泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

NPOを調査するということ

 あさっては、NPO法人の事業報告書の提出期限である。ようやく今日、郵送。ずいぶん前にできてはいたが、なんとなくぎりぎりまで提出する気になれないのは、まるで学生のころのレポートのようだ。
 いっしょにアンケートの回答用紙を送るように振興局からお願いされていたので、回答。テーマは「協働」。この手のアンケートはどこのNPO法人も毎年たくさん送られてくると思うのだが、正直を言ってしまえば、答えるのが苦痛である。作り手の気持ちもわかるので、できれば返送してあげたいが、ほとんど返送していない。時間がないのもあるが、不思議な設問がたくさんあるので、答えているうちにうんざりすることも多い。
 今日のアンケートもいきなり「常勤のスタッフ」と「非常勤のスタッフ」の人数を聞き、「『スタッフ』とは法人の事業に関わるもので、イベントなどに一時的に関わる者は含まない」と注釈がついている。イベントだって、大事な事業だと思うのだけれど。うちの長期休暇中限定の事業は「イベント」と言えばイベントなのだろうが、こういうのはどうすればいいのだ。そもそも「イベント」の定義がわからない。行政と協働した経験のメリットを選ばせる設問には、「財政的に潤った」という選択肢。調査で「潤った」って表現をはじめて見た。マルをつけたときに調査者からどう受け止められるのかを考えて、回答にずいぶん悩む。
 実際のところ、こんなのはましな方なのである。あらゆる領域のNPOを対象にして実施する調査になると、福祉サービスについてのイメージが全く描けていないものも多い。福祉NPOに限定した調査でも、

問2 取り組んでいる事業対象分野は何ですか。あてはまるものすべてに○をつけてください。
1.高齢者 2.障害者 3.子ども、子育て 4.その他(  )

問3 どのような事業テーマで活動していますか。あてはまるものすべてに○をつけてください。
1.ホームヘルプサービス 2.移送支援 3.配食支援 4.デイサービス 5.レスパイト 6.宅老所、グループホーム 7.リハビリテーション 8.生きがい、健康づくり 9.介護等スタッフの人材養成、研修 10.ネットワークづくり 11.福祉サービスの評価 12.ボランティアの養成、研修 13.就労支援 14.子育てサークル、サロン活動 15.暴力、虐待防止 16.不登校、引きこもり対応 17.非行防止、健全育成 18.慢性疾患 19.障害者スポーツ 20.介護保険によるサービス提供 21.その他(  )

 高齢者福祉以外は具体的なイメージが描けていない感じがありあり。うちはどれとどれに○をつければよいのやら。ちなみに、うちの近所にあるNPOは、知的障害者の権利擁護団体と、精神障害者の方たちの共同作業所(認可済み)、知的障害者の共同作業所(無認可)などだけれど、みんな悩むだろうな。福祉分野だけでもこの多様性・複雑性。NPO調査に携わる人たちは、さぞかし大変だろう(回収された用紙だけ見て、大変さに気づいていない可能性もあるか)。
 NPO法人とひとくくりにしても、分野ごとにこの法人格の持つ意味は大きく違う。そのため、NPO法人一般にとって有効な政策を提言できるような調査が自分にはあまりイメージできない。「予算規模1千万円未満で、知的障害者ホームヘルプサービスを主たる収益源にしており、常勤職員が1名以上雇えているNPO法人」ぐらいまで限定して調査できたら、すごく(障害者福祉にとっては)リアリティがある政策提言ができると思う。しかし、事業者団体とでもうまく組めなければ、サンプリングの難しさは想像を絶する。それぞれの地域ごとで見れば、「あの団体が該当している」ってすぐわかるはずなのだけれど、調査の規模が大きくなるとそうはいかない。
 数年前からうちのかなり近所では、大学教員や現場の人たちを中心として、障害児の放課後活動の実態調査が活発に行なわれているのに、未だに調査用紙ひとつ送られてきたこともない。特定のネットワークから外れると、調査対象にもならない。調査する側から見れば、特定の事業者ネットワークに頼るのは危険だということでもある。いやー、大変だ。シンクタンクや大学で調査にいそしむ皆さん、がんばってください(今は現場にどっぷりつかっているので、まるで他人事)。