泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

「障害児支援の見直しに関する検討会報告書」を読んでみた(1)

 遅ればせながら、読んだ。
障害児支援の見直しに関する検討会報告書
http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/s0722-5.html
 議事録11回分読めば、もっと深められるのかもしれないけれど、今そこまでの余裕はないので、この報告書だけ読んで、思うところを書いてみたいと思う。都市部の状況にはあまり明るくない。あくまで、自分の周囲の状況から考えた場合に、という条件つきで。

 障害児支援施策の見直しに当たっては、次の4つの基本的な視点を基に検討を行った。
(1)子どもの将来の自立に向けた発達支援
(2)子どものライフステージに応じた一貫した支援
(3)家族を含めたトータルな支援
(4)できるだけ子ども・家族にとって身近な地域における支援

 報告書全体を通じて言えることだが、別に子どもは「自立」するために生きているわけでも成長するわけでもないので、障害をもつ子どもへの「支援」を単に「生活支援」として書けばよいはずだと思う。しかし、そのような内容にはなっていない。
 結果的に、療育と「子育て」支援に重点が置かれることになってしまったというのがトータルの印象。

Ⅲ.今後の障害児支援の在り方
1.障害の早期発見・早期対応策
(1)障害の早期発見・早期対応の取組の強化
② 1歳半児健診や3歳児健診などにおいても、母子保健と福祉とが連携して対応していく必要がある。健診時点では疑いにとどまる場合も含め、確実にフォローを行い、必要に応じて福祉につないでいく体制を地域で作っていく。このため、例えば、障害児の専門機関(障害児の通園施設や児童デイサービス、障害児の入所施設、相談支援事業者、その他地域において障害児の支援に専門的に関わる機関が該当する。以下同じ。)が保健センター等を巡回支援していくことが考えられる。

 これも全体を通じてだけれども、専門機関の「巡回」が強調されすぎているように思う。そして、たとえ例示されていても「専門機関」ってどこのことだ、という印象も強い。
 このあたりの地域だと、通園施設はないし、児童デイサービスの専門性もまちまちである(なお、地元自治体には児童デイの事業所がひとつもない)。率直に言って、発達障害の理解に乏しく、子どもたちの保護者や保健師らから評判のよろしくない「専門機関」も存在する。障害児入所施設も、このあたりに全くない。相談支援事業者はあるが、乳幼児について巡回支援できる水準ではない。圧倒的に多くの相談事業者が、学齢期以上の子どもたち(あるいは成人)を相手にしている。都市部はどうだかわからないが、このあたりだと乳幼児と関連が深いのは健診であり、保健師。そこで「障害がある」とされたら、次は「医師」。相談事業者が入ってくる余地がどこにあるのだろう。就学や就園に際して「もめる」ようなことがあれば、入ってくることもあるけど。「発達」そのものについて、相談に乗るのは難しい。
 ここでいう「相談事業者」が、特別支援学校内に設置された相談支援センターのようなものを指しているならば、少し話は変わってくるけれど、それを通常「相談事業者」とは言わないだろうから、やっぱりよくわからない。「発達障害者支援センター」の類のことだろうか。それらも現状として乳幼児への対応は弱いのではないかと思うが・・・。
 巡回する者の専門性は大切だけれど、すべての幼稚園や保育所に障害対応についての一定のトレーニングを積んだ者を置いていくべき、ぐらいのことを書いてほしかったと思う。小学校には特別支援教育コーディネーターがいるのだし、保育所に責任もてる者がいないことのほうがおかしい。
 5歳児健診については触れられなかったか。残念。

このように、医療機関(産科、小児科等)、母子保健、児童福祉、障害児の専門機関等、関係機関の連携を強化し、早期発見から早期対応につなげる体制を作っていく必要がある。このため、4.(2)でも記述するとおり、市町村の地域自立支援協議会の活用(子ども部会の設置)等により関係機関の連携を強め、体制を整備していくことが一つの方法として考えられる。
小規模な町村においても、障害児の専門機関等との連携を図り、早期発見から支援への体制を作っていくことが求められる。

 自立支援協議会はきっと大事になる(この地域では部会を作ると言いながら後回しにされて、他の部会が先行して進められている)。日常的な連携はもうちょっと違うレベルでノウハウが必要とは思うけれど。どこが中心になるのか、という問題も出てくるだろう。このあたりの問題は、学齢期に入っても同じ。

親にとって身近な敷居の低い場所で支援が受けられるようにしていくことが必要である。例えば、障害児の専門機関を行きやすい場にしていくとともに、障害児の専門機関が、保健センターや地域子育て支援拠点などの親子が集まる場に出向いていくことにより、こうした保健センターなどの身近なところで発達相談等の専門的な支援が受けられるようにしていくことが考えられる。

 地元自治体では、まさにそんな感じで展開すべく、保健センターや子育て支援センターなどが発達相談への関与を深めている。ただ縦割りの弊害で、ばらばら(それぞれ担当課が違うので)。相談窓口となるものはいくつあってもいいが、同じ機能のものが看板を架け替えて乱立しているのは混乱を招く。

2.就学前の支援策
(1)障害児の支援のあり方
 保育所等での受入れを促進するため、障害児の専門機関が、保育所等を巡回支援していくことが考えられる。また、障害児通園施設や児童デイサービスのスタッフが、保育所等に出向いて行って療育支援を行うことにより、これまで障害児通園施設や児童デイサービスに通っている子どもが並行してなるべく多く保育所等へ通えるようにしていくことが考えられる。
 さらに、親子で通う場であるつどいの広場や子育て支援センター等の地域子育て支援拠点においても、障害児の親子や気になる子どもへの適切な対応のため、障害児の専門機関との連携を図っていくことが必要と考えられる。

 このあたりの地域はむしろ逆で、ほぼ全員が保育所に通っていて(子どもに障害があると就労の有無を問われない)、週に1回ぐらい児童デイに行くという形態が主流(そして、親たちが「もっと療育を受けたい」と言っている)。保育所はある種の障害の子どもにとっては、非常に過ごしにくい場所であると思うので、かなりたくさんのポイントを改善しなければ、大人の一方的な「統合」への意欲に子どもが苦しめられることになりかねないと思う。保育所で過ごす自閉症の子どもはこの数年でけっこう見てきたが、はっきり言ってどこも無茶苦茶な対応だった。あれならば、むしろ毎日児童デイに通って、スモールステップで力をつけていったほうが、ずっと子どものためだと思う。
 自法人でも「つどいの広場」をやっているが、連携を図れと言われている「専門機関」はやはりよくわからない。保健師との接触は多いけれど。乳幼児の親でよく勉強している保護者だと、医師から多くのことを学び、よく本なども読んで勉強して、そのへんの「子育て支援者」よりもずっと障害のことについて適切な理解をしていたりもする(反面、その知識の豊富さゆえに、支援者が苦労することもたくさんあったりする)。これも報告書全体について言えることだけれど、「親」の捉え方が偏ってはいないだろうか。親の「弱い」側面ばかりがクローズアップされている。
 このあと学齢期についての言及に移っていくが、今日はここまで。