泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[近況]長かった気がする一日

 精神的に最悪の状態。かなり不安定なので、これから夜中あたりにちょっとしたきっかけで泣き出すと思う。たぶん。
 朝からケース会議。まずは1件目。精神のヘルパー派遣内容について、保健所のたいそう評判の悪い担当者に厳しく叱られる。しかし、全く的外れでもない。素直に反省すべきところは反省するつもり。問題は、このケース会議が行われる前に一部の関係者の間で既にケース全体の方向性が定められており、最も当事者と対話の多い機関・団体の意見は今日になって事後的に聴取されるだけだったということ。今日の会議も、自分が「入れるべきだ」と主張した関係者は入れてもらえなかった。おそらく規定路線に対して反対意見を言いそうなところは入れたくなかったのだろう。誰かの生活について保健・医療・福祉等の関係者が集まって考えるときに、どこが中心を担うのか。実は定かでない。このケースは、きっとこれから数ヶ月、訪問看護とうちが大変な苦労をする。
 昼からケース会議2件目。行動援護がらみ。主な課題は、移動支援から行動援護サービスへの移行。9月末に発覚した行政の強引な行動援護支給決定にみんな困惑させられており、この1ヶ月ほどの間、利用者も事業者も行政に対して言いたいことをたくさん我慢しながらこの日を待っていたが、行政からそうした事情には全く配慮のない発言が次々と出てくる。行政担当者での連携もできておらず、そんな話は聞いていないと何度も言う。そして、サービス利用についての決定が宙ぶらりんな間にも必要であるからと事業所が提供してきたサービスについても、「なんでそんなことをやっているのか。違法だ」というような言い方をする。
 かつ、近隣の地域では認められている「行動援護と移動支援の併給」について、「法律があるのでできない」の一点張り。厚生労働省はできないとは言っていないし、年明けから出された文書にもそうした文言は無くなっている。このケースに関しては併給しなくても来月ぐらいには対応できるようになるが、今後他の利用者が行動援護に移行したときに実質的な利用抑制がかからないようにするためにも、これまでいい関係を築いてきたヘルパーが入り続けることができるようにするためにも、行動援護のできる事業所がひとつでもあれば併給など必要ない、というような強引なやり方には待ったをかけたかった。しかし、年度内はおろか、来年度以降もやり方は決して変えないと言う行政担当者。普段から地元自治体行政とは喧嘩しまいと思っているのだが、こちらもさすがに感情的になり、つい嫌味を言ってしまい、担当者激昂。その後、次第に落ち着いたものの、行政担当者との関係がまずくなることへの不安で頭がいっぱいに。
 そんな状態のまま会議の終盤で途中退出して、学童保育所に入る。この子はここ数日、登校拒否。学校も家族も原因がわからず、苦労している。しかし学童ではゴキゲンで、今日も上級生の女の子数人にかわいがってもらい(みんな少し荒っぽいが)グランドを走り回った。今夜はよく眠れるだろう。
 学童終了後すぐに先ほどの行政担当者に詫びの電話をするが、他の電話に出ているらしく、つながらず。別の職員に謝罪して、伝言を頼む。その職員いわく「あー、なんか聞いてます」「たぶん大丈夫です」。職場内で他の職員にも話すぐらいだから、かなり怒らせてしまったに違いない。まあ、これまでもたびたび怒らせてはいるが、会議の最後までいられなかっただけに、最終的にどんな印象を抱かせたのかがわからない。明日は祝日だし、週明けまで気分は晴れないだろう。行政担当者のさじ加減ひとつで、事業所なんて簡単につぶせるのだ。これぞ権力のおそろしさ。
 しかし、法律法律と言いながら、一方で既存の行動援護事業所にサービス利用を移行させたい担当者が提案したのは、同一時間帯にうちの移動支援ヘルパーから他事業所の行動援護ヘルパーへの引継ぎをするという案で、「国の事業と市町村の事業だから、監査にもひっかからない」と違法まるだしのことを言うのである。併給は違法でないが、これは完全に違法である。実際のところ利用者の障害特性からこの引継ぎ方法は使えないのだが、もし使える人だったらきっと違法な引継ぎがなされている。何にこだわるのかは、担当者の気持ちひとつ。法に忠実かどうかなんて、実際には関係ない。
 利用者の保護者も同席していたが、怒りをかみころして、平身低頭。「ありがたい、助けてもらっている、いろいろしてもらって申し訳ない」と。どこにも通所ができておらず、やっとみつかった通所先も本人が強く抵抗して通い続けられなかった(※NPO業界では、けっこう著名な施設)。いろいろと便宜をはかってきた行政はいらだっており、保護者はそのことについても申し訳なさげな姿勢。もともと自己主張が強く、必要なことについては要求もしっかりとする人である。自分は学生のころからこの人と付き合いがあるので、性格はよく知っている。言いたいことは山ほどあるに違いない。子どもと家族のニーズをもっと率直に語りたいだろう。しかし、それを語るとわがまま扱いされるということもよくわかっている。いま使っているサービスで本人も家族も満足している、信頼関係も築けている。制度が変わっても、この状況を変えたくないというのが、それほど責められるべきことであろうか。最終的には、うちが行動援護の事業所指定(3割減算の経過措置のやつ)をとることで変わらずサービスを利用できる形にできるのだが、行政担当者は商品を買い換えるかのように「他を使えばいいじゃないか」「他を使って、関係性を広げられたほうがいいじゃないか」という。そのための調整は相談支援事業所に丸投げ。あとは、うまく進んでいるかどうかチェックするだけ。
 学童の記録を書いて、夜。ヘルパーに1件目のケース会議の内容報告して、向こう2週間ほどの展開を検討。そして、事務所を閉めて帰る途中に、学生ヘルパーが入っている家庭から連絡。制度についての質問とともに、現在支援している学生ヘルパーが進学のための勉強で忙しくなっているようだが、子どもとの信頼関係もせっかくできてきたので、今後もできる限り入ってほしいというお願い。こちらもそのつもり。
 さらに2件目のケース会議の保護者から連絡。帰宅途中に家庭訪問して、行政への苛立ちやたくさんの不安を聞く。話は自分が学生だったころの昔話から、きょうだいの進路のことにまで及ぶ。養護学校時代から唯一継続して利用できている資源として、たくさん感謝の言葉をもらい、励まされる。いろいろな人がいるだろうが、あなたの法人を応援している人はたくさんいるのだと。最近はこんな言葉を聞く機会もなかったので泣きそうになる。夜も遅いというのに、父やきょうだいはまだ帰っておらず、部屋でビデオを見て楽しそうな利用者の声が響いていた。