泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[近況]530万?

 某社会福祉法人の偉い人が事務所に来て、情報を少しくれた。
 地域生活支援事業について、都道府県への働きかけはどうやら失敗に終わる模様。都道府県の中でも一部自治体が妥結しはじめており、このあたりの事業所が団結して運動してもおそらく効果は期待できないだろう、とのこと。いよいよ市町村にターゲットが絞り込まれてきた。
 しかし、続けて聞いた話はもう書く気にもなれない内容だ。それでも大事な話だから、力を振り絞って書こう。もともと地域生活支援事業に統合補助金として確保されていた国の予算は人口10万人あたり6500万程度と言われていた。自分の事業所の対象エリアの人口はおよそ35000人。ここから計算すると、ざっと2000万ぐらいが地域生活支援事業にあてられ、この2000万を各種事業の間でどう配分して、不足分を市町村に負担してもらうか、が課題と思っていた。
 ところが、聞くところによると、統合補助金の額は人口10万人あたり1500万だと言う。昨年からずっと聞いてきた金額の4分の1以下である。そして、この地域に配分されるのはわずか530万。もうこの金額は当該自治体に伝えられている。
 この530万のはした金で、国が人口35000人の自治体に「やれ」と言う事業のリストは以下のとおりである。
・障害をもつ人や家族、介護者などからの相談に応じて、情報提供や権利擁護を行う「相談支援事業」(「専門的」な職員を配置して、専門的な相談支援等を要する困難ケース等への対応など行うのだそうな。事業の実施は必須)
・視聴覚や言語機能、音声機能などに障害をもつ人に、手話通訳や要約筆記、点訳、音訳などの支援を行う者を派遣仲介する「コミュニケーション支援事業」(これも事業の実施は必須)
・重度障害をもつ人が生活するのに必要な用具を貸したり、給付したりする「日常生活用具給付等事業」(これも事業の実施は必須)
・障害をもつ人の外出を支援する移動支援事業(この日記を読んでくれている人にはおなじみ。うちが最も力を入れている事業。事業の実施は必須)
・障害をもつ人が日中に通うことのできる小規模作業所(厳密にはもうちょっと複雑な制度だが、利用者の人数が10人に満たないような多くの無認可作業所はこの事業に移行することが見込まれている。これも事業の実施は必須)
 まだまだある。以下は市町村で事業の実施が必須でない事業。説明がめんどくさいので、ほとんど事業名のみ列挙(自分がよく知らない事業も多いし)。
・福祉ホーム事業
・盲人ホーム事業
・訪問入浴サービス事業
身体障害者自立支援事業
・重度障害者在宅就労促進特別事業
・更生訓練費・施設入所者就職支度金給付事業
知的障害者職親委託制度
・生活支援事業
・日中一時支援事業(これもこの日記を読んでくれている人にはおなじみ。国事業だった、いわゆる日帰り短期入所がこれに移行。知的障害児者の地域生活の生命線。国事業の障害児タイムケア事業もこれに移行)
・生活サポート事業
・社会参加促進事業
・経過的デイサービス事業
・経過的精神障害者地域生活支援センター事業
 国は地方自治体に530万渡して、これだけの事業を「自分たちでやりなさい」というのである。いやあ、すごい、すごいよ自立支援法。もう絶句するしかないよ。
 これだけ悲惨な事態が進行しているのに、いまだ問題点として報道される内容はもっぱら「1割負担」ばかり。それはそれとして大変な問題だけれど、制度というのは形の上で存在すればいいというものではない。実際に、その制度に基づいてサービス提供できる仕組みになっていなければ、あってもなくても同じ。
 530万って、そこらへんの中年サラリーマンの年収より低いんじゃないだろうか。この業界に経営感覚がないとか、一般企業よりも甘い仕事をしているというなら、ぜひこの530万でそこらへんの一流企業から1人引き抜いて、上に列挙された事業をすべてこなしてもらいたい。やれるもんならやってみろ。もちろん市町村が単費でつける予算もあるだろうから、530万ですべてということはないが、地方でいったいどれほど上乗せできるだろう。今日もガイドヘルプで街を歩いてみれば、意味不明な道路工事が花盛りである。先日は信号のある道路に陸橋がかかり、エレベーターまでついた。障害者福祉の担当課は熱心にやってくれているが、自治体全体としてはせっせと公共工事を行い、土建屋さんたちの生活を守っている。
 もう何もかも考えるのがばかばかしくなってきたが、少し離れたところの某市では、移動支援に関して「障害程度区分3以上で1時間3000円、2以下で1時間1500円(ただし、全利用者に一律20時間の支給)という金額で決まったという(障害程度区分のない児童をどうするのかは不明。ヘルパーの資格要件も不明)。障害程度区分3以上で移動支援に1時間3000円つくのであれば、同様に障害程度区分3以上(+12項目による判定)が支給条件となっている国事業の「行動援護」とはどう区別されるのであろうか。2時間半やったら、現行の外出介護より高い報酬。もうわけがわからない。金のある自治体からすれば、利用時間が青天井にさえならなければ、OKということ?
 おそらく国から統合補助金額が通知される前に決めてしまった額と思われるので、本当にこのままやれるのかどうかはわからない。今のところとても中途半端な情報だが、いずれ具体的に情報が入るだろう。某社会福祉法人の偉い人とは、もう少し情報収集を続けた上で、市町村と改めて交渉に臨もうと話した。もう8月も後半に入っているのに、このあたりの自治体では何も決まる気配がない。
 それにしても、なぜ10万人あたり6500万と言われていた統合補助金の額がなぜ1500万になってしまったのか。誰に聞いても、このあたりではわかる人がいないようなので、ここを読んでいる人でどなたかご存知の方がいれば、ぜひ教えて下さい(それがわかったからと言って、何ができるわけでもないが)。コメント欄に書きにくいようならば、しばらくプロフィールページにhotmailのアドレスを公開しておきますので、直接のメールでもかまいません(無関係なメールはご勘弁ください)。最近、日記で人に質問してばかりだ。