泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

複雑な問題

http://d.hatena.ne.jp/jasmine156/20050316

 福祉労働者の労働条件は、知的障害者福祉について言えば、支援費の金額に大きく左右されている。労働条件の向上を求める動きは、結局のところ支援費の単価を上げてくれ、という要望に直結していくのだろうと思う。
 支援費導入から2年、居宅支援の事業者の中には収益性の高い事業ばかりを積極的に実施して「儲けていた」ところもあったことは否定できない。だが、この4月からの単価では、そんなところも少なくなるだろう。労働条件の向上を使用者に訴えたとしても、無い袖はふれない。
 現状では、利用者を選別せずに必要とされる支援を行う倫理性の高い事業者ほど、運営が苦しくなる。これはヘルパー事業者にも施設にも言える。すると労働条件も必然的に悪くなる。給与が抑えられ、サービス残業も増える。ここで「経営努力」によって労働条件を改善しようとすれば、利用者にしわ寄せが及ぶ可能性が高くなる。「労働者の権利」の追求が、大きく「サービス利用者の権利」を制限しかねない。よって利用者のニーズにきちんと対応し続けたいならば、政治的な「運動」によってしか、労働条件の望ましい改善はないのだろう。
 ただ、この単価ではやっていけない、という交渉なら、各種団体がこれまでもやってきた。これらの団体はいわゆる労働組合とは違い、事業者のネットワークだったり、当事者が中心となって事業者を運営する団体だったりするわけだが、労働条件の向上に対して果たしてきた機能は労働組合とも重なる。例えば、知的障害者の居宅支援の事業者は、高齢者福祉分野と比べたとき、男性介護者の雇用が不可欠だが、現状では男性がヘルパーとして家族を養えるほど稼ぐのは容易でない。そこで、運動においては、事業者の運営・雇用モデルを厚生労働省につきつけて、そのために必要な単価を主張する努力もされていた(こうした事業運営モデル中心の運動展開には不満も見られるわけだが。http://www.shien-net.org/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=29&forum=1&post_id=76#forumpost76 の岡部さんの「追記」がこれにあたる)。
 最近では、どのサービスの単価をどう設定するか、について、同じ障害者福祉関係でもさまざまな利害が生まれてしまい、同じ障害者福祉労働者といっても、一枚岩ではなくなっている。「連帯」するには本当に複雑な情勢だと思う。頭が痛い。