泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

調査と運動

 全国地域生活支援ネットワークの情報誌『PIECE』2号が、数日前に届いた。まだ全部は読めていないが、他ではあまり読めない内容もあるように思う。とりわけ加瀬進さんの「行動援護新設の軌跡とこれからの課題」は、支援の必要度についての実証データをもって、なんとか新類型を創設させようとして、それが認められるまでの経緯が書かれている(もっとも、裏の話はまだまだあるのだろうけれど)。厚生労働省との交渉・議論の中身も書かれていて、純粋な研究論文にはあまり見られない内容だけに、面白い。
 それにしても、多くの社会福祉研究者と言われる人たちが、毎年すごい数の調査を量産しているはずなのに、昨年度のような局面には全く役立つものがなかったということが言える。もちろん、自分の知らないところやみんなに知られていないところですぐれた研究があるのかもしれない。でも、たとえあったとしても、実際の政策提言場面で活用されなければ、意味がない*1。だからこそ、新規に全国ネットで調査をすることになったのだろう。それも支援度の調査のたたき台となったのは、某事業者が考案したスケールだったというのは、注目すべきことだ。
 以前、加瀬さん本人から「知的障害者分野に研究者が少ないのは、現場に良い研究をする人がいるからではないか」という説明を聞いたことがある。そのときはあまりぴんとこなかったが、今回の件でそれは裏付けられたのかもしれない。因果関係の矢印は逆かもしれないし、別の要因が作用している可能性もある。しかし、多くの研究が役立たなかった(役立てられなかった)理由を、知的障害者福祉を研究している人には十分考えてほしい。
 一方で、現場には「現場で起きていることを、現場の言葉でばかりいくら説明したって、わかってもらえないし、説得力もない」という厳しい現実が突きつけられた、ということも言える。このとき、みんなにわかる言葉に「翻訳」をしなければならない、ということになるだろう。でも、その翻訳をするのは誰の仕事であるべきなのか。まだまだ検討の余地がある。

(追記:23時現在、パソコンは素直に再セットアップすべきか、高い金を払ってでもデータ復旧に出すべきかで、深く悩み中。明日には結論を出さないと、メールができないのがひどく困る。この更新も職場から。そろそろ帰りたいが、精神的には最悪の気分。)

*1:ただし、「政治的な場面では」意味がないというだけであって、学問研究の成果としての価値を否定するつもりは全くない。