泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

否定的体験、不利益、溜め

私たち、発達障害と生きてます―出会い、そして再生へ

私たち、発達障害と生きてます―出会い、そして再生へ

  • 作者: 高森明,木下千紗子 ,南雲 明彦 ,高橋今日子 ,橙山緑 ,片岡麻実 ,鈴木大知 ,アハメッド敦子 
  • 出版社/メーカー: ぶどう社
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 単行本
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 8人の発達障害をもつ人たちによる共著。とても全体のバランスがいい。単著で発達障害について書くと、どうしても個人的な体験に偏りがちになるところを、相対化できる。
 やっぱりインペアメントの体験(これを「ディスアビリティの体験」と明確に区別するのはなかなか困難だろう)が強烈で、各章末にある高森さんのまとめも「既存の障害学+α」を少し意識したものになっている(気がする)。
 が、そんな読み方をするよりも、学校や職場でこれでもかというぐらいに繰り返される排除体験と、それでもなお包摂されようとする多様な努力に「なんて度量が狭い社会に我々は生きているのだろう」ということを気づかされることのほうがずっと重要だろう。執筆者は若い人も多いのだけれど、今の学校教員はもう少しましになっているのだろうか。
 最後に湯浅誠の「溜め」の話が出てきて、決してアカデミックなものではないが現場の強い実感をもって普及していくこの概念に、偉大さを感じるのだった。3章は発達障害をもつ人に対しての具体的なアドバイスに特化しており、多様な読み手にとって有意義な本。おすすめ。