泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

当事者は政治的に中立でないと損をする、のか?

 名簿を最初に見た瞬間に「これはどういう事情だ」と思い、そのうちブログに書こうと思っていたら先をこされ、ついに新聞ネタに。
発達障害」当事者の参加を 政府の制度改革推進会議に要望
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/100122/wlf1001221954001-n1.htm

 発達障害の当事者団体や研究者などでつくる「日本発達障害ネットワーク」は22日、政府が障害者政策を見直すために設けた「障がい者制度改革推進会議」に発達障害の当事者が不在だとして、検討過程への参加を求める要望書を鳩山由紀夫首相に提出した。
 推進会議は、委員24人のうち14人は身体や知的などの障害者自身や家族らを充て、当事者の視点で障害者権利条約の批准に向けた障害者基本法の抜本改正などについて、夏までに基本方針を取りまとめる予定。
 要望後の記者会見で、同ネットワークの辻井正次理事は「障害の違いをきちんと議論することが大事なのに、発達障害がはずされるのは問題。民主党は谷間の障害をつくらないと言っていたのに寂しい」と述べた。
 ネットワークは26日、推進会議を担当する福島瑞穂特命担当相に面会し要望する予定。

 ちなみに、推進会議メンバーは次のとおり。

  大久保常明(全日本手をつなぐ育成会常務理事)
  大谷 恭子(弁護士)
  大濱 真 (全国脊髄損傷者連合会副理事長)
  小川 榮一(日本障害フォーラム代表)
  尾上 浩二(障害者インターナショナル日本会議事務局長)
  勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析部長)
  門川紳一郎(全国盲ろう者協会評議員
  川崎 洋子(全国精神保健福祉会連合会理事長)
  北野 誠一(おおさか地域生活支援ネットワーク理事長)
  清原 慶子(三鷹市長)
  佐藤 久夫(日本社会事業大学教授)
  新谷 友良(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会常務理事)
  関口 明彦(全国「精神病」者集団運営委員)
  竹下 義樹(日本盲人会連合副会長)
  土本 秋夫(ピープルファースト北海道会長)
  堂本 暁子(前千葉県知事)
  中島 圭子(日本労働組合総連合会総合政策局長)
  中西由紀子(アジア・ディスアビリティ・インスティテート代表)
  長瀬 修 (東京大学大学院特任准教授)
  久松 三二(全日本ろうあ連盟常任理事・事務局長)
  藤井 克徳(日本障害フォーラム幹事会議長)
  松井 亮輔(法政大学教授)
  森  裕司(日本身体障害者団体連合会常務理事・事務局長)
  山崎 公士(神奈川大学教授)
 オブザーバー:遠藤和夫(日本経済団体連合会労働政策本部主幹)

 肝心の発達障害のことは後に述べるとして、まず自分は「中重度の知的障害者関係はどうなっているだろう?」という関心をもって、名簿を見た。すると予想通りというか、手をつなぐ育成会(親組織)ぐらい。見る人が見れば、圧倒的に身体障害の当事者団体が多いのがわかる(記事で14と数えられている当事者団体のうち身体障害者系でないのは、育成会と「精神病」者集団とピープルファーストぐらいでは)。
 ピープルファーストは、自分の生活のことを語れるぐらいの人たちの集まりであるのだから、これをもって知的障害をもつ人たち全ての意見を代表させるのはどう考えても無理がある(ピープルファーストそのものも地域によっては自律できておらず、特定の身体障害系の当事者/事業者団体に引っ張られてはいないか、というのも懸念するけれど、もしそうなのだとしたら知的障害の方たちを支援する人たちは日本的なピープルファーストに寄与できなかった理由を省みるべき、とは思う)。ちなみに「精神病」者集団のことは政治的な立場も含めてあまりよく知らないけれど、たぶん全国的な「当事者」団体は少ないだろうから、きっと意義があるだろう。
 中重度の知的障害の人、メンバーに入れたらいいのに。
 「わからない」から無理ってこと?
 それを「わかるようにする」努力を会議のメンバーで全員でやってみたら、その過程を通じて「この人たちの意見をどのように我々は考えていけばいいか」について、きっと議論が深められるよ。そしてもっぱら「親」か「『事業者』の一員でもある支援者」しか代弁者がいない、ことの問題点も明らかになる。
 そして、「発達障害」問題。部外者にはわからないであろう「発達障害者抜き」の理由は、想像だけどおそらく発達障害ネットワークの役員構成にある。特に顧問かな。
発達障害ネットワーク 役員一覧
http://jddnet.jp/index.files/corner1_5.htm

顧 問
尾辻 秀久
参議院議員参議院自由民主党議員会長、元厚生労働大臣
発達障害の支援を考える議員連盟会長

名誉顧問
斎藤 十朗
厚生大臣、元参議院議長

 はっきり言って、くだらない。全くくだらない。
 この国で生きるひとりひとりの障害当事者にとって、全国団体がどの政党を支持していたか、どのような運動展開をしていたのかなんて、知ったことではない。もし本当に実質的な議論をしたいのならば、どう考えたってこの顔ぶれでは発達障害を含む適切な議論なんてできないだろう。他に発達障害当事者を含む団体が見当たらないのであれば、メンバーに含むべき。この結果として、十分な新制度体系が作れないようなことになれば、ひとりひとりの当事者にとってみればひどい「とばっちり」だ。
 どこかの政党を支持することでこんなことが起こりうるならば、もはやあらゆる団体は特定の政党にアプローチしないほうがいい、ということになる。バランスよく全ての政党と関わりをもつ or 全く政治的には主張しない。どちらが現実的とも思えない。「少なくとも役員には入れるな」ってことか。ならば、今回の発達障害ネットワークは判断を誤ったと責められるべきなのか。自分たちが望む施策を政権与党に推し進めてもらうために精一杯の政治的判断だったに違いない。
 推進会議には大きな団体からのメンバーが並んでいるけれども、それらの人たちに問いたい。
自民党議員が役員に入っているような団体の当事者は、今後の施策に対して意見を述べる場が無くても仕方がないのですか? みんなで議論をしていて疑問には感じませんか?」
 他にも不安に思えて仕方がないことがたくさんあるけれど、ひとまずこんなところで。身体障害系が「視覚」「聴覚」「脊髄損傷」・・・など並ぶように、もっと知的とか精神も細かく分かれて、丁寧な議論がなされるようになる時代が来ることを祈る。特別支援教育についての議論もこれからあるみたいだけれど、この顔ぶれでは全否定になりかねないんじゃないだろうか。このメンバーの中に「養護学校に行けてよかった」って言いそうな人いる? 14分の11が身体障害系で。