泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

6月30日課長会議資料「障害児支援の強化について」要約(※リンク間違い修正しました)

 さて、昨日の課長会議から一日が経ち、資料が出てきた。さあ、いよいよ来年4月から誕生する児童デイ放課後型の詳細が明らかになるのか。どきどき。
障害保健福祉関係主管課長会議資料
(社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課)

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigi_shiryou/dl/20110630-02-02.pdf
これでは何もわからないではないかあああ。
…まあ、予想はしていた。こんな時期にはっきりするはずない。

「障害児支援」部分について書かれていることの概要は次の通り。

・18歳未満の障害児支援はすべて児童福祉法に根拠規定を一本化。
・障害児支援は旧・児童デイサービスを含む「障害児通所支援」と「障害児入所支援」に分かれる。
・障害児通所支援は「児童発達支援センター」と「児童発達支援事業」に分かれる。実施主体はすべて市町村に。
・児童発達支援事業は、通所利用障害児やその家族に対する支援を行う。「専ら」療育の場。量の拡大と質の確保を目指す。市町村の範囲に複数設置のイメージ。
児童発達支援センターは、児童発達支援事業の機能に加えて、「地域支援」として「相談支援(障害児支援利用計画の作成)」「保育所等訪問支援」を行う。要するに専門的支援のノウハウを地域に広く提供する中核機関。児童発達支援事業の事業所に対する専門的支援も行う。概ね10万人規模に1か所以上。人口規模の小さい市町村は、最低でも1か所設置。
児童発達支援センターは、通園施設からの移行を想定。みなしの経過措置3年。当面は「地域支援」を免除。
・児童発達支援事業は、児童デイサービスからの移行を想定。みなしの経過措置1年。
・基準さえ満たせば、児童デイが地域支援を行う「センター」になることも可能。逆に通園施設が地域支援を行わない(=通所児と家族に対する支援しかしない)「児童発達支援事業」になることも可能。
保育所等への訪問支援は2週に1回程度を目安。本人に対する支援(集団生活適応のための訓練等)とスタッフに対する支援(支援方法等の指導等)。障害児の状況、時期によって頻度は変化。訪問担当者は、障害児施設で指導経験のある児童指導員・保育士を想定。
・「放課後等デイサービス」は、児童発達支援とは区別されているが、現行の児童デイの移行経過措置は「児童発達支援及び放課後等デイサービス」に係る指定を受けたものとみなす。
・放課後等デイサービスの概要は「放課後や夏休み等の長期休暇中において、生活能力向上のための訓練等を継続的に提供することにより、学校教育と相まって障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを推進。児童デイからの円滑な移行を考慮。

大まかには以上(詳細はリンク先の資料を参照されたい)。

はっきり言えることは、このままならば「放課後支援」部分の混乱は結局おさまらないであろう。そして、「療育」部分は、「いきなりそんなこと言われても」という混乱が生じるであろう。

「放課後等デイサービス」は「生活能力向上のための訓練」も含んでしまっているため、「療育」を強く意識した「児童発達支援事業」との区別がつけられない。幼児は「児童発達支援事業」しか使えないが、学齢児はどちらも使えるというよくわからない状態になる。「発達支援事業」の内容は「日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他」であるが、これをどうやって「生活能力向上のための訓練」と区別できるだろうか。報酬のよいほう(おそらく「発達支援事業」のほう)に既存の児童デイは移行を目指していくであろう。
 その結果、未就園児の母親が心身を休められるように「一時保育」的に子どもを預かることも、保育所や幼稚園と並行通園をする幼児に療育をすることも、地域の小学校に通う子どもたちに対して放課後にSSTを行なうことも、保護者の就労に伴って支援学校生の一時預かりをすることも同一の「発達支援事業」となる。子どもの個別性や快適性を大切にした実践をしようと努力するところほど経営的に損をする状況に拍車がかかるであろう。それは今でも似たような状況であるが、今度はいよいよ行政のお墨付きである。
 一方、児童発達支援センターは、これまで自治体等で行っていたような保育所等への巡回相談や相談支援事業などとも重なる機能を求められるようになる。各自治体内で作り上げられてきた役割分担を再編しなければならない可能性が出てくるだろう。また、地域の中核として多くの関係者を指導する権限をもちうるほどの重要な位置であるというのに、基準さえ満たせば実施できるような仕組みにもなっており、そのへんの「構造化された環境で子どもを甘やかすから、ストレス耐性のない子どもが育つんだっ」などと公言してはばからないようなダメ事業所がセンターとなり、保育所を指導する可能性すら排除しえないであろう。恐怖である。
 まだまだ懸念されることは山ほど出てくるのだが、今夜は以上。