泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

基礎・応用・エビデンス

発達障害の臨床心理学 (叢書・実証にもとづく臨床心理学)

発達障害の臨床心理学 (叢書・実証にもとづく臨床心理学)

 エビデンスベースドの発達障害研究について知りたい人向け。
 ABAの第一人者、井上雅彦氏いわく、

これら現在の高度にマニュアル化された包括的なシステムやプログラムにおいても、それをすべての自閉症に当てはめて適用するのではなく、標準的な介入手順を持ちながらもそれらをきばんとして、一人ひとりの個々の行動を環境との相互作用から精緻に分析し、個人の価値や尊厳を重視し発達を支援する、という行動分析学の基本的方向性を堅持していくことが、最も重要であると考えられる。また言語行動や社会的行動の成立条件を検討するための詳細な機能分析に基づく基礎的な研究とそれらをどのように教育や福祉のシステムの中に応用できるかという応用的な研究の2つの方向性は互いに連携しつつ発展するべきである。(48ページ)

 さまざまなプログラムの成果が「エビデンス」によって示されつつ、こうやって対人的な実践の「個別性」が強調されるにつれて、結局のところ現場の実践者自身が実証的に効果を明らかにできるようにすべし、というレベルでまた「エビデンス」が主張される事態が近年では進行しているような気がする。特に社会福祉研究業界では。ソーシャルワークのプロセスの中に組み込まれて、実践として示すことを求められるエビデンス
 社会福祉分野において、エビデンスベースドな「研究」の担い手とは、いったい誰が想定されているのだろう。それがある種の方法や手続きによってのみ保証されるものならば、もちろん可能性としては誰でも担いうるに違いないが、誰でも担いうるなら「研究者」の存在意義も揺らぐ。
 こんなことを考えるのは、ソーシャルワークの効果測定がABA的な研究デザインに基づいていることと、ソーシャルワークにおいては「(ソーシャルワーク固有の)エビデンスに基づく基礎研究」と「エビデンスに基づく応用研究」の区別がはっきりしないからであろう。ここに「エビデンスベースドなソーシャルワーク研究」の難しさがあると思うのだが、どのぐらいこうした困難さの自覚はなされているのだろうか。最近の研究はほとんど追っていないので、よく知らない。