泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

これからすべき計算

 どこか一ヶ所に支援が必要な人を集めてしまえば、安くあがる、というのは誤解なんじゃないだろうか。たくさんの場所で個別的な支援を進めてきたところを一ヶ所に集めることで安くあげたい、というような行政からの主張に、これから反論しなければならないようなのだが、理念がどうこうという話にはとどまらず、数字を示すこともできそうな気がする。具体的な計算はこれからだけれど。
 地域に学童保育所が複数あり、それぞれに障害をもつ子どもが通う。そこに事業所から加配のスタッフをアルバイトとして派遣する。より理想的には、学童保育所が支援スタッフをコーディネートする。この仕組みが安定して、障害をもつ子どもが放課後にさまざまな場所にちらばって過ごすことができれば(おそらく子どもはより自分の暮らす地元地域に近いところで過ごすことになるだろう)、既存の場所が障害をもつ子どものための資源として、そのまま生まれ変わる。ここで新たに生じるコストは、アルバイトの加配の人件費がほとんど。もちろん短期的にはハードの改善が必要だとか、加配に限らず学童スタッフに研修が必要だとか、考えなければならないことは多いけれど、一ヶ所に集めたときとの比較をしたらどうだろうか。
 「障害児学童」とか「一時預かり」とか、まあ呼び名はなんでもよいが、一ヶ所に障害をもつ子どもたちを集めようとする。新たに場所を確保するのだとすれば、家賃や水道光熱費が必要だ。電話代だってかかる。セキュリティだって考えなければならない。うまいことやって家賃格安の場所を紹介してもらったりしても、何もかも無料にできるはずがない。
 そして、専従職員が必要だ。子どもたちとアルバイトの需給調整を担当して、現場では多くの子どもたちについての知識をアルバイトたちに伝授することもできなければいけない。まわりに教えながら、自分も子どものケアをすることになるだろう。責任者として、月曜から土曜まで毎日その職員はそこにいることになる。他の支援には入れない。専従職員をひとり雇うというのは本当に金がかかる。この場所で赤字を出さないようにするには、他のアルバイトたちがケアをして稼ぎ出した収入から、アルバイトの人件費を引いた金額が、専従職員の人件費やら保険料やらのひとり分を上回り、かつその他の諸経費を払えなければならない(すごく当たり前の話)。さて、これは前述したような「既存のたくさんの場所を活用する」形よりも、本当に安くあがるだろうか。
 一ヵ所に集めると安くなる、というのは、複数対複数の支援になるとスタッフが減らせるという判断に基づく。子どもを同じ時間ケアしながら、スタッフが減るならば、そのぶん単価は下げてもよいだろう、という話だ。しかし、果たしていくら下げられるだろうか、そもそも本当に下がるのだろうか、一ヶ所あたりの子どもの人数と障害程度によっては、むしろ上がるんじゃないだろうか、という計算をこれからする。来月あたりが正念場か。養護学校(特別支援学校)の空き教室を使ってやれば、人件費以外を大幅カットできるし、広いから子どももたくさん面倒みれるし、慣れた場所だからスタッフだって減らせるに違いないのだ、という主張にも備えておかなければいけないし、ああ前途多難。