泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

増えないヘルパー

 学童指導員向け講習。1時間しゃべって、質問ゼロ。ダメな講習をしてしまったということだろう。わけがわからなかったか、こいつには何を聞いてもムダと思われたかのどちらかである。わからないことはわからないと再三繰り返しながらの講習になったので、後者かもしれない。一般の学童に障害をもつ子どもが入ったときにどんなことが起こりやすいか、それにどう対応したらよいか、についての教科書はない。2年半程度の経験で教科書の代わりをするのは、荷が重い。自分自身の勉強にはなったが。
 この地域の学童指導員たちには2年ほど前にも一度話をする機会があったが、ずいぶん顔ぶれが変わっているように思えた。きっと次々と辞めて、人が入れ替わっているのだろう。この領域をとりまく環境も非常に厳しいはずだ。共働きが増え、受け入れる子どもの数はどんどん増える。それに伴って指導員の数が増やせなければ、十分に目も行き届かなくなり、事故等の危険も高まる。一方で、労働条件はひどい。この地域の学童で指導員として生計を立てることは不可能である。他に稼ぎがなければ、生きていけない。
 講習終了後、今後のヘルパー増員を考えて、都道府県(どこの都道府県かは想像にまかせる)の障害福祉担当部署に電話。この都道府県で、知的障害者ガイドヘルパー資格研修を近いうちにやる予定のところはないか聞く。返事は「全く予定がない」「この都道府県で研修を実施したことのある法人は2つ」「うち1つは過去に1度やっただけで、その後やっていない」「もう1つは、年2回」。
 1回あたりの研修受講者定員が20名とすると、この都道府県全体で年間に40人しか知的障害者ヘルパーは増えない、ということになる。むちゃくちゃな話である(一方で、全身性や視覚のガイドヘルパー研修は月1回ぐらいどこかであるらしい)。そんな状態でどこの事業所もどうやってガイドヘルプを続けられているのか、全くわからない。無資格者を動かしているところもあるんじゃないかと勘ぐりたくなる。あるいはヘルパー2級以上の有資格者がやっているのだろうか。そうすると、学生はほとんど動いていないということになる。それもまたイメージとは違う。
 うちは、人口30000人代の狭い対象地域で、知的障害者ガイドヘルパー(常勤職員以外はすべて学生)を15人くらい確保して動かしているが、支援が十分に届けられずに苦しんでいる。都市部ならどんなに軽く見積もっても、この10倍以上のニーズがあるだろう。自立支援法が通ってしまえば、来年の今頃にはこの資格制度自体が残っているのかもわからないとはいえ、あまりに支援者を増やしていこうとする熱意が関係者に無さ過ぎないか。現実的に考えて、これから地域生活支援の分野では新しい職員を常勤雇用することがどんどん難しくなるだろう。残念だが、多くの不安定な雇用をつなぎあわせて支援を成り立たせるしかなくなるはずだ。支援者(この文脈では「有資格者」)を増やしていくことは、業界全体が一丸となって考えなければいけない課題と考えて間違いない。なぜその認識が広がらないのか。情けない。
 そんなことを考えていると、ガイドヘルプ中に急な激しい雨。自分の傘を子どもにとられ、ずぶぬれ。ついていない。