泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

「統計の詐欺」ブーメラン

 すぐに「障害児」のラベリングをしたがる傾向には反省的であるべきとは思うけれど、

高岡 ・・・「特別支援教育」の対象者は、6.3%であるといわれています。この6.3%という数字は、一口に言いますと統計の詐欺とでもいうような形で、はじき出された数字だと思っています。・・・
石川 ・・・今、高岡さんが統計の詐欺と言われたところは確かに大事なことです。これは実に見事に仕組まれたと言えると思います。なぜなら、日本の場合過去の障害者は知的障害児、肢体不自由児を中心に概ね2%未満です。特殊教育を受ける人というのは1%代です。これは何を意味しているかというと、50人学級の時代にクラスに1人程度を教員が障害児として認識していたということです。ところが今や都心部では1クラスの子どもは20人を切っています。へき地ではないのに、1クラスが7人、8人というところもある。日本全体で平均すれば40人学級だけれども、都市部では20人学級サイズというのは常識になってきています。その時代の1人が何%にあたるかと言えば5〜6%です。先生がクラスの中で1人の問題児をはじき出そうとすれば、この数字にほぼ近くなる。そういう数字だと思います。(24-25ページ)

 この話は、ずいぶんおかしい。
 その「6.3%」のもとになった「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」は、2002年に全国5地域での調査。「5地域」がどことどこなのかは、ネット上で探してもわからなかったけれど、対象児童生徒が41579名で学級数は4328となっているから、単純に言うと1クラス10人もいない計算になる。調査年の小中学校の児童生徒数は全国で1100万人あまり、学級数は35万ぐらいなので、調査対象となっている地域の1クラスの人数が、かなり全国平均よりも少ないということは言える。ただ「1クラス1人の問題児」ならば、6.3%では済まない。
 一方で、「都心部」の代表としての東京都における1クラスの平均児童数は、2002年ならば小学校29.3人。普通学級に限ると、30.5人である(平成15年度公立学校統計調査報告書【学校調査編】の統計表参照)。どこの市区に絞ってみても、20人には程遠い。ちなみに、最新の2008年度では、1クラス平均31.2人。むしろ「増えている」。
 何のデータも参照せず、対談形式の中でさらっと主張して、そのまま本に載ってしまう。こちらのほうがよっぽど「詐欺」である。