泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

降りていく法人

 進む情報収集。次年度に向けて、必要になるバイトはどうやら3〜4人。
 自治体の4つの課と接点があるわけだが、この情報収集はうち2つまわればOK。養護学校の新入生で毎日サービス利用するところがどれだけあるか。
 予想は大きく外れていなかったので、ひと安心できるかと思ったところ、前々から担当課にお願いしていることについて消極的な回答をもらい、少し暗い気持ち。担当者と2時間話し込んだあげくに「結局、いい仕事をするために大事なのはモチベーションだ」という結論で終わる。そして「モチベーションのない人間と仕事をするのはとても大変だ」と。行政担当者も嘱託のおばちゃん相手に苦しんでいる。この担当者が学童の指導員やったら、きっといい仕事をすると思う。係長がそんなことするはずないが。
 それより気になるのは、同一地域で学童の加配を派遣している某法人が、もう続けられないという意思表示をはじめたこと。担当している学童は1ヶ所、子どもは1人。うちの法人は来年度3ヶ所で5人担当。数の問題ではないし、その子の状況の大変さは聞いているが、法人の職員体制を少し知っている自分からすると、もう少しがんばれないかという思いもあるし、行政も同じ意見である。「なんでこんな大変なことをやっているのかわからない」とも言っているらしい。いやいやいや、この事業の内容も報酬単価もあなたのところの法人のトップが行政と協議の上、決めたのですよ、4年前に。それが同一法人内で伝わっていないというのも奇妙な話。
 うちとの間で信頼関係がある法人だと信じているので厳しめに書くが、この法人の居宅サービスはどんどん縮小されてきている。居宅介護の新規利用もずいぶん断っているようだし、日中一時支援も前月の上旬ぐらいまでに連絡しておかないと使えない。行政は「日中一時支援は緊急時利用」と規定して高い頻度の利用に否定的なので、日常的な利用も急な利用も受けてもらいにくいという矛盾した事業になりつつある。一日あたりの利用定員も減った。結果として、利用者がこちらのガイドヘルプに流れてくる。うちの対象エリアの学齢児で日中一時支援を使っている人は今や1人か2人ぐらいのはず。
 この法人は通所施設をやっており、そちらは慢性的に職員不足なので、どうやら居宅部門を縮小して、通所の方に人をまわしていきたいようだ。居宅部門は、自法人の通所を利用している人向けに特化してサービス提供していきたいらしい。
 ・・・・・・何かおかしい。むしろ方向性が逆ではないか(それ以前に、指定事業者がそのような利用者の選別を行なっていいのか、という疑問もあるけれど、利用者のスクリーニングは「調整困難」を理由にしてあちこちでよく行なわれていると思う)。
 よく知っていて信頼関係のできている通所利用者向けに限って、居宅サービスを提供していれば楽ではあろうと思う。その場合、居宅サービスの利用時間は通所の利用時間と重ならないから、職員を効率的に動かすこともできる。しかし、滋賀の特区時代に評価され、今では「日割り」による報酬減を招いたとして悪名高くなってしまった利用の方式がなぜ求められたかと言えば、もともと多様なサービスを選び取って組み合わせられるような仕組みにしなければ、利用者にとって最適の生活をいつでも考え続けていくことができないという判断があったからだと思うのである。
 地域の側から見れば、どこにも通所はしていないが居宅サービスが必要な人もいるし、児童に関して言えば通所とは無縁である。通所ができずに、在宅を選ぶしかなかった人もいる。通所の複数個所利用だって、ずっと絵に描いた餅であるかはわからない。
 「地域生活支援」という言葉に込められた意味が、単に「うちの作業所の利用者が入所施設に行かないように」ということならば、作業所に通っている人が、今後もその地域で作業所に通い続けられるように支援するだけでも有意義と言えるかもしれない。しかし、単なる入所への防波堤としてではない「地域生活支援」を実現しようとするならば、もっと利用者を広くイメージしなければ、以前と何も変わらないのではないか。より多くの人の暮らしの多様性に対応できてこそ、いま注目に値する地域生活支援だと自分は考えていたのだが、これは通所をやっていない事業所の身勝手な言い分だろうか。
 メンタルな障害をもつ人を主な利用者として、居宅部門のサービス提供のみで運営を成り立たせることは非常に苦しい。苦しいだけに、あちこちの法人が「うちは通所の利用者のことしか対応しないよ」と言って、みんな手を引いていったとき、自分のところだけで居宅部門をなんとかしていける自信は、正直言って、ない。こんな資源の少ない田舎なのだから、地域内で計画的にサービス提供を分担して、必要なものがきちんと継続されるように議論が必要と思うのだが、たぶんここを読んでくれているNGさんとか、どう思っているのだろう? また話聞かせてください。