性別役割分業について保守的な考え方を持っているかどうかは、
父親が子育てにかかる時間とは関係ない。子どもが発達の遅れなどを含む「(子育てのストレスにおける)リスクファクター」を持っているかどうかも、影響しない。結局、影響するのは「早く帰宅できるかどうか」という結果に、たしか今年のWAMの
助成金でも重点的にとりあげられている「
父親の育児参加の促進」の絶望的な困難さを感じてしまうのであった。そのほか、子どもを
保育所に預けておらず母子の密着度が高いから育児不安になるのではなく、収入が低いのと「リスクファクター」があるから育児不安になるのであって、就労促進は解決にならない、とか、有意義な調査結果が多い。
子育て支援施策がどこに重点を置くべきかが、少なくとも統計的には明らかに。ネットワークの「密度」の話は、事例とかたくさん聞けたら、きっと面白い。
質的心理学関連の本はほとんど読んだことがないのだが、
現象学に近づかれると「ついていけない(ついていきたくない)」印象。6章の智頭町の実践に関する研究は、過去にも読んでいたが、相変わらず面白い。現場で仕事しながら研究する者にとって、アクションリサーチの方法は考えさせられる部分が多い。なんというか、「研究者として実践する」と「実践者として研究する」の間には、大きな違いがあるような気がする、が、うまくは言えない。
8章は、福祉分野以外の研究者が
高齢者
福祉施設など研究すると、すごく基本的なことで新鮮に驚いたり、事例を過度に一般化してしまったりと、学生のレポートのようになってしまう、という典型例。9章のサンプリング論は、上の「何が育児を・・・」の後に読むと、ちょっと偏向を感じなくもない。心理学の目的から見れば、真っ当な問題提起ということにもなるのだろうか。