泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

行動援護類型の詳細が出た。

 障害者福祉関係者を除けば、何の関心もない話だろうが、関係者(特にヘルパー事業者)ならば尋常ならざる影響を受ける話である。

 単純化して書けば、この4月から知的障害児者の「移動介護」(≒外出の支援)を行った場合の単価が大幅に減額される。これで多くの事業者は極端な収益減となり、経営に大打撃を受ける(ちなみに、うちの事業所は、25%減が見込まれているし、撤退するところもあるらしいhttp://d.hatena.ne.jp/sugitasyunsuke/20050309)。その引き換えとして、重度の知的障害児者のみに該当する「行動援護」という新類型が出てきた。これは単価が高いため、従来「移動介護」を利用していた人のうち、ある程度の割合が「行動援護」に該当すれば、経営的には救いになる。ただ、サービスを提供できる資格要件は厳しくなるため、学生ヘルパーはほとんど活用できなくなり、今度はヘルパーの調整困難が待っているのだが・・・。

 厚労省からの通達によると「行動援護」の対象者基準は、

行動上の困難の程度が、次の表の行動上の困難の内容の欄の区分に応じ、その困難が見られる頻度等をそれぞれ0点の欄から2点の欄までに当てはめて算出した点数の合計が10点以上であると市町村が認めた者とする。

 これは以前から聞いていた通り。気にかかっていたのは、「行動上の困難」を点数化する判断基準と、該当に求められる合計点数だった。内容は予想どおり、曖昧さを多く残したものとなった。詳しい項目は、そのうちどこかのウェブサイトなどにアップされるだろう。全部で10項目。
 利用者の顔を思い浮かべながら10項目をそれぞれ確認すると、0点とも2点とも読めるものがたくさんあり、いったい誰が該当するのか、皆目検討がつかない。もともと移動介護には〈身体介護を伴う/伴わない〉という区分があったが、その基準があいまいで市町村格差を招く一因になっていた。行動援護ははっきりと項目化された基準こそあれ、市町村の担当者はきっと頭を抱えるだろう。
 市町村は、知的障害をもつ本人がひとりで外出したら、どのくらいの「行動上の困難」があるか、をイメージして点数を計算しなければならない。家族や支援者が側にいることを前提としないで本人の状態を考えるというのは、それだけでもとても想像力のいる作業だ。結局、市町村がどれだけ支給量を抑制したいのかによって、また地域格差が出てしまうのだろうか。「基準は、平成18年1月に向けて検証」とも書いてあるし、1年後にはどうなっているのやら。

 介護保険やらグランドデザインやらに言いたいこと、考えたことは山ほどあるが、一度には書ききれないので、少しずつ書いていこうと思う。これから3月中に利用者と行政に対して、行動援護について話し合いや説明など大急ぎでしなければならない。既に養護学校は短縮授業だし、もうすぐ春休み。残された時間は少ない。これから数年、年度末はこんなドタバタが続くのだろうか。うんざり。ついでに書くと、この4月からはじまる「障害児タイムケア事業」については、いまだに要綱が出ておらず、3月18日まで分からないと聞く。大丈夫なのか?