泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

ケース会議ではいけないのだろうか

 就学指導委員会が不要な気がしてきた。
 その昔「『適正』就学指導委員会」が批判されたのとは、少し違う意味で。
 就学指導委員会が一方的に就学先を保護者に押しつけるなんてことは思っていないけれど、現状では(この地域に関しては)子どもについての限定的な情報(保育所または幼稚園での様子+行政の中で保健師が行う発達検査)から大ざっぱな判断をくだすだけであり、かつ最終的に保護者の要望は尊重されるわけである。ならば、何のために委員会として検討をしているのかわからない。
 さらには、その判断も必ず保護者に伝えられているわけではなく、保育所幼稚園の考えと委員会の判断が「普通学級」で一致していると、「あえて言う必要もない」と伝えられなかったりする。この場合、保護者は就学指導委員会というところでわが子の話がされていることすら、知らない。就学の希望について聞かれることもなく、時間だけがずるずると過ぎ去ったりもする(もちろんそんなことにならないように療育機関として保護者への助言や後押しをしているが、これは地域システムでなく、任意の努力でしかない)。
 それならば、はじめから保護者も療育機関も保健師も保幼小も含めて、子どものことをよく知っている人間が堂々とケース会議を開いて、相互に情報共有と議論を重ねたほうがよほど良い判断ができるんじゃないだろうか。現状では、就学先の判断に向けて、就学指導委員会の動きと保護者の動きが相互に全く独立しており、このままいくと特に「本人の苦労が周囲に伝わりにくい子」について「就学指導委員会(保育所・幼稚園・小学校含む)」対「保護者・療育機関」の図式が生まれかねない。
 特別支援教育がはじまって、支援学校や支援学級の子どもが増えて、って言われるけれど、いま目の前にあるのは「支援学級生が増えるとクラスの増設や教師の増員などが大変なので、少しでも普通学級のほうに行ってほしい」という学校の思惑ばかりである。そして、学校側の「お母さん、大丈夫ですよ。心配いりません」に背中を押されて普通学級に入った結果、1学期からうまくいかず、子どもも教員も苦しくなって、学校のほうから「やっぱり支援学級で」と言われる。子どもが失った自信を取り戻すには時間がかかるだろう。普通学級の中で「うまくやっていけるかどうか」を試されたのではたまったもんじゃない。
 昨年度に打診されていた就学指導委員会への参加を、今年度になって教育委員会から見送られたのであるが(いろいろ考えて、こちらからも少し難色は示していた)、なんとも複雑である。あくまで保護者に寄り添えるのは今の状況なのだろう。ただ、保育所や幼稚園の主張に対して、保護者を間にはさんで対抗するような形になるのはもどかしく、また保護者にかかる重圧も大きい。だからこそケース会議のほうがよいと思うのだが、どうか。

(追記)
AFCPさんがtwitter経由で情報提供してくださった東松山市の取り組み(ありがとうございます)。
「就学支援委員会の廃止と就学相談―東松山市の取り組みから―」
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n319/n319007.html
「埼玉県の特別支援教育の現状(「支援籍」制度の取組及び就学に係る概要等について)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1298217.htm
 結局、就学相談にかかる中心を誰が担うのか、がポイントなのだろうと思う。東松山市だと「就学相談員」ということになるのだろう。「総合教育センター」というところと「教育委員会学校教育課」の2か所に就学相談窓口が設置されているようだが、就学相談員は「総合福祉エリア」にもいるらしい。実際の相談窓口はもう少し多様化しているということなのだろう。教育委員会にある窓口はきっと保護者にとって敷居が高いだろうから、身近なところでも必要だ。個人的には幼稚園や保育所に信頼できる相談窓口があればいちばん良いと思うが、未就園のまま就学していく子どももいるのだし、福祉的な支援も合わせて考えていくべきケースもあるだろうし、福祉系の相談窓口も含められてよいと思う。
 明確な位置づけがなくても「相談窓口」ということならば、このあたりでもなんとなくたくさんある。基本的に就学についての情報収集は保護者が自分で動くことを前提としつつも、療育機関や保健師が学校と保護者の間に入っている。もちろん学校の見学や懇談をコーディネートしたりもする。
 どこに窓口を置いたところで、個々の機関や個人で就学相談にのろうとすると、多くの情報を収集して学校生活への予測を立てられねばならず、かなりの力量が必要になってくる。東松山は「調整会議」を置いている。ただ、ここに保護者は含まれていないようだし、今ひとつ動きはわからない。動き方次第では、これも就学指導委員会と同様になる。保護者の知らないところで集まりがもたれて、そこからの助言が誰かによって保護者に伝えられるとしたら、そのやり方で十分な信頼は得られないだろう。
 東松山の資料を見る限り、就学相談そのものにさほどの目新しさは感じない。ただ、保護者と関係者がばらばらに動くことがないのだとすれば、その点は合理的である。