泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

「当事者」の境界

世間は全く賑わせていないけれども、新法を検討している最中の自立支援法一部改正をめぐって業界内はまた揉めている模様。

こっち↓が一部改正賛成派で、
障害者自立支援法等の一部を改正する法律案について緊急要望書を出しました。(JDDネット)
http://jddnet.jp/index.files/archives2010/news20100527_kinkyuyoubou.html

こっち↓が反対派(メルマガの転載)。
自立支援法改正問題発生! 緊急行動を呼びかけます!http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/7f812f709495279b67d14e372851615c

他にも反対派の声明は自分も入っているメーリングリストに続々と。

緊 急 抗 議 声 明
障害者自立支援法等の一部を改正する法律案関連)
 このたび、自民党公明党提案にかかる障害者自立支援法の一部改訂案につき政権与党が、ほぼ同内容の法案を厚生労働委員会委員長提案として、今国会に提案することが確実視されていると報道されています。
 これまで、障害者団体は、障害者の声を反映させるよう求めてきましたが、ここにきて、障害者の声が聞かれることなく、障害者自立支援法等の一部を改正する法律案の提出が予定されていること自体、強く懸念を表します。
 政策プロセスにおいて障害者団体の声を無視した場合、障害者の権利に関する条約第四条第三項に違反します。これでは、批准はありえません。また、障害者自立支援法等の一部を改正する法律案には、障がい者制度改革推進会議総合福祉法部会の意見書を待たずして国会に出されるものであり、民主党マニフェストにある、障がい者制度改革推進法(案)や障害者自立支援法違憲訴訟との基本合意文書にも背くものになります。
 さらに、障害者団体からだされた意見の殆どが反映されておらず、「遅くとも平成25年8月までに障害者自立支援法は廃止される」ことも「施行の終期が平成25年8月までである時限立法である」ことも、一切明記されておりません。
1.精神科救急医療の整備(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正)条項については、精神障害者団体とのヒアリングを重ねるべきところを、精神障害者団体からの主張に基づかずに強行しようとするものです。我が国には、強制入院及び社会的入院が深刻あり、安易に法制化することは絶対に避けなければなりません。
 この時期に、こうした法案が出されること自体、許されるものではありません。よって、直ちに今国会における与党合意に基づく厚労委員会委員長提案を撤回し、自・公提案の一部改訂案については、廃案とするよう強く求めるものです。

2010年5月27日
全国「精神病」者集団     

障害連事務局FAXレター NO.173 2010.5.24(月)
緊 急 抗 議 声 明
与党による「障害者自立支援法一部改正案」提案に断固反対!
2010年5月24日
障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会
障害者自立支援法違憲訴訟弁護団

 このたび、自民党公明党提案にかかる障害者自立支援法の一部改訂案につき、政権与党が、ほぼ同内容の法案を厚生労働委員会委員長提案として今国会に提案することが確実視されていると報道されています。
 これが事実だとすれば,昨年の政権交代以来、政府・与党として首相及び厚労大臣が一貫して表明し、当訴訟団との基本合意文書において確認された「障害者自立支援法を廃止し、平成25年8月までに制度の谷間をつくらない新しい法律を当事者の意見を十分に聞いてつくる」とした国及び与党の姿勢に真っ向から反するものであり、看過できない重大な事態です。
 政府・与党は、障害者自立支援法に代わる新たな総合的福祉法制については、与党がかねてより提案していた「障がい者制度改革推進本部」を内閣府に設置し、その下の「障がい者制度改革推進会議」において、障害のある当事者中心の検討に基づき構築するとの閣議決定の下、精力的な議論がなされ、本年4月27日からは「総合福祉部会」が発足し、新法制定までの当面の課題について意見集約をしているまっ只中にあります。
 にもかかわらず、そこにおける議論を一切踏まえず、自・公提案の一部改訂案に与党議員が同調することによって提案しようとする今回の態度は、推進本部の存在意義を自ら否定し、推進会議と部会を侮り、さらに障害者問題を国会の政争の具とするという、政権与党のこれまでの政策・姿勢にも当訴訟団との基本合意文書にも背くものであり、「私たちのことは私たち抜きに決めないで」という障害当事者の人としての尊厳を踏みにじるものと強く非難せざるをえません。障害のある人にとって何が最善かは、当事者参加による十分な検討によってこそ初めてわかる、ということを、政府与党が理解し、障害者自立支援法制定時の愚行を反省したからこそ、基本合意文書が締結され、障がい者制度改革推進会議が設置されたはずです。
 推進会議と訴訟団を無視した今回の法案には「遅くとも平成25年8月までに障害者自立支援法は廃止される」ことも「施行の終期が平成25年8月までである時限立法である」ことも明記されておらず、障害者自立支援違憲訴訟に基づく基本合意により廃止が決まっている悪法の延命を図るためのものと批判されて然るべきものです。また、内容面でも今般の改正法案は、私たちが願う『改正』とはほど遠く、基本合意文書の水準を大きく下回るものです。そればかりではなく現在進められている検証会議や推進会議・総合福祉部会の存在を軽んじる以外の何物でもなく、ここでの論議の幅を狭めかねません。
 よって、直ちに今国会における与党合意に基づく厚労委員会委員長提案を撤回し、自・公提案の一部改訂案については、廃案とするよう強く求めるものです。
以 上

 改正案の中身を全然見ていないけれど、反対派からすると一部改正に賛成する「当事者」は「当事者」ではない、ということになってしまうのだろうか。
 まず、自分はどの政党を支持しているわけでもなければ、どの当事者団体・事業者団体にもいま属しておらず、田舎で地道に日々の支援を続けているだけだ、ということをはっきり書いておきたい。妙な邪推はされたくないので。そして、そんな自分なので、中央の政治や運動は全くどうなっているのかわからない。
 ただ、当事者の声を全く聞くことなく障害者福祉に関する法改正が行われるということがあるのだろうか。あるいは、それは「当事者の声」ではなく「親の声だ」とか「事業者の声だ」ということなのだろうか。
「当事者」が「当事者」の声を十分に集約する、ということはどのようにして担保されるのか。「私たちのことを、私たち抜きに決めるな」の「私たち」とはどこからどこまでか。「障害当事者」とは誰のことか。発達障害者はこの境目に立たされて、翻弄されてはいないか。※ここの後半にも書いた。