泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

NHKがこんな煽りタイトルはいただけない

 これは早めに注意を促しておかないと危うい。今週の水曜の「クローズアップ現代」である。
放送予定 NHK クローズアップ現代
http://www.nhk.or.jp/gendai/yotei/index.html
 当初のタイトルは「増える、向精神薬を飲む子どもたち」だった。NHKによるこのタイトル発表に対して、twitter上で服薬している子どもや家族が動揺しないような番組の内容であることを期待する声があげられた
 ところが、番組サイトを見ていただくとわかる通り、その後になってタイトルが変更されて「子どもに広がる向精神薬の被害」になった。完全に悪い方に変えられている(※その後、また変更された。本記事末尾の追記を参照)。
 挑発か。話題づくりか。番組内容を忠実に表そうとした結果か。番組のサイトを見ると、内容的にはたしかに「被害」を強調したもののようだ。石川憲彦氏が出演されるようだが、過去の発言から考えても、子どもへの向精神薬の処方を全否定しそうな気がする。というか、そのために呼んでいるのだろう。
 確かに向精神薬を子どもが飲むことの影響について、十分な検証がなされていないことは海外の研究でも言われているし、日本児童青年精神医学会の見解としても存在する。しかし、それらは一定の範囲での有効性を認めつつ、副作用の存在やまだはっきりしない部分の研究を促すものである。詳しくは、例えば以下の記事と記事中のリンクを参照するとよい。
話題の“医療ジャーナリスト”の矛先が発達障害への向精神薬投与にも向かってきている件、そしてASD児への薬物療法について
http://d.hatena.ne.jp/bem21st/20111117/p1
 「子どもに広がる向精神薬の被害」というセンセーショナルなタイトルに変更したことで、きっとテレビ欄には映えるのだろう。しかし、いま有効性が確認されているような薬を飲んでいる子どもや保護者がいったいどのように感じるか、どのような視線を周囲から浴びせられるのかは、少し考えればわかるはずだ。
 番組として向精神薬を取り上げることに問題があるとは全く思わないし、さまざまな「症状」に悩む子どもたちの存在を知ってもらえるのだとしたら、それには価値もあるだろう。実際、番組の中身を見れば、穏当な内容になっている可能性もある。しかし「被害」とテレビ欄に載ってしまえば、そんな内容の詳細と無関係に「向精神薬を飲ませてはいけない」という印象だけがひとり歩きする危険性は高い。
 当初のタイトルであったのならば、バランスのとれた内容が(少なくともタイトル上は)期待できたし、なぜわざわざ改悪したのか、さっぱりわからない。もう残された時間は少ないだろう。今のうちに少しでも話題になって、修正してくれることを祈っている。

(6/12 19:24追記)
いまNHKのサイト見たら、タイトルがまた変更になっている。「“薬漬け”になりたくない 〜向精神薬をのむ子ども〜」。たぶんネット上での動きによる影響はあっただろう。これ以上の自分からの言及は控えておく。下のコメント欄には大切なことがたくさん書かれているので、様々な立場の方が読んでくれることを望む。