泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

7歳でも保育所に通う子どもたちがいる

 いろいろ驚かされた。
共働き夫妻が障害児の入学断念 常時付き添い求められ
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011030101000878.html

 埼玉県川越市の共働きの夫妻が、障害のある子ども(6)の県立特別支援学校への入学を希望し、県から保護者が常時付き添うことを求められたため、断念していたことが1日、夫妻への取材で分かった。父親司法書士広田博志さん(40)は「障害のある子の親は仕事を辞めないといけないというのは差別に等しい」としている。
 博志さんによると、先天性脳性まひで重い身体障害がある次男明理君は1日に4、5回、鼻からチューブを入れて水分や栄養を補給する必要がある。現在通う同市立保育園では、配置されている看護師が担当している。
 明理君が就学年齢になり、両親は特別支援学校への入学を希望。県は「リスクが高い」として特別支援学校の看護師に緊急時以外はチューブの挿入を認めておらず、入学に際し、学校で保護者が付き添うことを求めた。
 広田さん夫妻は生活維持のため仕事を辞めるわけにいかず、入学を断念。川越市に就学の猶予を申し出て、もう1年保育園に通うことにした。
 県は「特別支援学校の看護師の臨床実習時間を増やすなど、何ができるか検討していく」としている。

 小学校などでありがちな「うちでは医療的ケアができないから、親が付き添え」の事例かと思ったら、まさかの特別支援学校。「共働き」はまったく本質的な問題じゃない。保育所で看護師がやっていることを、特別支援学校の看護師がやると「リスクが高い」なんてよくも言えたものだ。同じ地域で生活を継続しながら、子どもの通う場所が市立か県立か、管轄が保育行政か教育行政か、という違いだけで、こんな理不尽なことが起こる。
 養護学校の義務化から30年あまり。「就学猶予って、いつの時代の話だよ…」と思って読んだのだが、調べてみたところ、自分の無知を恥じることになった。文部科学省によれば、平成20年度の就学猶予者は全国に1505名。就学免除者も含めると、3倍ほどになる(参照)。ただ、文部科学省の資料では、猶予や免除の理由がよくわからない。内訳をみても、障害を理由にした就学猶予は全体の1割程度で「その他」が9割。個別の事例をもっと知りたい。
 記事の中で、保護者が追い込まれた「もう1年保育所に通う」という選択にも驚いたのだが、どうやらそれも前代未聞の話ではなく、公的にも想定されている事態のようだ。また、消極的に通わざるを得ない場合ばかりではなく、低体重児等で積極的に保護者が選択するケースもあるらしい(参照1)(参照2)。それはそれで、子どもの育ちの多様性を考えれば、自然なこととも思う。やっぱり数字だけでは言えることが少なすぎる。就学猶予には、都道府県格差が大きいようなので、人数の多い地域はもっと情報を出してほしい。
 ちなみに、wikipediaの「就学猶予と就学免除」の項が簡潔なよいまとめで参考になった。保育所に通う就学猶予児は、国勢調査上でなぜかゼロにされているそうだ。「非実在保育園児」にはせずに、もっとオープンにすれば、上の記事のような好ましくないケースをあぶりだせるばかりでなく、子どもが同じ時期から義務教育をスタートしなければいけない理由は何か、について議論するよいきっかけにもなるのに。とてももったいない。