泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

政策提言としては良いけれど

〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実

〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実

 読了。読みやすい。
 統計的な実証データに基づく主張がほとんどで、具体的なエピソードなどはあまり出てこないので、最後につけられた6ページほどの要約(「神話と現実」)を読むだけでも概ねの内容は把握できる。「起業支援」に対する「政策提言」の意味合いが強い本で、その観点から見ればうなづける点がほとんどだが、やはり功利主義的だよなあ、とは思う。「ほとんどの起業家は、もっとも利益の上がる産業を選択せず、代わりにもっとも失敗する割合の高い産業を選択している」とか。
 この本の対象から非営利分野は除外されている。儲かりにくいことに勤しむ起業家はビジネスにおいて「愚か」と理解されても仕方がないのだろうかと思いつつ、自分が関わってきた「『この仕事』で成功したい」というのは当然の心情だろうと擁護したくもなる。新たに起業させるより継続して雇われ続けさせるほうが社会全体の効率にとって有益でも、その説明で起業への動機づけは減じられないだろう。
 「日本」の「非営利分野」や「福祉分野」で誰か似たような実証研究をしたら、それはNPO起業支援にとって追い風となるのだろうか、向かい風となるのだろうか。障害福祉だけでも、この十年ほどで膨大な数の起業があったはず。雇用は確実に生んでいる(地域生活支援系は特に)。もちろん行政からの給付がほとんどなのでビジネスとは比較できないけれど、どんなタイプの起業がうまくいっているのか、には興味がある。ただ、何をもって「うまくいっている」とするのかは超難問。