泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

そんな失業者はいない

 地元のNPO代表から相談。ちなみに職員なんてひとりもいない小さなNPOである。高齢の代表がほとんどのことをひとりで細々とやっている。
 自分のところの法人もそうだけれど、今年度はさまざまな分野で「雇用創出のための事業委託」というのがある。平たく言えば、「失業者対策として何か仕事作れ」と言われた自治体が、地元の事業者に「何かやりたいことない?」と聞いたり、「これ必要だと思うんだけど、やらない?」とか言って、事業化したものを委託するわけである。
 おいしい話だと思われるだろうか。しかし、この委託は時限付きであるので、委託を受ける事業者はやったやったとはしゃいではいられない。とりわけ福祉分野というのは、事業の継続性が強く求められる場合が多い。「再来年までお金あげます」とか言われたって、3年後に支援を必要とする人たちがいなくなるわけでもないから、どうやってその先も支援(同時に「雇用」)を続けていけるのか、を考えなければならない。
 言うまでもないことだが、この業界は金がない。障害児分野なんて特に金がない。だから、うちも事業提案したし、受託した。向こう数年で現行の委託が外れてもやっていけるよう、軌道に乗せねばならない。実績もあげねばならない。うちの場合は6月から開始して、そこそこの成果はあげてきたつもりだ。
 そんな中で、今日受けた相談。
「年度当初から予算化されていた雇用創出の委託がずっと役所の中でほったらかされていた。」
「今ごろになり、やってくれと言われてしまった。年度末までに○百△十万使わなければいけない。どうやったらそんなに払えるだろうか。」
 どう考えても年度当初に事業開始しておかなければ消化できない金額である。継続性は求められない事業なので、3月で終えられるが、障害者支援について長い現場経験とか大学院生レベルぐらいの知識は必要な内容だ。そんな力をもった人材の中に「失業中で、今から年度末の間までの間に限ってフルタイムで雇われて働きますが、4月からは結構です」なんて都合のいい人がどこにいるだろうか。
 こうして最終的には「事情を理解してくれるような人を雇い、少ない雇用日数に対してでも高めの月給を設定して、どーんと払って消化してしまおう」ということになる(ちなみに、その月給は自分の手取りの倍ぐらいになるだろう)。失業対策のはずだが、当然、ハローワークなどには頼りにくい。だから、最後は「誰かいい人いないか」という話題になる。
 問題点はいろいろと指摘できるだろう。名ばかりの失業対策。自治体のずさんな事業プラン。はっきりしない予算の見積もり。しかし、そんなことよりも「やっぱり金はあるところにはあるんじゃないのか」という疑念を抱かされることのほうがずっと問題である。それだけの金額があるなら、いくら交渉しても上がらない市町村事業の時間単価を200円ぐらいはあげられるはず。それが事業者や利用者にとって、どれだけプラスになるか。
 地元自治体の職員は最近、市町村事業について「安い単価で申し訳ない」と恐縮気味になってきているのだが、一方でこのようなありさま。金の配分というのは、なぜこんなにも不適切にねじれるのだろうか。