泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

彼らは介護職として定年まで働き抜けるのだろうか

介護職の賃金 平均より約9万円低い
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140423/k10013963301000.html

介護施設で働く人の賃金について)去年10月の時点で正規職員の賃金の平均は月額で20万7795円と、すべての産業の平均(29万5700円)よりおよそ8万8000円低かったことが分かりました。
 また、サービス残業をしていると答えた人が61%に上り、月に10時間以上、サービス残業をしているという人も23%を占めました。

ここでの「介護」は高齢者介護と思われるので、障害福祉とはまたずいぶん状況が違うかもしれないけれど、サービス残業がこんなに少ないの?と思ったのが第一印象。どこに調査票を配布して、どう回収したのだろうとよく読むと、

この調査は労働組合全労連が全国の介護施設で働く人を対象に調べたもので、6300人余りから回答を得ました。

ああ、労働組合を通じてやった調査の結果だから、かなり回答者が限定されているわけだ。調査票は見つけられなかったけれど、調査の概要としてはたぶんこれだ。
【13.12.03】全労連「介護労働者実態調査」の実施について
http://www.aichi-irouren.jp/topics/131203-164523.html

2.調査対象
1 医労連加盟組合が存在する介護施設特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護療養型施設 通所リハ・通所介護 短期入所施設 グループホーム 小規模多機能施設(複合型含む) ケアハウス・養護老人ホーム 高齢者住宅 民間老人ホーム など)重心 の介護職関係職員(介護職(介護福祉士、無資格含む)、生活相談員、ケアマネ、看護師、OT、PT、ST、など)とします。

 いわゆる「施設職員」の人たち中心の調査。きっと法人の規模も大きいだろう。中小零細法人や地域生活を支えるホームヘルパーの方たちの状況は反映されにくい。おそらくもっと労働環境は悪いと思う。
 最近は自分たちと同じ知的障害分野に進出してくる介護保険のヘルパー事業所も多くなった。うちが積極的にやっているガイドヘルプ(外出支援)は報酬がとにかく低く、たとえ不慣れな支援であっても参入してくる事業所はとてもありがたい。障害福祉一本の大法人なのに金にならない支援はしないところよりずっと信頼できる。
 知的障害(や自閉症)分野は男性ヘルパーの需要がとても高い。そのため自分が出会うことになる介護保険のヘルパーはこれまで男性ばかりである。ほとんどが中高年の脱サラ(リストラ)組。一日中、車で次々と高齢者のお宅をまわり、その途中に知的障害者の支援もする。10代20代の利用者さんと1時間2時間歩くような支援も多いから、体力的にもきついだろう。せっかく確保されたヘルパーが辞めていくことも多い(そして、そのしわ寄せはうちの事業所にやってくる…)。
 おそらく最も経済的にも肉体的にも余裕のないこの方たちが定年まで介護職として仕事を続けて安定した暮らしを営めるようになることが必要に違いないが、右肩上がりの介護保険財政の中で、その実現のために必要な介護報酬の設定とかもうまったく現実味が感じられない、というのは正直な印象。
 組織としても収益性の高い事業を組み合わせながら多角化と大規模化を続け、スケールメリットを活かしていかなければ、従業者の年齢に合った無理のない働き方やキャリアアップを可能にするのは容易でないだろう。そのような状況の中で「社会福祉法人の大規模化」を進めさせたい、という話が出てきている。
社会福祉法人の大規模化「必要ない」 検討会で消極的意見相次ぐ
http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/3676
 リンク先の記事では「消極的」な意見が多いとのことだが、賛成している団体もある(参照)。小さな地域にこだわってきた結果としてスケールメリットを生み出すことができず、月給20万以下で契約職員の求人をかけている立場として、どの話も耳が痛い。自分自身も独身だから現状でなんとかなっているのであるし、10年後に今と同じ運動量の仕事を続けられているかどうかは疑問。支援において大規模化のメリットはあまり強く感じないが、雇用の充実を考えると避けられないのではないか(もともと社会福祉法人は一定の規模に達しているので、中小企業やNPOのほうがより深刻だ)。