泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

みんなが学ぶべき

 事業の拡大について相談にいった保健所で職員(初対面)と話していたところ、興味深い話多数。「支援費の事業者の監査ってけっこう大変なエネルギーを注いではじめたばっかりなのに、もう終わりか」「地域格差を改善するためにもっと事業者から自治体に働きかけをしていかないと」など、国のいい加減な施策に振り回される行政サイドからの愚痴としてなかなか面白かったのだけれど、注目したいのはこの近隣で行動援護の事業者指定を受けるところが出てこないのはなぜか、という話。
 「行動援護は経営的に割に合うのか」と聞かれたので、「もしできるのならば、うちにとっては市町村事業化された移動支援とは比べ物にならないだろう」と説明すると、不思議そうにされる。どうやら近隣の事業者は「割に合わない」という理由で指定をとろうとしないらしいのだ。なぜか。
 近隣の自治体は全体に移動介護の支給決定水準が低いため、ほとんどの利用者が月8時間程度。児童の移動介護を積極的にやっているところはほとんどない。成人の移動介護はというと児童と比べて1回あたりの利用時間が長い傾向があるため、8時間なら1回でほぼ使い切ってしまうことも多い。すると5時間以上の支援費額が変わらない行動援護を実施するのは、従業者要件が厳しいばかりで割に合わないというわけだ。
 こんな調子では、行政サイドも行動援護類型をさほど重要な支援類型と認めてくれない。自分は全国地域生活支援ネットワークの回し者ではないが、現状ではどう考えたって、行動援護類型を育てていかないと知的障害分野の居宅介護は悲惨な見通ししか持てない。そのことを事業者も行政もわかっていない地域の未来は暗い。こうした議論の際に、利用者の姿が見えないのも気になる。「制度が難しくてわからない」で終わってしまう人が多すぎる。もちろん全国組織レベルではそんなこともないけれど。