泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[読書]メモ

 武川正吾(1981)「社会政策と社会計画 −イギリスにおける理念と実際を中心にして−」『ソシオロゴス』No.5、102-121.
 大御所の修士論文要約。

 社会政策と社会的価値は、主として次のような関係にある。
(a)社会的価値は社会政策の策定において、価値自体および価値の解釈の選択を通じて、政策の目的や手段の選定に影響を与える。
(b)社会的価値は社会政策の実行において、政策目標がどのくらいに達成されたか、目標とは独立な既存の価値に抵触しなかったか、といった政策効果の評価基準を提供する。
(c)社会的価値は社会政策の策定、実行において、政策の正当化を行う。
(d)諸価値やそれらの諸解釈が対立している時には、社会政策の存在自体が政策に具体化された特定の価値を、他から区別して権威づける。すなわち、社会政策はそこに反映された価値の保障も行う。(108ページ)

 なお、平等は社会政策に直接的に反映される。平等を、量的平等(Eq)、貢献に基づく比例的平等(Epc)、必要に基づく比例的平等(Epn)に区分して、このことを検討してみよう。
 現代社会は業績原理を組織化の指針としているために、Epcをめぐる状況は錯綜している。(α)この価値自体を積極的に評価するかいなか、(β)現実がこの価値を反映していると認識するかいなか、に応じて次のような4つの立場が区別される。すなわち、
(a)現状肯定の立場・・・古典的自由主義
(b)能力主義に批判的な現状批判の立場・・・Tawney,Titmussなど
(c)業績主義的な現状批判の立場・・・Laski,Croslandなど
(d)業績主義的なイデオロギー性を強調する現状批判の立場・・・Offeなど。(110ページ)

 …論争では、目的としての普遍主義(Uo)と手段としてのそれ(Um)が、また目的としての選別主義(So)と手段としてのそれ(Sm)が結びついて主張されていたが、それぞれの結合は論理的には偶然にすぎない。したがって、次の4つを区別することができる。
Uo 産業社会における社会政策を正常な制度として捉え、平等化への志向をもつ。
So 社会政策を市場にたいする補充として捉え、不平等を積極的にではないにせよ容認する。
Um 全市民が平等に受給資格を有するような給付方法。
Sm 特定の基準に合致する者だけが受給資格を有するような給付方法。
 以上の目的と手段の組合せから、われわれは次のような4つの理念型を得ることができる。それぞれは歴史的には次のような対応関係にある。
SoSm 救貧法体制
UoUm 理念としてのベヴァリッジ体制
SoUm 現実のベヴァリッジ体制
UoSm PD(Positive Discrimination)(113ページ)

 四象限図式&理念型ばんざい。こんなふうにきれいに情報をまとめられるようになりたいものだ。