泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

養護学校誕生前夜

 G★RDIAS(http://d.hatena.ne.jp/gordias/20070531)経由で知った「帝国議会会議録検索システム」が面白い。
http://teikokugikai-i.ndl.go.jp/
たとえば、昭和22年3月26日教育基本法案特別委員会はこんな感じ。

○佐々木惣一君 第六章の第七十五條の特殊學級と云ふのですが、小學でも、中學でも、更に高等學校でも別に特殊學級を置くと云ふことに付て、何か宜いこともありませうが、弊害も御想像になつたことはありませぬか、さう云ふ特殊學級、低能的な特殊な學級も同じ學校に置くことは、別にさう云ふものを置くのではなしに、同じ學校にさう云ふ學級を一つ置くと云ふことに付て、何だか弊害があるやうにもちよつと思ふのですが、如何ですか
○政府委員(日高第四郎君) 其の點は不自由な者、或は欠陷のある者を一般の生徒から特別に目立たせるやうな點で、或は差別待遇を行ふことや、或は生徒の間に馬鹿にしたりするやうな、さう云ふ傾向があることは勿論憂へて居るのでありますが、併し斯う云ふものを全然離して作るだけの餘裕があるかどうかと云ふことがもう一つの心配であります、又さう云ふものを一般の中に一緒に入れて置くことも一層教育上困るやうなことがあるかと思います、多少の弊害を考慮しながら、必要な場合は特殊學級を置くことが出來ると云ふ風に考へたのであります
○佐々木惣一君 分りました、さう云ふ多少の弊害を御考慮の上で此の規定を御作りになつたと云ふことであればよく分ります、從つて又適用上さう云ふ心配が除かれるやうな法制、或は行政上の考慮を以て適用せられることを望みます、よく分りました
○伯爵宗武志君 此の精神薄弱者と云ふのはどう云ふ程度のものでございませうか
○政府委員(日高第四郎君) 素質智能檢査と云ふものがございまして、年齡と智能との比較を致すやうになつて居るさうであります、それで其の百が平均の者でありまして、それが百に到達しない、八十五から五十位迄の間の者を精神薄弱者と云ふカテゴリーで、それをさう云ふ所で教育する、それ以下になりますと、普通の教育には手に負へない者になるさうであります
○伯爵宗武志君 有難うございました、それでは性格異常者と云ふのはどう云ふ者を言ふのでありますか、それを御説明願ひます
○政府委員(剣木亨弘君) 性格異常者と申しますのは、盜癖がありますとか放火癖があるとか、色々性格的に皆と同じやうに學級編成が出來ない異常性格、さう云つたやうな特殊の性格なるものを指して居るのであります
○伯爵宗武志君 第七十五條の特殊學級と申しますのは、性格異常者、精神薄弱者以下七項目までありますが、此の各各一項目の爲に一學級を特に設けるのでございませうか
○政府委員(剣木亨弘君) 是等のものを矢張り別々に設けるので、同じ學級の中で集めてやると云ふのではありませぬ
○伯爵宗武志君 さう致しますと、一つの學級毎に、一人の特殊な教員が必要だと云ふことになるんぢやないかと思ひますが、それだけの準備が實際問題として果して出來ますでございませうか
○政府委員(剣木亨弘君) それは實際問題と致しましては、之を一つの學校に全部のさう云ふ學級を設けると云ふことは、非常に困難であると思ひますが、併しまあ學校の中で、さう言つた或る例へば性格異常者、精神薄弱者と云ふやうなものに付きまして一つ設けて、他の學校で又外のものを設けると云ふことは有り得ると思ひますし、一應制度と致しましては、斯う云ふことは出來ると云ふことに致したのでございまして、實際はなかなか全部を一つの學校に置くと云ふことは、非常に困難であらうと思ひます
○伯爵宗武志君 養護教諭と云ふのが第二十八條にありますが、是は精神薄弱、身體不自由、其の他心身に故障のある者を教へる教諭の意味なんでございませうか
○政府委員(剣木亨弘君) 養護教諭と申しまするのは、一般に小學校等に於きまして、兒童全般の養護を掌るのでございまして、さう云ふ特殊學級の教諭を申すのではございませぬ
○伯爵橋本實斐君 今の御説明に關聯致すかも存じませが、又私が遲れて參りましたから私の居りませぬ中に、既に御質疑がございましたらば、御注意願ひまして差控へます、養護學校と云ふのはどう云ふ意味でございますか、初めて出て來るやうな字でございますが、從來の制度としては我々知らなかつたのでございますが、矢強り盲學校とか聾學校に相對する觀念に於きまして養護學校と云ふのでありますか
○政府委員(剣木亨弘君) 是は盲者を盲學校、聾者を聾學校に入れまして、精神薄弱者、身體不自由其の他心身に故障のある者に對しまして、養護學校と云ふものを作ると云ふのでございます
○伯爵橋本實斐君 是は今囘初めて日本で御發明でございますか、既に諸外國に於きまして斯う云ふものがあるのでございますか、一つの單一の學校として是だけのものを御集めになるのでしたら、趣旨は結構と思ひますけれども、うまく參りませぬと思ひますが……
○政府委員(剣木亨弘君) アメリカ其の他の外國には、相當澤山あるさうでございますが、日本に於きましても光明學園でございましたか、さう云ふ身體不自由者に對しまする特別の養護學校がございます
○伯爵橋本實斐君 是は自體の不具者で、精神的には餘り缺陷がない者が多いのでございますか、其の實際の例はどう云ふものでございませうか、精神上の薄弱者の方でございますか、身體不自由の……詰り兩方でございませうか
○政府委員(剣木亨弘君) 兩方含めてであります
○伯爵橋本實斐君 それから、七十五條に關聯致しますが、「小學校、中學校及び高等學校には、左の各號の一に該當する兒童及び生徒のために、特殊學級を置く」と云ふことでございまして、是は制度の御思ひ付きとしては大變結構だと思ひますが、實際の運用と致しましては、小學校及中學校の初等級位では、さう云ふことが行はれ得ると思ひまするけれども、高等學校のやうな高學級に於きましては、特殊學級を置いて迄教育して行かうと云ふことは、困難ぢやないか、それを受ける學生から致しましても、なかなか辛いことぢやないかと思ひますが、もう小學校、中等學校で以て試驗濟の者は、高等學校に迄進む能力がないのぢやないかと思ひますが、實際の運營上どんなものでせう、是も諸外國での事例があることでざいませうか、制度のあれとしては非常に結構なことだと思ひますが……
○政府委員(日高第四郎君) 例はあるさうでございますが、是は置くことが出來ると云ふ規定でありまして、置かなければならないと云ふ規定ではないのであります、それで實情に應じて、茲に掲げました一から七迄の中に當る者を集めるやうな特殊學級と云ふものを、置かうと思へば置くことが出來る、さうして置くことに依つて教育を徹底させる、効果があるやうな場合には置くと云ふ、さう云ふ意味でありまして、置けるやうに仕組んだのでありまして、今必ずしも直ぐ置くと云ふ譯ではございませぬ
○伯爵橋本實斐君 御趣旨は能く分りますが、實際の御見透しはどんなものでせうか、此の制度の途を御聞きになることは結構だと思ひますが、實際は高等學校あたりは實現しないのぢやないでせうかね
○政府委員(日高第四郎君) 例へば盲者とか聾者とか、さう云ふ者には相當智能の高い者がある、唯全般的には多少は僻むやうな傾向はあるさうでございますけれども、專門家の話に依るとうまく教育すると普通の者と余り違はないだけの智能を發揮することが出來る、特に或る特殊の方面に於ては、普通より以上に優秀な者があると云ふことでありまして、從來斯う云ふ者に對する顧慮が非常に不足であつたので、新しい精神で出來るだけ不幸な者に對する教育を徹底させる意味で、斯う云ふ制度を考へたのでございます
○侯爵大久保利謙君 ちよつと一言、養護學校と云ふものは、大體御説明も伺ひましたが、是は英語では何と申しますか
○政府委員(剣木亨弘君) 私も其の點詳しく存じませぬが、英語と致しましては所謂スペシアル・スクールと云ふ概括的な言葉があるさうでありますが、其の他に付きましては、例へば精神薄弱なら精神薄弱と、さう云つたやうな一つ一つに對應する言葉はあるさうでございますが、養護學校と云ふ全般的の言葉と致しましてはスペシアル・スクールださうであります
○侯爵大久保利謙君 養護と云ふ言葉は今度初めて法規上に御使ひになつたのですか、今迄にはなかつたのでありませうか
○政府委員(日高第四郎君) 確か小學校令の中に養護訓導と云ふ言葉がありまして、養護と云ふ言葉は使つて居ります、養護學級もあつたさうであります
○侯爵大久保利謙君 現行の小學校令でございますか
○政府委員(日高第四郎君) 左樣であります
(中略)
○伯爵宗武志君 有難うございました、それからちよつと前に戻りますが、特殊教育の方に戻りますが、性格異常者とか其の他聾者、難聽者、盲者、弱視者、斯う云ふ風な特殊な教育に携はる教員の養成とか、其の認可とか云ふことに付て、是はどう云ふ風に御考になつていらつしやるでせうか
○政府委員(剣木亨弘君) 現在は東京盲學校、聾學校でこざいますが、其の二校に於きまして師範科を設けてやつて居るのでありますが、それが小學校、中學校に入る課程は今後義務教育となるのでありまして、それに要する教員は相當多數を必要とすると思ひます、尚是が非常に特殊な技術を要することでございますから、此の教員養成計畫に付きましては早急に其の計畫を樹てて實施したいと考へて居ります