泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

すべては生き延びるために

短文のレビューだし、Facebookのほうに投稿するつもりだったのだけれど、なんだか不具合でうまくいかないので、ずっと更新のできていないブログに。

おさなごころを科学する: 進化する幼児観

おさなごころを科学する: 進化する幼児観

 

一読して、著者が本当に優秀な方だなあ……と。

認知発達についての説明は研究によって書き換えられていく部分もある上に、アプローチも多様なので読者を混乱させないように展開させていくのが大変だと思う。それを「乳幼児観」の変遷や上積みとして、きれいにまとめている。

著者自身の研究に基づく乳幼児観の部分を一番興味深く読めた。「それぞれの時期の行動はすべて適応的だ」というメッセージが、さまざまな特性をもつ子どもと関わる自分たちのような支援者にも馴染むからだろう。

乳幼児期の実行機能が限られているのはなぜか。イマジナリーフレンドにはどんな意味があるか。進化心理学的な知見に脳科学も加わって、定型発達の過程も、実在しないものを仮想することも、生きるための必然として捉え直されていく。

それは「問題行動」に対してあるべき理解にも似ている。もちろん、子ども自身にとって有意味だから何もかもが認められるわけではないけれど。支援の出発点としては、そこから考えを進めていくのが常道となってほしい、と思う。

ところで、読みながら思い起こしたのは、アメリカでベストセラーになった『Uniquely Human』のことだった。「自閉症」をまさに「適応のための行動」という観点から捉えた本。その邦訳が出たら「発達障害観」の転換に一役買ってくれると期待しているのだけれど、まだだろうか。出版予定は昨夏と聞いていた。ずっと待っている。

頑張れ、福村出版。