泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

「共に学ぶには12兆かかる」で何を言いたいのか

8月8日に行われた「障がい者制度改革推進会議」における資料「参議院内閣委員会会議録(7月28日)」
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_34/pdf/s5-2.pdf
リンク先の資料自体が議事録からの抜粋らしいが、そこからさらに抜粋。

岡崎トミ子
次に、統合教育に向けた取組が大きな論点の一つになってきました。今回、衆議院の、改正案に第十六条で、可能な限り共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容改善及び充実を図る必要な施策を講じなければならないというふうに盛り込まれました。(中略)とはいうものの、道はこれからだというふうに思うんですね。社会も、総論は賛成ですけれども、各論になると大変難しいというふうに感じております。
一つは、共生の理念が浸透されていないのではないか。(中略)もう一つは財源がございます。障がい者制度改革推進会議第二次意見の取りまとめがされた際に障害者施策を担当しておりましたけれども、副本部長としてこの第二次意見を受け取らせていただきました。取りまとめには苦労されたことを目の当たりにしたわけでございますけれども、とりわけ共に学ぶインクルージョン教育に向けて大変な議論がされまして、それは財源が一番大きいんだなということを感じました。
そこで、この第二次意見の取りまとめた状況もきっちりと踏まえた上で、昨年、二十五人学級を基本として財源がどのぐらい掛かるか、その試算を推進会議に出されたんです。A案が十二兆一千四百八十五億円、B案が一兆三千四百七十一億円掛かるという数字が出まして、随分掛かると大変驚いたとともに、障害者団体から想定がおかしいというクレームもいただいた記憶がございます。
ですから、このインクルージョンは大変難しいと思った方も多いのではないかと思います。
そこで、この数字の根拠、考え方をお聞きしておきたいと思います。
大臣政務官笠浩史君) 今御指摘ありました数字でございますけれども、まず二つのパターンで試算を行ったものでございます。想定Aは、居住地域の小中学校の通常学級に就学することとし、保護者が希望する場合のみ特別支援学校へ就学すると想定し、小中学校で必要な条件整備について主に次の仮定を置いて試算をしております。
現在、特別支援学級に在籍している子供は通常学級に移動、通常学級は障害のある子供の在籍を考慮し、学級編制の標準は二十五人、そして特別支援学級に在籍していた子供が在籍する通常の学級は、担任に加えて教員を一名配置をいたします。特別支援学校に在籍する障害が比較的軽度な単一障害の子供は全て小中学校に移動し、重度の重複障害の子供は三分の一が小中学校を希望、特別支援学校から移動した子供は特別支援学級で対応、そして特別支援学級の学級編制の標準は六人、さらに不足する教室の増築やエレベーター等の設備を完備し、以上により、想定Aとしては、教員等の増員や施設設備の整備のために、合計、先ほどございました十二兆一千五百億円のコストが必要との試算結果でございます。
そして、想定Bにつきましては、保護者に十分な情報提供を行い、保護者の希望を踏まえつつ、教育委員会が就学先の学校について総合的に判断すると想定し、小中学校で必要な条件整備について、通常学級の学級編制の標準は四十人、そして特別支援学校に在籍する障害が比較的軽度の単一障害の子供の三分の一が小中学校を希望、特別支援学校から移動した子供は特別支援学級に在籍をし、特別支援学級の学級編制の標準は六人、不足する教室の増築やエレベーター等の設備を一校舎中心に整備をするということで、合計一兆三千五百億円のコストが必要という試算を二パターン出させていただいております。
岡崎トミ子君 結局、現在の特別支援学校へ通う三分の一が地域の支援学級に行って、支援学級は全員通常学級へ行くという想定なんですね。でも、誰が考えましても、制度改正ができたから、さあ、来年からそれだけ掛かりますよというふうにはならないというふうに思うんです。しかも、二十五人学級もすぐに実現することは難しいと思うんですね。
そこで、現実的かつ第十六条実現に近づく想定で、三十五人学級を前提にしまして、B案の考え方を基に、教育メニューを作成する教師と通級教室に各一名を配置した場合にどのぐらいの財源が必要になるでしょうか。
大臣政務官笠浩史君) ただいま御提示いただいた仮定等を基に、国及び地方において必要となる教員、そして支援員及び看護師の人件費を試算いたしますと、単年度で約八千六百億円の経費が必要になると試算されます。教員は約九万六千人の増員が必要となり六千四百億円、そして支援員は約十八万三千人の増員で約二千二百億円、看護師は約八百人の増員で約十六億円で、計約八千六百億円と試算されます。
岡崎トミ子君 そうですね、人件費関係で大体八千五百九十八億円ですから、まずは十三兆ではなく、また一兆何千億円でもなく、もう少し計画的にやっていくことが私は必要だというふうに思うんです。

 単に「高くつくぞ」と言おうとした試算に思えないのは自分だけであろうか。とりわけA案については「こんな就学希望になるはずないけれど、統合教育推進派が現場のことをわからないままに『とにかくいっしょがいいのだ』という単純な主張ばかりするから、それで計算してやる」的な「見下し」を感じる。実際、こんな希望になるとは思えないし。誰を批判すればよいのやら。
 40人学級なら無理だけど、25人学級だったら可能な障害児支援というのは、具体的にいったい何のことなのだろう。「教師に余裕があったら、必要な支援がなされるはず」と想定することや、子どもの支援を一定の人数の単位で考えることが既に過ちであると気づかない限り、行き着く先は変わらない。