泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

八方塞がり

 昨日8時から勤務の職員が子どもたちとサマーキャンプに行き、子どもたちを寝かしつけたり学生スタッフの相手など深夜2時過ぎぐらいまで仕事して、今朝6時前に起床。キャンプ場から帰ってきて、そのまま引き続いての仕事。夜になっても当然のごとく全く帰る様子もなし。そんな中、昨日9時から仕事して、同じく2時まで子どもを寝かしつけて、今朝5時半起きの自分は、18時ぐらいでエネルギー切れ。せいいっぱい21時半までがんばって、「早く帰って申し訳ない」という気持ちいっぱいで帰る。職員3人ともおんなじような働き方だが、自分の帰宅がダントツに早い。
 誰もうまくやろうという気がない。自分がいくら働いてもオッケーならば、周囲の気持ちは関係ない。他の人間が同じようにできるかどうかも関係ない。いい意味で手を抜くことができる部分も、自分の気がすまないからとすべてに全力。いくら言っても、聞かない。こんな法人、どうせ長くもたないだろうとどんどん自虐的になってくる。
 届いた選挙公報には「障害者自立支援法廃止」。ネガティブになっているぶん、いっそう追い込まれるような気がしてならない。自治体からは「○時間5分で請求されると、5分が切り上がってしまうので、あらかじめ切り捨ててはもらえないか」という連絡。どんどん伸びていくサービス利用に苦しんでいるのがわかる。市町村が抑制かけようと必死なものを、国の事業にしたところで抑制をかけずに済むとは思えない。どうやって抑制をかけるのか? そのおそろしさ。
 給与計算をしながら、学生スタッフの確保が苦しくなってきているのを感じる。これは時給が低いからとか、そんな単純な話ではない。労働時間の短さもある。大学が学生を縛り付けていることもある。地理的な条件の変化もある。
 ヘルパーの需給調整にも事業所ごとにいろんなモデルがあるだろう。どんな生活条件の「利用者」が中心になっているかによって、支援者の動き方は変わる。少ない支援者を長時間動かすのが支援に合理的なところ。たくさんの支援者を短時間ずつ動かすしかないところ。知的障害児の放課後支援中心のうちは後者だ。常勤雇用を増やしても、一人でできる支援には限りがある。だから、多くの支援者をコーディネートすることでやっていく。薄利多売でも「多売」できるだけましなのかもしれない。これで「多売」することが難しい条件を課されたら? 制度はできたから、サービスの利用要件は下げたから、あとは「事業者次第」と責任放棄?

社説:視点 衆院選 障害者施策 民主は本気なのか=論説委員野沢和弘
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090820ddm005070114000c.html

 衆院解散で障害者自立支援法改正案など障害関係の重要法案が軒並み廃案となった。「やはり軽視されている」と落胆する声をよく聞いた。身体・知的・精神障害者は計724万人(09年版障害者白書)。これに発達障害高次脳機能障害、難病、内部疾患の人、その家族や福祉職員らを加えると数千万人に上る。廃案となった法案に強い関心を持つ大票田である。
 民主党障害者自立支援法が「国民的合意が得られていない」として廃止し、代わりに「障がい者総合福祉法(仮称)」の制定を公約にした。自立支援法は障害種別にかかわらず一元的・全国統一的な福祉サービスを提供することを定めたが、原則1割の利用者負担を課し、サービス支給量を決める「障害程度区分判定」が実態と合わないなどの批判が噴出した。介護保険との統合を想定して制度設計したことへの根強い不信がある。
 現状はどうか。所得に応じて利用者負担を切り下げ、現在の負担率は平均2・8%、生活保護世帯は負担ゼロで、実質的に民主党の主張する「応能負担」となっている。社会保障費の伸びが毎年2200億円削減される中、自立支援法の予算は逆に毎年10%前後伸び、福祉資源がなかった地域にもサービスが行き届くようになった。20〜30代の若者がNPOを設立し、障害者と地場産業を再興するなどユニークな事業の芽も各地で見られる。大企業で働く知的障害者精神障害者も目立つようになってきた。改正案が廃案とならずに成立していれば、グループホームや相談支援事業の拡充がさらに見込めたはずだった。
 民主党障がい者総合福祉法は、先進的な障害者団体や研究者の案を下敷きにしたもので、障害者の範囲を難病や内部疾患にも広げて制度の谷間をなくし、障害程度区分を廃止して障害者自身のニーズを優先したサービス支給の仕組みを作るなど、画期的な内容だ。障害者差別禁止法や虐待防止法の制定も掲げており、もしも政権交代すれば障害者施策は大前進するかもしれない。
 ただ、民主党内の優先順位はどうだろう。看板政策の子ども手当、農家への戸別所得補償などに大きな財源を充てる一方、障がい者総合福祉法には400億円とされているが、それで足りるのか、地方分権補助金削減方針とは整合するのか。政府批判の声を得て「自立支援法廃止」の旗を立てたものの、中途半端に終われば、せっかく地域や会社で存在感を発揮し始めた障害者が再び施設に囲い込まれることになりかねない。

「先進的な障害者団体や研究者」ってどこのことで、誰のことなんだろう? 本当に自分にはわからないので、誰か心あたりがあるなら、教えてほしい。そして、どういう意味で「先進的」なのか。身体障害とか知的障害とか精神障害とか発達障害とか高次脳機能障害とか難病とか子どもとか、働くこととか住まうこととか遊ぶこととか出かけることとか、利用者とか家族とかヘルパーとか「指導員」とか、いったい何について「先進的」なんだ? そして「先進的」な人たちが言う仕組みにしたときに「後進的」な団体や事業所はどうなる? 淘汰?
 ちなみに自立支援法の改正案は、各種法案の中でもかなり早期に提出されており、ものすごく後回しにされた挙句に「重要法案の審議は終わった」と解散だったそうな。先日の研修で聞いた話。