泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

甘やかせ!

 読んで少し驚いた。

 子どもの育ちについて、これほどまでに自信をもって言えるものなのか、と。
 この断言っぷりはすごいと示す意味で、以下は本書からの引用(これだけ並べると、すごく極端な主張のように見えてしまう。断片的な引用は誤解を招きやすいので、それぞれの意味についてはきちんと全体を読んで理解してほしい)。

過保護は自主的でいきいきした子を育てますが、過干渉は自立の芽を摘みます。この本を読む方々には、ぜひともお子さんを過保護に育てていただきたいと思っています。

子どもの願いはどんなものでも喜んでかなえてあげていいのです。

もしもわが子が誰かに乱暴しても、子どもに「謝れ!」なんて言ってはいけません。それで満足するのは親だけです。相手の子に謝るのは親の仕事だとわたしは思います。

このお母さんは、学校の先生にも保育園の先生にもいろいろ言われて、必要以上に不安にさせられてしまったようですね。でも、わが子をいちばん理解しているのは親ですよ。先生の言葉をあまり神経質にとらえる必要はありません。面談の場では「はい、そうですか」と聞き、あとは忘れちゃってもいいんですよ(笑)。

「人より優れている部分があれば自信がついて友だちとも交われるようになるかもしれない」と考えているようですが、それはまちがいです。自信というのは、仲間に承認されて、一目置かれて初めてつくものです。ひとりぼっちで何かできるようになったとしても、それは「自信」にはならないのです。

忘れ物や落ち着きのなさと「しつけ」はまったく関係がありません。

食べたくないものは、無理に食べさせる必要はありません。

 佐々木正美さんと言えば、「TEACCHの人」という印象が強く、自閉症児のことを頭に浮かべてしまいやすい。しかし、ここでは「児童精神科医」として、発達障害に話を絞ることもなく、子育てについての相談を受けている。
 おそらくとてつもない数の子どもと親を見てきた人であるに違いないし、専門知識の豊富さもハンパじゃないに決まっているのだが、一般向けの本なので、「こんな実証研究がある」みたいな話は全く出てこない。親に向けて、とにかく「子どもとはこういうものなのだ」と言い切る。子ども時代に親から十分に受容・承認された印象がなく、その影響が今も根強く残っているような気がする自分にとっては、共感できる部分もとても多い。
 しかし、この本に書かれていることの多くがすでに確証されたものなのだとしたら、こうした知識はきちんと保育関係者や教育関係者に共有されているのだろうか。もし確証されていないのだとしたら、ここまで言い切ってよいものなのだろうか。
 そして、ここに言われていることは自閉症児についても同じと考えてよいのだろうか。言及の一部から判断すると、発達障害と健常児は連続的なものとして捉えられているようなので、基本は同じということでなければ矛盾してしまうだろう。しかし、TEACCH関連本ではあまり触れられないような話が多いため、障害児関係者としてはなんだか戸惑う。