34歳にして「学生」という身分を失うことに、今さらこんなにも心が揺さぶられるとは思っていなかった。
修士課程から休学も含めれば、11年。先の見えない障害者福祉という荒波に飲まれたとはいえ、そんなのはある程度の予想ができていたこと。博論という結果を出せなかった自分の力の無さが悔しく、悲しい。
財布の中に学生証は、もう無い。研究室にも自分ひとりでは入れない。図書館やゼミにときどき出没するつもりだけれど、勉強はやりづらくなるだろう。
大学を出ると、急に雪が降り出した。たぶん、この光景はずっと忘れられない。