- 2012年通常国会で「障害者自立支援法」を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)にする改正案が成立しました。政府は、障害者自立支援法違憲訴訟団と交わした基本合意文書を真摯に受け止め、現行法を廃止し新法律をつくることを明言していました。また障がい当事者らが参画する「障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会」は骨格提言を構成員55名の総意で出していました。
- しかし、改正案には理念規定に「可能な限り」という文言が挿入されました。また、収入認定が世帯単位の収入ではなく障害児者本人だけで認定する仕組みにならなかったこと、自立支援医療に減免制度が導入されなかったこと、難病者・慢性疾患者等で制度の谷間に残される人がいるなど、骨格提言とは相容れない部分が多く残されました。骨格提言と基本合意はインクルーシブ社会をつくっていくために欠かすことのできない内容であり、社民党は今後もこれらを障がい者施策に反映させていきます。
2.障がい者差別禁止法をつくります
- 多くの国で成立している障がい者への差別を禁止する法律が日本にはまだありません。障害者権利条約が原則とする「社会への完全且つ効果的な参加とインクルージョン」を基本に、障がいを理由とした差別(直接差別、間接差別、合理的配慮を行わないこと)をなくす法律をつくります。
3.国際的な水準に基づいて「障がい者の定義」を確立します
- 2011年通常国会では、障害者基本法の改正、障害者虐待防止法の制定が行われました。法律の徹底、実効性を高めるとともに、さらに法整備をすすめ、「国連障がい者の権利条約」の批准を目指します。
- 国際的な水準による「障がいの定義」を確立します。「国連障がい者の権利条約」にもとづいて障がい者の所得保障、働く場や生活の場など基幹的な社会資源の拡充、就労支援策の強化などを行います。
- 発達障害者が犯した事件に対し、社会的な危険視から量刑を行う判決が裁判員裁判で出されました。これは発達障害に対する無理解によるものであり、正しい認識を広げなければなりません。発達障害者支援法による支援策を強化し、都道府県の発達障害者支援センター、地域生活定着支援センターにおける受け皿つくりをすすめます。
4.障がい者の働く場、雇用を広げます
- 障がい者の法定雇用率が2013年度から引き上げられ、民間企業は2.0%(現在1.8%)、国・地方自治体は2.3%(現在2.1%)になります。障がい者の自立と共生社会の実現に向けて、法定雇用率の達成をすすめます。
- ハードルの高い「一般就労」と訓練的な要素が強い「福祉的就労」の中間となる「社会的雇用」の実践をもとに、社会的雇用の制度化をすすめます。
- 障がい者の暮らしの基盤となる障害者年金を拡充します。
5,障がい者の社会参加を推進します
- 障がいを持つ人が「参加しやすい選挙」は、お年寄りや体の不自由な人などすべての国民にとって「参加しやすい選挙」です。選挙のバリアフリー化、ユニバーサル化を推進します。
- 地上デジタル放送への移行に際しては、「視覚障がい者にも使えるリモコンを」、「障がい者にもチューナーを」という要求への対応を強化します。
- 障がい者が放送を通じて情報を入手するうえで必要な手段である字幕放送ならびに手話放送の増加を求めます。
- 移動困難な障がい者が住み慣れた地域の中で自立し、社会参加の機会を増やすには、公共交通を整備することが第一ですが、運転免許の取得がネックとなっていることも否定できません。障がい者の運転免許取得を支援するためのバリアフリー化をすすめます。教習所や各種の講習、免許行政窓口で、手話通訳、文字通訳、字幕などの情報保障の整備をすすめます。指定教習所において手動・足動運転補助装置を普及させます。交通の安全と障がい者等の社会参加が両立するよう、障がい者団体を含め、広く各界の意見を聴取しつつ、運転免許の適性試験・検査についても科学技術の進歩、社会環境の変化等に応じて見直しを行います。障がい者の運転免許取得を支援するため、取得費用に対する助成制度をつくります。
- 著作者の音訳を制限する著作権法を改正するとともに、「EYEマーク」運動をすすめます。
4.教育 貧困の連鎖を断つ
1.イジメを許さない――共に学び、共に生きる、ゆとりある学校を実現します
- 事務職員、養護教諭、栄養教職員、専任司書教諭、実習教諭、部活動の指導員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、特別支援教育支援員などの配置を拡充します。
- インクルーシブ教育を実現し、障がいを持つ子どもと持たない子どもが共に学び育つ総合教育と総合保育に取り組みます。
3.すべての差別を許さず、誰もが生きやすい社会をつくります
- ノーマライゼーション(共生)の理念や「完全参加と平等」を達成し、障がい者の政治的・経済的・社会的・文化的権利を確立します。「国連障がい者権利条約」の批准と国内法整備、実効性ある「障がい者差別禁止法」を制定します。
全政党の中で最大のボリューム(12/3追記:共産党のマニフェストに見落としがありました)。自立支援法から総合支援法へと連なる流れについての解説付き。移動、バリアフリー、ユニバーサルデザインなどへの言及が多いのが特徴的で、個別には具体的な内容を含む。教育については「特別支援教育」というより「インクルーシブ教育」「総合(「統合」の意味?)」を強調している。公表から少し時間差をおいて、ダイジェストの音声版と白黒反転版を用意。
国民新党
http://www.kokumin.or.jp/ckfinder/userfiles/files/seisaku.pdf?PHPSESSID=bbfc52bc350fef067e464b8786614d1e
(言及なし)
前回選挙時は少しだけ触れていたが、今回はなくなった。
新党大地
http://www.daichi.gr.jp/images3/pdf/daichi_chikai.pdf
(言及なし)
ただし「介護等の制度、施設の充実」とか「あらゆるマイノリティへの差別を根絶」などは書かれている。この「等」や「あらゆる」の中に含まれているのかもしれない、という好意的な解釈は可能。
新党改革
http://shintokaikaku.jp/manifesto2012.html
(言及なし)
党首はあの元厚生労働大臣だが、前回マニフェストも言及がなかった。高齢者介護には思い入れがあるのだろうが。
新党日本
http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/nippon2012m.pdf
(言及なし)
「ベーシック・インカムとベーシック・ワークで社会福祉を充実」の中に含まれていると信じたい。