泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

漢字検定と中田英寿

 漢検と中田が、Yahooのトップページにて「財団法人」というキーワードでつながった。
利益禁止の「漢検」20億円もうけ、経費3倍の検定料も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090122-00000048-yom-soci
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_09012206.cfm
中田英寿氏が財団設立「サッカーを通じて地方を活性化したい」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090122-00000011-spnavi-socc
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2009012200740
 公益法人改革について、ほとんど勉強できていなかったので(「まあ、今回はNPO法人に影響なさそうだし」と軽く思っていた)、この機に新しい公益法人の制度についてネット上で少し調べてみたが、非常にわかりにくい。
公益法人制度改革の概要(パンフレット)
http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/koueki/pamphlet.html
 要は、これまで「財団法人」としてひとくくりになっていたものを、公益目的の「公益財団法人」とそうでない「一般財団法人」に分けて、前者を税制面等で優遇する、という変化である。「公益性のない財団法人」というのも、これからは存在しうる、というわけだ。どちらになってもメリットとデメリットの両方がある。
 「ぼろ儲け」などと叩かれている財団法人日本漢字能力検定協会は、おそらく新しい公益法人の制度体系にまだ移行していないが、普通に考えれば、「公益目的事業」を行なっていると認められて「公益財団法人」に移行していくつもりなのだろう。公益財団法人は、一般財団法人と違って「公益目的事業にかかる収入が実施に要する適正費用を超えない」ことが求められるから、このままいくと協会の「公益財団法人」化は危うい。
 「漢字検定」は現時点で「公益事業」とみなされていて非課税になっている、という理解でいいのだろうか。もう、ここですっきりしない。
 漢字のテストやって、ランクづけして、そこそこ金をとって「公益」で「財団法人」だから非課税。うちは障害をもつ子どもの支援だとか、地域子育て支援だとかやって、「特定非営利活動法人」だから課税(非課税の事業もあるが、法人設立初年度、障害児の長期休暇中の居場所づくり(子どもたちと工作したり調理したりする)を税務署で「技芸教授業にあたるんじゃないか」と言われたのには絶句した)。
 これがもし「特定非営利活動法人日本漢字能力検定協会」だったら、どうなっていたのだろう。課税されるかどうかは、法人税法上の収益事業にあたるかどうかにかかってくる。たぶん「技芸教授業」にあたるだろうから、しっかり課税されるだろう。
 ただ、このケースを「ぼろ儲けして、いい思いしやがって」と妬むのは、何か変だ。理屈で言えば、いくら収益があがったところで財団法人であるかぎり分配はできないのだから、誰も特をしない。ありうるとしたら理事が「役員報酬」などでがっぽり、ということだろうけれど(ちなみに公益財団法人になると、役員報酬は支給基準を公表しなければならないようだ)、記事を読む限り、どんどん正味財産が増えている、という状況らしいので、「儲かっているのだけれど、利益をどう活かしたらいいかわからない」と見るべきじゃないだろうか。課税もされないし、使われもしない。全く無駄な儲けである。
 文部科学省が「儲かりすぎているから検定料を下げろ」というのは、完全に「法」を維持するための提案であって、いかにもセンスがない。その料金で需要があるのだし、低所得の人が受験できないと困る、という性質のものでもないのに、なんで下げなきゃならないのか。この点では、記事中で内閣府が言う「このままでは公益法人としての基準を満たさない。幅広く営利活動ができる一般法人として存続するためには、財産を別の公益事業に寄付するなどしなければならない」のほうが、まだ「公益的」な発想だ。そう考えると問題は「いったいこの財団法人は何をやりたいのだろう?」というところに帰着する。そんなに漢字検定ばかりをやりたいのだろうか。そして、そんな金があるのに夢もアイデアもない団体を公益財団法人なんて、みなしていいのだろうか。
 一方で、公益性とは関係のない一般財団法人というのがあり、中田が設立したというのはこっちであるようだ。この先、「公益目的事業」を中心に行なうものと認められて、公益財団のほうに移行していく可能性もあるが、今のところは一般財団。公益性は問われないし、ビジネスとして収益事業をバリバリやったってよいが、利益の分配はできない。こちらのタイプの財団としてやっていこうとする団体は、はじめから「儲け」をどうするのかを、きっとしっかり考えているだろう。「ボールを世界の子どもたちに贈る」に対する評価はいろいろあるとしても、利益の使い方がわからなくなっている法人よりは遥かによい。
 まとまらないが、夢のない公益法人が守られ続けると、市場にも流れず、課税もされない無駄な金がたくさん生まれて、とっても「非公益的」だ、ということで。

(1/23追記)
・・・などと書いていたら、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090123-00000552-san-soci

公益事業の漢字検定で約23億円の利益を上げていた財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市)が、同検定の大久保昇理事長が代表を務める広告会社に過去3年間で約8億円の業務委託費を払いながら、文部科学省の調査に対し報告していなかったことが23日、分かった。

もっとはるかに低水準の話だった。かなり悪質だ・・・。