泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

真面目なところが損をしない報酬カットはありうるだろうか?

 さて、想像通りの展開になりつつある。
2014年6月13日 第1回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」 議事録
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000051539.html

次に 8 ページですが、同じように障害児の給付についてまとめております。障害児の給付については、児童発達支援と放課後等デイサービスの 2 つのサービスの利用者数がかなり多くなっており、支給額も併せて多くなっています。

 24年度から25年度の費用額の推移をまとめた資料を見ると、児童発達支援のほうは事業所数が13.7%、利用者数が20.9%増えているものの、費用額は11%ぐらい減っている(※この理由が思い浮かばないので、どなたかわかる方いたら教えてください)。放課後等デイは、事業所数が28.9%、利用者数が24.4%増えて、費用額も8%くらい増えている。たぶん26年度も同様だろう。目をつけられるには十分。児童発達支援と放課後等デイをひとくくりにするのは少し乱暴と思う。たぶん「児童発達支援が激増している」という感覚は現場にもあまりないのではないか。

続きまして、 13 ページは障害保健福祉関係予算の概要をお示ししております。平成 26 年度予算については 1 兆 5,000 億円となっております。ここには医療も含めた費用も全体として入っておりますので、 14 ページの棒グラフを併せて見ていただければと思いますけれども、障害福祉サービスに着目しますと、いわゆる成人の障害者総合支援法の部分でいいますと、平成 26 年は 9,000 億、それから児童の部分で 840 億円ということで、平成 17 年度から比べましても 2 倍以上に増加しております。年間 10 %程度の増加で、ずっとこの間進んできているということです。

この前も議論になったのですが、就労移行については、単価が高いけれども何年経っても実績ゼロの所がある。これはどうするのかとか。一生懸命実績を上げて就労させればさせるほど利用者がいなくなってしまうので経営は苦しくなる。いろいろ工夫してくれて加算とかを付けてやっていただいたということですが。あるいは、また、こういうことを言うと恨まれるのですが、放課後等デイサービスなどでも、最近よく聞くことは、ごく一部の時間だけを公的なものでやって残りは自主授業に切り替えて、また、それはそれで私的契約でやっているとかいう所もあると。せっかくの貴重な公的財源なので、良い所に付けるためには厳しい議論もしなくてはいけないと思うのです。でも、やっていることは、みんな良いことをやっているわけですので、そういう議論はなかなか難しいのですが、でき得れば客観的な根拠ですよね。もし、下げるのであれば、それはどういう理由かという根拠を示すことによって、皆さん納得感は得られるだろうと。本当に難しいのですが、同じ事業の中でも良いことをやっている所もあるわけで、そこまでもダメージを与えてしまうとなると、これは本当に元も子もなくなってしまうので、すごく難しいのは分かるのですが、そういうことを工夫しながら。今回は若干余裕があるので是非、緻密に、納得していただける工夫をしていただきたいと思います。

 発言者は野沢和弘さん。もう下げることが既定路線になっているのだろうな、となんとなく感じられる内容。後半太字にした部分が全くそのとおり。よほど丁寧に情報を収集して検討しなければ、おそらく真面目にやっているところが損をするのであろう。それには「質」の検討という難しいテーマもからんでくる。
 もともと地域の中で「療育機関」とされていたところが移行したであろう児童発達支援は放課後等デイと比べて保育士や心理系の専門職が多いのではないかとも思うし、保育所や幼稚園との並行通園もあって「午前に通いたい」とか「午後に通いたい」とかばらつきのある幼児に対して単なる「預かり」ではなく「療育」をしようとすると、療育時間はやや短めのものになりやすいと思う。うちの場合、療育終了後に保護者からの質問や相談に応じる時間がものすごく長くなる。このあたりも数字に表れにくいかもしれない。
 まず、対処されねばならない問題は、放課後等デイの開所時間を短めに(たとえば、17時とか17時半とかに)設定して、夕方子どもたちをそれ以降まで預かってほしい、というニーズが出たときにそこで別に費用を徴収するケース。私的契約に待ったをかけるのは確かに難しいけれど、まず日中一時支援と抱き合わせにしているケースは国で規制をかけられると思う(各市町村で日中一時支援の要綱に規定すれば済むような気もするけど)。
 ややこしいのが、学齢児は平日でも授業の終了時間に変動があったり、土日や長期休暇には長く利用したい(させたい)というニーズが激増する点で、一日あたりの定員が決まっている中で、ばらばらの利用希望時間、サービス提供時間帯の間に必要とされる職員配置などをすべて満たそうとすると「短時間のサービス提供時間を設定して、それを前後に超えたところは別に受け取ろう」という発想が生まれてしまう。もともとの制度設計が、一週間や一年の間に利用時間が目まぐるしく変化する学齢児のサービス利用の実態とかみ合っていないのだ。児童発達支援とは全く違う算定の仕組みを考えなければいけないはず(はっきり言って「日」単位の報酬にそもそも無理があると思うのだが、これは容易に変えられないのだろう)。
 ただ、別事業との抱き合わせや私的契約を抑えられても、放課後デイの給付費が抑えられるわけではない。全体の費用が増えるのは、「これまでろくに使えるものがなかった」ことを考えれば当然でもある。一般的な学齢児の暮らしを考えれば、もともと家にいる時間が異常に長すぎた。そして、支援者サイドにとっても、使える制度が長らくなかった。うちは今でも日中一時支援でやっているが、まともに経営ができる制度ではない。放課後等デイに早く移行したい。本当につらい。予定はすでにあるのだが、地元は法や条例を満たす建築物件が全然なく、ウン千万の費用をかけるはめになった。これで指定とれた途端に報酬が大きく切り下げられたら、とんだとばっちりだとしか言いようがない。昔、ガイドヘルプの市町村事業化で痛い目を見ているので「またか」という思いもある。
 放課後デイ事業所を運営する主体の規模が平均してどのくらいなのかわからないが、「子ども」に特化しているような事業所は、この事業に大きく依存した経営だろうから、真面目に手厚い人員配置をしているところほど報酬の切り下げに苦しむのではないか。居宅介護など経営の難しい分野から参入してきたところは、これで少しラクになれると思ったところでハシゴを外されることになるかもしれない。うちも全く採算のあわないガイドヘルプをやっているので(月に450時間調整して80万、とかどこもやらないし、どこもやらないからますますうちに集中する矛盾)、子ども関連でようやくまともに運営できると思われた事業がこれで抑え込まれたら、まったく絶望する(そもそもすべての事業がほどほどに運営できる報酬になっていればよいのに、そうなっていないから、採算のとれる事業ととれない事業の両方に取り組むところがこうしたときに馬鹿を見る)。
 ニーズが爆発したのは、事業所の数が増えて「なんとなくみんな使っているから」「『デイ』は療育みたいなことをしてくれるところで、子どもにとってよいことをしてくれるから」「しかもそんなにお金がかからないから」というぼんやりとした評価が保護者のあいだに広まったことも大きいと思う。一方で、ひとり親家庭でフルタイムで働いていて毎日利用が必要、とか、地域の学校の特別支援教育の質が低すぎるので、放課後にソーシャルスキルトレーニングとか学習支援を受けたい、なんて切実な叫びもある。毎日利用が必要な子どもの中には、事業所を3か所とか転々としている子どももいるし、高度な専門性への期待に応じられるところはほとんどない。事業所の数が増えても保護者はまだまだ「使いにくい」と思っているだろう。
 そのような中でどこをどのような根拠で削れば、妥当であると言えるか。事業所として納得できるか。さっきから考えたが、結局浮かばなかった。もう少し考えてみる。

今の点の放課後等デイサービスのところで例示されましたが、例えば、報酬だけではなくて基準も、我々の改定の中での検討事項だと思います。もちろん、私的契約の部分はどこまで制限できるのかはありますが、その指定の部分の基準とか、そういったことも合わせて考えていくことで対応できるのかどうか、そういったことも視野に入れて検討できればと思います。

貴重な国民の税金ですから、一番いい形で使っていく。それで、障害者にとってプラスになっていくことが一番の前提だと、思っていますので、どこかで切らざるを得ないのは現実にあると思っています。

 まず「切るべき」ところは「もっと別の形の支援に移行していくのが望ましいところ」であるべきで、「運動が弱く、みんな泣き寝入りしてくれそうなところ」ではないと思うので、そのような検討をしてほしいと切に願う。