自閉症の社会的構成
「報告書を読んでみた(2)」は書くエネルギーが無いので、次回に。
風呂でちょっつずつ読んでいる。
- 作者: イアン・ハッキング,出口康夫,久米暁
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/12/22
- メディア: 単行本
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・・・誰かが「小児自閉症の社会的構成」というタイトルの論文を書く。その著者は以下の二つを完全に問題なく主張できる。(a)知られてはいないある神経学的病因Pがおそらく存在し、それが、われわれが今、小児自閉症と呼んでいるものの原型となる事例、そしてその他の多くの事例の原因であること。(b)小児自閉症は社会的構成物であり、セラピストや精神科医とその治療法に関して相互作用するだけではなく、自閉症の現在の形態が自分たちのあり方そのものだとわかる自閉症児たち自身とも相互作用する、ということ。(206ページ)
この二つが矛盾せずに「完全に問題なく主張できる」からこそ、自分たちの仕事は難しい。まさに「ダイナミズム」。
この場合、Xつまり小児自閉症の社会的構成において、Xのとる値の候補はいくつかある。(a)小児自閉症の観念とその観念が意味していること、(b)自閉症児、つまりその存在のあり方がある意味では構成されているような、現実の人間、しかし次の(c)神経学的病因P、つまり、仮定により、われわれが無反応な種類として扱っているもの、パトナムなら自然種と呼ぶようなもの。クリプキの追随者ならPを自閉症の本質と呼ぶかもしれない。しかし、われわれにとての興味関心は、意味論にではなくダイナミズムにある。つまりPの発見が自閉症児とその家族の自閉症児に対する考え方にどのように影響するか、そして自閉症児の行動にどのように影響するか。ループ効果は自閉症児のステレオタイプにどういった影響を及ぼすか。以前に自閉症児と診断された子供のうちどのような子供が今は自閉症児ではないと言われているか。そしてそのことはその子供たちに対してどのような影響があるか。(206-07ページ)