泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[近況]制度を動かすために

 昨日書いた通り、朝から自治体との会合。福祉課の担当者1名と、事業者4団体6事業所から7名。
 事業所の状態を訴えるにはここしかないと必死に資料を作っていったけれど、他団体は何もなし。今後の事業展開の方向性を行政サイドから聞かれても、みんな「内部で話し合いができていない」「制度の今後の動向を見たい」。気がつけば、自分が一番しゃべっていた。
 考えてみれば、共同作業所は現行の補助が年度内続くため、10月時点で新制度体系に移行する必要がない。それほど短期的には焦りがないのかもしれない。しかし、不可解なのは、ショートステイをやっていた事業所が何の見通しも持っていない上にタイムケアについての情報さえも持っていないということである。ここはガイドヘルプもやっているが、何の提案も出てこない。うちは10月までにできる限りの交渉を続けていかなければいけないが、ああ完全に孤立無援の闘いになるのか、とますます暗い気持ちでいる。今日は大学院ゼミの日でもあったのだが、会合で担当者から聞いた話のショックがあまりに大きく、人の研究発表など聞く気持ちになれずに休んでしまった。
 担当者と話す限り、知的障害児者の移動支援について、自治体単独で報酬単価を決める形にはならない。ここはある郡の中に含まれている自治体である。郡内自治体での合併話が昔からくすぶっており、すべて統一したいというのがひとつの理由。現段階では現実的に合併は考えにくい状況になっているのだが、これはどうにもならない。そして、同じサービスを提供しながら、利用者の居住地によって異なる報酬単価が入ってくるというのは問題が多いというのがもうひとつの理由。事業所によっては郡をまたがってサービス提供するところもあるわけで、郡内で金額を一致させたところで結局地域格差は出ると思うのだが、それは仕方がないらしい。納得はできないが、何を言っても自治体の姿勢は変わらない。
 これから秋にかけて7つの自治体で話し合いがもたれ、そこで統一的な制度設計がなされることになるようだ。しかし、多くの自治体では移動支援について、ほとんどまともに考えられていない。そもそも過去の実績がほとんどないのだから当たり前だ。このまま放っておくと、ひどい水準で制度が決まっていく可能性が高い。担当者の予想した水準で決まると、うちの収益は40%減になり、一気に法人存続の危機がやってくる。うちのやっている外出介護全体の8割が「身体介護を伴う外出介護」と呼ばれる重度障害者の支援である。一方で「身体介護を伴わない外出介護」というものがあり、10月以降すべての報酬単価がこちらに一本化される可能性が高い。単純な制度にすることで、手間のかかる事務処理を避けたいという実務者レベルの意識もある。
 行政協議会で話をさせてもらうことは可能かもしれないということなので、できることなら7自治体課長の前で話をさせてもらえるようにしたい。その前には地元自治体の課長に現状を知ってもらわなければいけない。担当者と課長の知識の差は相当なもので、課長は障害者福祉の制度などほとんど知らない。ゼロからかみくだいて説明しなければいけない。それも一事業所からの提案でありつつも、一事業所のエゴと理解されないようにしながら。他にも同じ問題意識を抱えている事業所が複数あったら、どれほど心強いだろう。今のままでは「お前のところが困っているだけだろう」と言われれば、それでおしまい。事実そうなのである。ただ、うちの運営が成り立たなくなれば、利用者も行政も大変に困る。
 このあたりの行政協議会の状況に詳しい人に話を聞く限り、あまりまともな話し合いにはならないようだ。隣の自治体はやる気なしで、そのまた隣の自治体はいつも周囲の様子見。結果的にすべての自治体の意向の中間をとるような形になるのではないか、という。課長レベルで具体的な話は難しいだろう。ならば、具体的な話はどう決まっていくのかよくわからない。こちらからの提案で具体的なところまで動かせるのかどうか。自治体として単費事業は現状ではありえないということなので、自分がこれからやりあうべき相手は地元自治体ではなく、完全に郡内の全自治体になった。ものすごい精神的重圧。せめて自治体単独での加算というのはありえないかという話もしたが、全くわからないというので、まずは行政協議会対策に向かっていくしかない。
 資格要件、支給決定プロセス、外出形態、利用者負担など、これから3ヶ月ほどですべてが決まっていく。他に同じ志の者がいれば、少しでも良い制度につなげられるようにまるごと共同提案できるはずなのに、地域に誰も見当たらない。もちろん通所施設をやっている法人にすれば、自立支援法の影響はあまりに大きく、ガイドヘルプの減収どころじゃないのかもしれない。それにしても、居宅支援をやっている現場職員の危機感が見えないのが不思議でならない。
 これから自分の知りうる限りの人脈を頼って、自分の知識や説明能力も総動員して、被害を最大限食い止めるための制度提案をしていく。とりあえず福祉課課長と話す約束を2週間後にとりつけたが、課長はぶっきらぼうに空いている日にちだけを言って、立ち去った。道のりは長い。が、すべての決着は9月につく。残された時間は多くない。この夏休みは法人設立後、最も苦しいものになるに違いない。
 この日記を読んでくれている人は「一零細事業所の長が市町村事業をどこまで動かすことができるか」をリアルタイムで見ることになるだろう。成功事例になるか、失敗事例になるか、どうぞ見守っていて下さい。