泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

教師の心構えを責める以外に何ができようか

先生、親の目線でお願いします! (ヒューマンケアブックス)

先生、親の目線でお願いします! (ヒューマンケアブックス)

 これまでになかったぐらいに教師をコテンパンにした内容で、障害をもつわが子に対して「適切な支援を受けられていない」と感じている親たちが溜飲を下げるには十分だろう。
 良い意味での「特別扱い」が奨励され、悪い意味での「特別扱い」が批判されている。支援は支援として必要だが、みんなと同じがいい。多くの場合はどちらかを犠牲にするように求められるから、もちろん親たちは納得できない。そんな実体験のエピソードが並ぶ。
 言われていることは一般論として正論だと思うけれど、では「どうしてそんなにダメな教師ばかりなのか」に対する答えはないままなので、最終的には問題を教師の「心構え」に帰結させてしまっているのではないかと思う。それは「専門性」とも少し違う。タイトルにある「親の目線に立って」というのは、まさにそのような要求でもある。
 発展途上で反省的に仕事を振り返ろうとする教員や支援者にとって、保護者と話すときの言葉の選び方を再考するには良い内容かもしれない。ただ、この本にたくさん登場するような「ダメな教師」がこの本を手にとって改心するのかどうかは、率直に言って大いに疑わしい。
 「障害」の社会モデル的理解を強調するのみならず、「特別支援教育」もまた個人化から解き放たれなければならないだろう。親の立場からそのために行使できる手段をもたないやるせなさが書かせた本と思えば、合点がいく。どうしようもなく大きな構造の前で、親たちは怒りの矛先と共有相手を求めるしかない。
 だから、このような本を書かせた社会と教育システムが罪深い、ということ。