泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[読書]研究の境界

社会福祉研究法―現実世界に迫る14レッスン (有斐閣アルマ)

社会福祉研究法―現実世界に迫る14レッスン (有斐閣アルマ)

 ここ数年続いた社会福祉分野の研究方法本の出版ラッシュも、これで一段落つくのではないか、という内容。文献研究や理論研究についても触れているし、事例も豊富。網羅性が高い。ただ、調査方法論の内容に異論はないけれど、社会福祉研究とは何をすることなのか、についての合意は著者たちの間でも無いような気がする。
 「知的障害者授産施設における行動療法の実践事例」を社会福祉研究だというとき、もはやそれを社会福祉研究だという理由は「そこが知的障害者授産施設だから」という以外にないのではないか。それを「養護学校」でやったときに社会福祉研究とは言わないのだとしたら、そんな社会福祉研究って何だ。役に立てばなんでもいいじゃん、ということなら、それを「社会福祉」研究なんて言葉で呼ばないほうがはるかによいと思うのだが。
 ところで、

日本の社会福祉研究では、優れた研究の多くが、査読制の雑誌の論文以外の形態で発表されているのが現実である(41ページ)。

 って嘆かれているが、他分野ではどうなのだろう。そもそも「優れた」ってどういう意味だ。