泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

ブラック介護労働の背景

未払い残業代求めたら…会社解散、全員解雇
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0004985652.shtml
ブックマークコメントではブラックっぷりが叩かれまくっていて、自分のことを言われているようで胸が痛い。
 非正規職員についてはきちんと労働に対する対価を払えているけれど(パートタイムの皆さんはお金にシビアでもある)、正職員についてはもともと全員が学生時代のボランティアからそのまま就職した者ばかりで「雇われている」という意識があまり無いため、「残業」という観念が無いままにみんな遅くまで仕事をしている。それを賃金に換算したら、きっとうちは潰れる。同じようなところは零細事業所ならば、たくさんあるのではないだろうか。
 自分が満足できるだけの支援をしたいからと、自ら仕事を増やしていく者もいる。経営者として待ったをかけるべきなのだろうが、本人のモチベーションを考えたときにそうもいかない場合というのもあり(そもそも職員相互の関係性として「そんなふうに自分から仕事を増やすな」なんて上から言える感じでもなく)、なかなか労働時間は減らない。
 最近になってようやく、少し早く帰ろうとする意識がみんな芽生えてきたが(結婚した職員が出たことも大きい)、新卒から間もない職員は平気で深夜まで残ったりしている。こうした問題が社会的に表面化するかどうかというのは、雇われる側が事前の期待に対して「こんなはずじゃなかった」と思い、経営状況について雇う側の説明責任も十分に果たされず、不満や怒りが「辞める」という方向にも進まない何らかの理由がある場合に限られるだろう。対人援助に関わる場合、良い支援をしようという思いがどの程度まで雇う側と雇われる側で共有されているかどうか、というのも大きい。
 同じ支援を志すはずの者どうしがこのように決裂して、結果的に自分たちがやってきたことを全くの他人にすべて委ねなければならないのは、ものすごく空しい。このようなとき利用者の心情はいかなるものだろう。あまり踏み込んで話題にされることはない。そして、「スムーズな引き継ぎ」が介護の制度化の一側面であるとしても、事業所や支援者のアイデンティティって何だろう。今や不要なのか、そんなものは。