泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

移動支援は地域生活支援事業でよいと思う

 完全に業界関係者向けの内容になる。たぶん批判もあるだろう。
障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ(第6回)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000076424.html
 移動支援の個別給付化の話が出ている。
 おそらくかなり実現の厳しい話だとは思うけれど、仮に実現可能としても、うちのように学生ヘルパーを40人近く動かして、移動支援全体の7割ぐらいを提供している事業所と利用者(児童が6〜7割)にとっては、全く良い話に思えない。支援者サイドの資格要件がムダに上がるばかり。
 学生ヘルパーの質がうんぬんと言われるだろうか。断言してよいが、うちの学生ヘルパーの力量はそのへんの事業所の正職員ヘルパーより上である。うち以外の事業所も併用している利用者について、子どもの特性に配慮ができていない他事業所の支援を聞いて失笑するぐらいのレベルになりつつある。正しく勉強と経験を重ねてきた20歳そこそこの学生に「なんでこんなことがわかんないのかな」と落胆される介護福祉士とか行動援護ヘルパーとかが、世の中にはたくさんいる。
 個別給付化したところで、居宅介護等とのバランスを考えたら大幅に報酬が上がることなんて考えられないし(既存の個別給付の報酬から考えると、むしろ大きく下がる市町村が多く出てくるはず)、1日に複数件をこなせないのが移動支援。通所・通学以外の時間帯でかなりの調整件数をこなさなければ安定した雇用になんてつながらない。少しばかり報酬が上がったり、支給量が増えたりしたって、もともと運営の難しい事業なのだ。他にどんな事業と組み合わせれば運営していけるのか、という事業モデルを構想することのほうが重要だと思う。
 居宅介護が個別給付だからといって義務的経費だからといって、事業所が増えているわけでもないし、行動援護並みの報酬とかになるならともかく、そうでないなら縛りがきつくなって自分たちの首を絞めるだけ。その行動援護だって、ちっとも事業所は増えていない。個別給付だから青天井に支給されるわけでも、単価が約束されるわけでもない。
 児童分野なんて「放課後等デイ」という収益性の極めて高い事業があるのだから、移動支援への新規参入なんて起こるはずがない。1時間3000〜4000円ぐらいの単価にすれば、ようやく時間あたりの報酬が同等になるが、そんな単価はありえない。しかもマンツーマンの支援となるのだから、放課後デイよりずっと利益は少なくなる。
 せっかく自分たちで学生向けのヘルパー養成研修を組んで、経験的に大事と思われることに重きをおいた内容のカリキュラムを組み、柔軟に人材育成をしているのに、それもみんなぶちこわされる。まったくムダ。この地元では、誰も幸せにならない。
 もちろん主たる利用者によって事業の運営モデルは変わってくるので、障害者支援業界全体で見れば、さまざまな立場がありうるのは、わかる。しかし、知的障害者自閉症支援関係者については、どんなバラ色の未来を描いて個別給付化を望んでいるのか、まったく理解できない。市町村への補助を少しでも増やして、それぞれの地域で報酬増を働きかけられる方にもっていくがずっとましだ。