泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

壊れゆく「心理」イメージ

心理学入門一歩手前―「心の科学」のパラドックス

心理学入門一歩手前―「心の科学」のパラドックス

 「一歩手前」にしてはけっこう難しい部分があったものの、ひとまず(社会福祉業界を含む)世の中の心理学に対するイメージはずいぶん偏っているということはわかった。
 むかし、この世界に足をつっこみはじめたときに「心理職」が子どもに関与することがあるのを聞き、いったい何をするのだろうと考えたりもした。今となっては何の不自然さもない。抽象的な議論についていけないまま「結局、福祉って何なの?」と思いながら福祉系学部を卒業してしまった者よりも、しっかりと現代的な心理学の勉強をしてきた者のほうが障害福祉においてもよっぽどいい仕事をするんじゃないかという気さえする。自分たちの仕事において「社会的なもの」の重要性はいささかも揺らがないが、知的障害や発達障害の理解において、精神医学や心理学を無視するのはどう考えても無理だ。荒っぽい言い方だが、ある限られた側面において医学モデルと社会モデルは遠くない。
 哲学や脳科学の知見をどんどん貪欲に取り入れて発展していくあたりも、楽しく読める本。終盤でハイデッガーギブソンがつながり、トドメは「仏教」。