泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

教育が家の中に入りたがっている

 少し更新の間隔があいた。とりたてて忙しかったというわけでもないのだけれど。
 最近は子育て支援関連の制度やサービスについて勉強したりしていた。これから自分がやるかやらないかはともかくとして、選択肢はたくさん知っておきたいし、障害をもつ子どもともいくらかは縁のある話。おそらく無駄にはならないだろう。それにしても、子育て支援関連は文部科学省厚生労働省がよくわからないビジョンとよくわからない役割分担のもとに次々と事業を増やしており、いったい親や子にどうなってほしいのだろうと疑問は湧くばかり。
 例えば、おととい教育委員会の担当者から愚痴られた、文部科学省の唐突な提案。平成20年度の概算要求でいうと「地域における家庭教育支援基盤形成事業」(昨年度までは「家庭教育支援総合推進事業」。もはや使い古した二字熟語の組み合わせゲームになっているのは、どの分野も同じだ)。そのQ&A。

Q1「家庭教育支援総合推進事業」を廃止し、新たに「地域における家庭教育支援基盤形成事業」を創設した理由は何ですか。
A 「家庭教育支援総合推進事業」は、家庭教育に関する学習機会の提供や、家庭教育支援に関する人材養成などを行う委託事業(モデル事業)として平成16年度に開始され、平成19年度が4年目です。
 当該事業は、一人でも多くの保護者に家庭教育に関する学習機会を提供することを目的に、地域の実情に即して実施され、各地域において定着してきており、モデル事業としては一定の成果が得られたものと考えています。
 しかし、子育てについて無関心な親(応々にして家庭教育に関する学習機会に参加しない)や、子育てに不安や悩みを持つ孤立しがちな親に対するきめ細かな支援、父親の家庭教育参加の促進や地域が一体となって子育てを行っていくための環境整備が喫緊の課題となっています。
 そこで、地域において、地道かつ持続的にきめ細かな家庭教育支援を行う体制を構築し、上記の課題に対応していくため、新たに「家庭教育支援チーム」の設置を中心とする「地域における家庭教育支援基盤形成事業」を実施することとしました。

 そして、この「家庭教育支援チーム」を全小学校区に作れ、といきなり言い出したのである。自治体はパニックだ。さらに家庭教育支援チームの「活動内容例」。

・各家庭へのきめ細かな情報提供
・各家庭からの求めに応じた相談対応
・活動地域で様々な団体により提供される学習機会の調整
・学校と連携した訪問型の家庭教育支援
・企業等への家庭教育参加促進の働きかけ など

 ここで想定されている「教育されるべき親」は、「子育て講座」などを実施しても、参加などしたがらない親のことのようだ。あらゆる種類の情報が容易に入手できるこのご時世に、もっぱら行政主催で説教がましく実施される講座に参加しない親がいることがどれほどの問題なのかもわからないが(そもそも参加しないほうが圧倒的多数だろう)、仮にそこに目をつむって「子育てに不安や悩みを持つ孤立しがちな親に対するきめ細かな支援」「父親の家庭教育参加の促進」「地域が一体となって子育てを行っていくための環境整備」などがまことに重要だと言えたとして、この事業の概算要求額は、わずか22億円。「チーム」を作って、適当に子育て講座やって終わり、となるようにしか思えない。「情報提供」や「相談対応」はなんだか民生児童委員っぽいが、どう違うのだろう(もっとも民生児童委員に過大な期待をするつもりもない)。あちこちで増やされている「子育てサポーター」に活躍の場を、というイメージにも見えるが、サポーターだと求められてもいないのに他人の家の子育てに口が挟めるのだろうか。目的と方法が全くちぐはぐだ。
 モデル事業的に展開するつもりとはいえ、「教育改革」への金のかけ方と将来ビジョンはこの程度のもの。福祉以上に悲惨なような気がしてきた。なお「特別支援教育の推進」は28億。単純に人口比で計算したら、うちの地元自治体にかけられたと言える金は80万ぐらいか。それで何ができるのだろう。
 特別支援学校でしばしば指摘される「子ども一人あたり600万円」というのが、ますます目立ち、特別支援学校がどんどん多機能化を求められるのも仕方がないような気さえしてくるのであった。

 いつも読ませてもらっているブログ複数で、障害者と介護者の関係をめぐる議論が活発になっており、関連させて何か書きたいのだけれど、書くにはけっこうエネルギーがいる内容なので、また改めて。