泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

新単価

 改めて書くことになるが、4月1日から支援費の単価が変わった。移動介護は大きな下げ幅で、事業者は大きな減収になる。うちはこの3月の実績を新単価に置き換えたところ、約30%ダウン。致命傷である。給与がまともに払えるかどうかさえ、微妙な情勢だ。
 今さら愚痴っても仕方ないし、国の愚策を嘆いてもはじまらない。社会福祉政策における哲学の不在にも憤っているが、そんなこといっても現実に何も変えられないじゃないか、と言われれば、それまでである*1。けれども、これだけは言っておきたい。「この制度では、今後、障害者の地域生活支援を新しくゼロからはじめようとする事業者は出てこない。」
 NPOは、収益性の高い事業を行うことで、必要だが全く収益のあがらない事業を継続できていることがしばしばある。しかし、障害者の支援において収益性の高い事業は、これで制度からなくなった。行動援護は単価が高いと言われるが、支援費スタート時の移動介護の単価とそれほど変わりもないし、サービスの利用抑制を少しでもかけたいという意図が見え見えの政策動向の中で、過剰な期待はできない。もちろん他のサービス(ショートステイやデイサービスなど)と比べればましであるが、移動介護は提供時間帯が限られているため、件数を多くこなすのは調整能力が高くなければ難しいサービスである。
 うちの常勤職員は2名。男女1名ずつ。行動援護類型に利用者の多くが該当したとしても、どちらかの職員が何らかの理由で抜けたとき、新卒採用をしても行動援護のヘルパーはできない。経験年数が従事者の要件に入っているからだ。すると職員が抜けた途端にサービス提供は止まり、大幅減収となり、あとはつぶれる他ない。小規模法人はひとたまりもない。極めて限られた条件のもとで支援を行っている事業者しか生き残れないだろう。暗い将来しか見えない。 

*1:だからといって、国の政策批判をしないでよい、ということには全くならない。「文句があるならオルタナティブを提示しろ」というのは、その文脈によっては非常に暴力的であることに気づくべきだ。